就活生のキャリア意識、ワーク・ライフ・バランス重視
古橋 孝美(ふるはし たかみ)
学生と企業の間にある溝
ここで、企業調査と学生調査の結果をあわせて見てみます。もちろん、学生調査も企業調査も全く同じ表現で聞いているわけではないので、単純に比較はできません。ただ、キャリアに関する学生の価値観は、就職活動における企業選びにも影響するでしょうし、一方の企業も、新卒採用でアピールしている=自社が労働者に提供できるものと認識している、と捉えれば、双方の思惑が合致している点やズレが見えてくるのではないでしょうか。
この図からは、企業調査と学生調査で「ワーク・ライフ・バランス」に関する項目に大きな開きがあり、双方のズレが顕著に表れています。
昨今は、日本の有給休暇取得率の低さやブラック企業の問題など、学生から見れば“働く”ことにネガティブな話題が多く取り沙汰されており、これから社会に飛び込んでいく身としては、「そんな環境はできるだけ避けたい」という心理が働くことは想像に難くありません。また、「イクメン」が流行語となったように、かつての性別役割分業意識も変化しつつあり、昔と今では学生の価値観は大きく異なっています。
2016年度入社の新卒採用は、就職活動解禁時期が繰り下げられ、採用活動の短期化・効率化が求められています。また、景気の回復基調を受けて売り手市場に転じたのも、企業にとっては向かい風です。新卒採用の転換期となる今、自社の職場環境や労働条件を見つめ、どのようにブランディングし学生に訴求していくのか、改めて戦略を練ることが必要ではないでしょうか。
われわれ社会人が当たり前に感じている環境も、学生からすれば新鮮・魅力的に映るかもしれません。反対に、ネガティブな要素があっても、それを打ち消すインセンティブを示すことで、違った志向を持つ学生への訴求が進むかもしれません。
「2016年3月卒業予定者の就職活動に関する調査 2014年11月1日状況」
調査対象:2016年3月卒業予定で、民間企業への就職を希望している大学3年生・大学院1年生 有効回答者:445人 調査期間:2014年11月1日~9日
「2015年度新卒採用に関する企業調査 2014年10月1日状況」
調査対象:2015年と2016の新卒採用を行う企業の採用業務担当者 有効回答者:1,000名 調査期間:2014年10月1日~4日
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●文/古橋 孝美(ふるはし たかみ)
2007年、株式会社アイデム入社。求人広告の営業職として、人事・採用担当者に採用活動の提案を行う。2008年、同社人と仕事研究所に異動し、毎年パートタイマー白書の企画・調査・発行をトータルで手がける。2012年、新卒採用・就職活動に関する調査等のプロジェクトを立ち上げ、年間約15本の調査の企画・進行管理を行う。2015年出産に伴い休職、2016年復職。引き続き、雇用の現状や今後の課題について調査を進める一方、Webサイトの記事・コンテンツ制作、顧客向け販促資料などの編集業務も行っている。
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