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インテリジェンスHITOフォーラム
「グローバル人材マネジメントの未来」

インテリジェンスHITOフォーラム 「グローバル人材マネジメントの未来」

2011年11月30日(水)に、株式会社インテリジェンスHITO総合研究所(東京都千代田区、代表取締役:高橋 広敏)によるフォーラム『グローバル人材マネジメントの未来』が開催されました。急速に進展するグローバル化の中で、企業は人材をどうマネジメントしていけばいいのか。また、国や働く個人はどうすればいいのか――。今回のフォーラムに は、企業の人事責任者のほか、研究者、官僚、エコノミストと、さまざまな立場の方々が登壇。産官学それぞれの目線から、グローバル人材マネジメントについ て考えました。本レポートでは、当日のフォーラムの模様をダイジェストでお伝えします。

【開催概要】
会期 2011年11月30日(水)10:00~18:00
場所 大手町ファーストスクエア カンファレンス 千代田区大手町1-5-1イーストタワー2階
主催 株式会社インテリジェンスHITO総合研究所

〔第1部〕パネルディスカッション
日本の成長戦略のための「人材開国」政策

<基調講演>
株式会社日本総合研究所 調査部長 チーフエコノミスト 山田久氏

<パネリスト>
早稲田大学大学院 政治経済学術院 教授 白木三秀氏 経済産業省 中小企業庁経営支援部小規模企業政策室長 林揚哲氏 (前経済産業省経済産業政策局 産業人材政策室 企画官) 株式会社日本総合研究所 調査部長 チーフエコノミスト 山田久氏

<ファシリテーター>
インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員 須東朋広

〔第2部〕パネルディスカッション グローバル化のための人材マネジメンシステムの現状と課題そしてこれから

<パネリスト>
早稲田大学大学院 政治経済学術院 教授 白木三秀氏 日本GE株式会社 取締役シニアHRマネジャー 八木洋介氏 コマツ 常務執行役員 日置政克氏 一橋大学大学院 商学研究科 准教授 島貫智行氏

<ファシリテーター>
法政大学大学院 政策創造学科 教授 諏訪康雄氏 〔第3部〕パネルディスカッション グローバル化する人事部門の機能と役割 ~トランスナショナル組織を実現するために

<パネリスト>
株式会社アジレント・テクノロジー 取締役人事本部長 島田智氏 コマツ 常務執行役員 日置政克氏 コーチ・ジャパン合同会社 ヴァイスプレジデント 人事担当 島村隆志氏 HOYA株式会社 アイケア事業部 人事部長 内海将隆氏

<ファシリテーター>
インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員 須東朋広

〔第1部〕日本の成長戦略のための「人材開国」政策

第1部は、株式会社日本総合研究所 調査部長 チーフエコノミスト 山田久氏による基調講演「経済グローバル化と人材開国への課題」からスタートしました。まずは、日本がグローバル化待ったなしの状況にあることを確認した 上で、日本企業がこれまでの消費財輸出モデルに頼ることはできず、海外特有のニーズに対応した商品やサービスを生み出す必要があると強調。製造分野や研究 開発分野を海外に積極的に出す一方で、国内拠点は「高度な統合機能が求められる強い本社」を構築する必要があると述べました。そのためにも、「海外現地法 人は現地の人材を主要ポストに就けて、現地化することが必要。その上で、将来的には本社経営陣も多国籍化していくことが望ましい」とのことでした。

最後に、日本が「人材開国」になるためには、「海外の人材の受け入れを考える前に、日本人、特に若い人を海外に出すこ とが必要。大人はその支援をしなければならない。自分たちが海外を肌で知る。そこからグローバル化は始まるのだ」と、まずは足元から始めるべきだと締め括 りました。

続いては、インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員 須東朋広氏のファシリテーションの下、山田氏と、早稲田大学大学院 政治経済学術院 教授の白木三秀氏、経済産業省 中小企業庁経営支援部小規模企業政策室長の林揚哲氏によるパネルディスカッション。須東氏が山田氏の基調講演のポイントをまとめた上で、それらをふまえな がら、次の三つの論点からディスカッションが展開されました。

  1. グローバル化に向けた事業戦略、産業政策のあり方
  2. グローバル人材の企業内での育成のあり方
  3. グローバル人材育成の大学の役割

1.に関しては、林氏が「政府の産業政策としては、世界的に今後ニーズが高まる『環境』『介護』といった分野で日本が活躍できる可能性があると着目している。日本が海外で稼いだ富を、国内に還元することが必要だ」と説明しました。

2.に関しては、白木氏によると「企業が人材を育成する上で、語学力、コミュニケーション力の強化に注力するのは当然だが、それらはツールに過ぎず、最も重要なのは異文化を楽しむマインドセットを持たせることだ」とのこと。

三つの論点に関する議論の中で、白木氏と林氏の意見が一致したのは、日本人の若手をとにかく海外に出して、場数を踏ま せることが重要だということです。負荷を与え、強くする。日本を相対化させる。世界を相手に交渉できるようにする。そのために、政府や大学が仕組みを整備 する必要がある、との主張でした。

これらの意見は、基調講演の山田氏の話と共通するものであり、実際に人材を海外に派遣することが第一歩であることを、改めて実感することができたセッションでした。

〔第2部〕グローバル化のための人材マネジメンシステムの現状と課題そしてこれから

続く第2部は、早稲田大学大学院 政治経済学術院 教授の白木三秀氏、日本GE株式会社 取締役シニアHRマネジャーの八木洋介氏、コマツ 常務執行役員の日置政克氏、一橋大学大学院 商学研究科 准教授の島貫智行氏の4名がパネリストとして登壇。法政大学大学院 政策創造学科 教授の諏訪康雄氏がファシリテーターとなって、ディスカッションが進められました。

今回の議題は、下記の4項目です。

  1. そもそもグローバル人材をどのように定義するのか
  2. グローバル人材の育成・採用・活用・確保の方法とは
  3. グローバル人材を前提にしたマネジメントシステムとは
  4. これから我々は何をすべきなのか

「そもそもグローバル人材をどのように定義するのか」という議題には、パネリストそれぞれの立場に基づいた、興味深い意見を聴くことができました。まず、 日本GEの八木氏は、「GEの戦略をよく理解している人。しかし、言われたことをやるだけでなく、自ら戦略を描ける人材」と定義しました。同社にとって、 戦略とは世界共通のもの。「たとえ海外で仕事をしていなくても、グローバル人材としての視点を持った人はいる」という言葉が大変印象的でした。

また、コマツの日置氏は、「それぞれの分野で力を発揮している人材」と定義。その上で、同社は日本企業の中でも早い段 階で海外生産を始めたグローバル企業ですが、まだ社内には「日本」と「海外」を区別する考え方があると言います。そこで、「日本では」という、海外と区別 しようとする視点や考え方を社内からなくしていこうとしているそうです。

白木氏は「文化・背景が異なる人と働いて成果を残せる人」であるとし、そのためには言葉以前にマインドセットが重要 で、人前できちんと話しができ、部下と交渉して説得できる人材でなければならないと説明しました。また、島貫氏は「グローバル人材」の要件を細かく設定す ることよりも「人材マネジメントのグローバル化とは何かを考えることがより重要」との意見でした。

「グローバル人材の育成方法」については、パネリストの方々からさまざまな意見を聴くことができましたが、共通してい たのは、企業の目標を達成することができる人材を早期に見出し、成長を促す機会をできるだけ多く提供することが重要だということ。短期間に集中して難易度 の高いアサインメントを与えたり、意図的にそういった「場」を作ったりするなど、人材がチャレンジしようと思えるような仕掛け作りが大切であることが大変 よくわかりました。

この後も、さまざまな議論が展開された、第2部のディスカッション。企業にとってグローバル人材の育成や活用が急務となっていることを、改めて認識することができました。

〔第3部〕グローバル化する人事部門の機能と役割 ~トランスナショナル組織を実現するために

第3部では、インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員 須東朋広氏が進行役となり、株式会社アジレント・テクノロジー 取締役人事本部長 島田智氏、コマツ 常務執行役員 日置政克氏、コーチ・ジャパン合同会 社 ヴァイスプレジデント 人事担当 島村隆志氏、HOYA株式会社 アイケア事業部 人事部長 内海将隆氏の4名によるパネルディスカッションを実施。

冒頭で、須東氏から「グローバル人事に関する調査結果」の解説があり、続いて各パネリストから、テーマである「グローバル化する人事部門の機能と役割」についての発表が行われました。

アジレント・テクノロジーの島田氏は、自社のグローバル化への組織的な変遷について紹介。ビジネスがグローバルに広 がっていく中で、組織間のつながりが「点と点」から「面と面」の関係(国籍横断的組織化)に変わり、連携が深まっていったと述べました。同氏は、自社の歴 史から「グローバル化には本社・現地法人ともに“従業員のマインドチェンジ”が必要であり、人事には、“チェンジエージェント”“反復コミュニケーター” としての役割が求められる」ことを学んだ、と語りました。

コマツの日置氏は、「コマツの共通語は、コマツウェイ(価値観、心構え、行動基準)」だとし、グローバルに共通の価値 観を共有することが重要であると述べました。同社の人事部門では、サービス部門であるとの意識を忘れず、すべての社員に安全で安心して働ける職場を提供し ていくことを心掛けているとのこと。また、長期雇用や企業内教育・キャリア形成、集団的意思決定(チームワーク)など、同社の人事の強みとグローバル展開 の可能性についても触れていました。

コーチ・ジャパンの島村氏からは「人事は何をする部門なのか――ビジネスによってその役割は変わる」とのお話がありま した。人事として、そのビジネスをどのようにサポートし、成長させていくのかという視点を持つことが重要。グローバル化が進むいま、「HRのマインドシフ ト」が必要だと強調されていました。

HOYAの内海氏は、人事の役割として「良い組織文化を創る」ことを挙げ、そのためには、ブランド、ミッション、ビ ジョン、バリューを共に学び、全社員を能動的な学習者に変えていくことが必要だと述べました。その学習者が、他者に教えることで、人と人とのつながりが強 くなり、良い組織文化が生まれるとのことでした。

上記のほかにも、第3部では、参加者同士のグループディスカッションやパネリストへの質問などの時間も設けられ、活発な意見交換が行われました。

*    *    *

グローバル時代を勝ち抜くための人材マネジメントの方法や、人事部に求められる役割を、さまざまな角度から考えることができた、今回のフォーラム。参加された方々にとって、新たな発見は多かったことでしょう。

『日本の人事部』では、今後も人事担当者としてぜひ聴いておきたい講演や、参加しておきたいセミナーなどのレポートをお届けしていく予定です。どうぞご期待ください。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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この記事ジャンル 戦略人事

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