企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

『ビジネスガイド』提携

企業による積極的な取り組みが増加中!
「障がい者雇用」をめぐる最新動向と採用&労務管理上のポイント
(3/3ページ)

社会保険労務士 松山 純子

4.「精神障がい者の雇用義務化」に関する動向

現在、障がい者として雇用義務の対象になっているのは身体障がい者と知的障がい者で、精神障がい者は対象となっていません。厚生労働省は、この精神障がい者について、新たに雇用を義務付けることを目指しています。

改正が行われれば、身体障がい者に加え、知的障がい者の雇用を義務化した1997年以来の対象拡大になり、躁うつ病や統合失調症などの精神障がい者が加わることになります。

5. 精神障がい者の採用方法

精神障がい者の就職件数が毎年増加傾向にあります。次に、精神障がい者を採用するうえでの労務管理上の留意点などを確認していきましょう。

精神障がいを引き起こす主な疾患には、統合失調症、うつ病、躁うつ病、精神作用物質(アルコールなど)による精神疾患などがあります。

病気を抱えながら就労するには、本人も周囲も病気の特性や症状および配慮すべき事項をしっかり理解していなければ、定着につながりません。

個々の状況を的確に把握して、通院時間を保障したり、短時間勤務から始めたり、納期が厳しい仕事は避けたりするなど、個別対応を行うべきポイントがたくさんあります。必要に応じて医療機関との連携も図りましょう。

(1)採用方法
photo

ハローワークの専門援助部門に相談して求人票を出し、仕事内容や職場環境を説明して、ミスマッチを防ぎます。

また、ハローワークの他に就労支援機関や医療機関、職業訓練校等を訪問し、企業が求める人材のイメージに合った方を採用する方法もあります。

就労支援機関には、例えば、就労移行支援事業(企業等への就労を希望する障がい者を対象に、計画的なプログラムに基づき、施設での作業や企業での実習、職場探し、就職後の職場定着などの支援を行うところ)などがあります。

(2)労務管理上の留意点

精神障がい者を雇用した場合、定期的な通院や残業規制が必要になるケースがほとんどです。障がいのあることを周囲の従業員に伝えて、周囲の従業員の協力や理解を得ておかないと、「なぜあの人は忙しいのに定期的に休むのか」「なぜあの人は残業しないのか」という声が上がってくることになりかねません。

精神障がい者雇用を行っている多くの企業では、他の従業員に就業にあたり配慮すべき事項等について説明を行い、協力や理解をしてもらうところがほとんどです。

定期的な通院や残業の制限、仕事内容の設定の仕方など配慮すべき事項を周囲が理解していないと、雇用された方が組織に居づらくなってしまいます。説明の仕方は、本人の意向を確認しながら決めることが大切です。また、支援機関に相談してみるとよいかもしれません。

精神障がい者を雇用するには、周囲の理解や多くの配慮が必要になります。どのような配慮を行うとよいのかは、本人と話合いの中で決めていくとよいでしょう。また、本人が困ったときに気軽に相談できる窓口を設けておくことも必要です。

また、企業側も、困ったときに内部で抱え込まずに外部の専門家と連携できるよう相談窓口を持っておくことが、精神障がい者の継続雇用につながっていきますので、大切です。

障がいに関することは、主治医、精神保健福祉センター、地域生活支援センターなどと連携するとよいでしょう。また、採用や就労に関することは、ハローワークや地域障害者職業センターなどと連携します。上手に外部機関を活用しながら、精神障がい者雇用を行っていくとよいでしょう。

【就業にあたり配慮すべき事項の具体例】

・通院に関する配慮
精神障がい者の場合、2週間~1ヵ月に1回の定期的な通院を必要とする方がほとんどです。体調が悪いときは、もっと頻繁に通院することもあります。通院は、働くうえで必要となりますので、周囲の理解を得られるようにしてください。

また、休暇(年次有給休暇)を時間単位で取得できるようにしたり、別途通院休暇を付与している企業もあります。取得しなかった年次有給休暇で繰り越しできない分を特別休暇としてプールし、通院や体調不調による欠勤の際、使用できる仕組みをとっている企業もあります。

・勤務時間に関する配慮
精神障がい者の特性の一つに、疲れやすい・集中力の低下・思考の低下などがあります。そのため、フルタイム勤務は難しいケースも珍しくありません。最初の2~3ヵ月間は短時間勤務から始め、状態を見ながら徐々に勤務時間を延長していくという方法もあります。

1日の勤務時間を短縮する方法や1週間の勤務日数を減らす方法など、本人に無理のない勤務時間の設定から始めてみて、慣れてきたら徐々に勤務時間を増やしていくとよいでしょう。

6. 働くこと、仕事をすることは「社会とのつながり」を感じること

photo

以上、企業側の取組みについて説明してきましたが、今回の改正により、より多くの障がい者が働く機会を得ることにつながります。

私たちは社会とのつながりの中で、自分の存在を確認しています。働くこと、仕事をすることは、「社会とのつながり」を最も感じられるものと言えます。「収入を得るために働く」ということも重要なことですが、それだけではありません。

今回の改正で、一人でも多くの方が社会とのつながりを持ち、希望を持って働ける機会を得られることを嬉しく思っています。

企業・障がい者本人両者にとって、今回の改正が素晴らしいものであるようお互いが努力していきたいですね。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事にコメントする

この記事に対するご意見・ご感想のコメントをご投稿ください。
※コメントの投稿をするにはログインが必要です。

※コメントのほか、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)がサイト上に公開されます。

※投稿をしたコメントは、『日本の人事部』事務局で確認後、掲載されます。投稿後すぐには掲載されませんので予めご了承ください。

人事・労務関連コラムのバックナンバー

従業員が協力したくなる!「リファラル採用」のための制度設計&規定
従業員が協力したくなる!人材難の時代、急速に広がる「リファラル採用」のための制度設計&規定
2019/07/05掲載
受入拡大迫る!外国人雇用よくあるトラブルと対応
減少する日本人労働者を補うためにも不可避となった外国人採用。 今回は、外国人を雇用するにあたって押さえておきたい注意点等について、トラブル事例をもとにお伝えいた...
2019/05/20掲載
利用者急増!退職代行会社等が関与する場合の留意点
最近、本人に代わって退職の手続きを行う「退職代行業者」が話題になっています。もし、従業員から退職代行業社を通じて退職届が出されたら、どのように対応すればよいので...
2019/03/06掲載

関連する記事

障害者雇用 相談事例にみる!企業の“合理的配慮”はどこまで必要か?
法定雇用率の引き上げや雇用義務対象の拡大を受けて、大企業を中心に障害者雇用が進んでいます。一方、障害者雇用をめぐる相談事例も増加傾向にあります。実際の事例をもと...
2018/09/10掲載人事・労務関連コラム
パート募集 超短時間シフト増加中?
生産年齢人口が縮小して行く中で、女性労働者の雇用は増加中。しかし、増えているのはパート雇用のみです。各社パートタイマーの奪い合いとも言える状況の中、募集条件には...
2017/06/09掲載新卒・パート/アルバイト調査
株式会社高島屋
意欲あるかぎり働き続けられる職場へ
ベテランを戦力化する高島屋の「再雇用制度」とは
年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、65歳までの雇用義務化を巡る議論が高まっています。ベテランの暗黙知や熟練の技能を“戦力”として活かすには、どうしたらいいのか...
2012/03/26掲載となりの人事部
渡邉 幸義さん~障がい者雇用をはじめとした、アイエスエフネットが目指す「20大雇用」とは?
株式会社アイエスエフネットは、障がい者やニート、フリーター、高齢者など、働くことに制限のある人々の労働環境を整備していることで知られています。人はそれぞれ、何か...
2011/11/14掲載キーパーソンが語る“人と組織”
企業の震災対応
民間調査機関の労務行政研究所(理事長:矢田敏雄)では、「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)への対応アンケート」を実施しました。今回はその中から、従業員に対する...
2011/10/31掲載人事・労務実態調査
健康経営を戦略的に推進するステップとは?取り組み事例と外部サービスの選び方

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

注目コンテンツ


健康経営の実践に必要なステップ、外部サービスを選ぶ際のポイント

健康経営を戦略的に推進するための必要なステップや取り組み事例、外部サービスを選ぶ際のポイントをご紹介します。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。