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世界で大反響を巻き起こした
“強みを伸ばす”新たなリーダーシップ開発法が
人と組織の継続的な成長を可能にする

強みを伸ばすこと、継続して成長することに
フォーカスした、新リーダーシップ開発法

ジャック・ゼンガー博士が開発した「飛びぬけたリーダー」プログラムの概要について教えてください。

ゼンガー:「飛びぬけたリーダー」は、強みを活かしたリーダーシップ開発のプログラムです。世界初の360度調査を開発した計数心理学者のジョー・フォークマン博士と共同開発したプログラムで、グローバルに活躍するリーダー20万件以上のデータ分析をもとにしています。生産性や収益率、顧客満足度などとの相関を見ていくなかで、組織業績を大きく左右する十数個のリーダーシップ特性を発見しました。しかも、それらのリーダーシップ特性は、十数個すべてを身につけておく必要はなく、たった一つの際立った特徴、つまり飛びぬけた強みがあればいいということも明らかになったのです。「飛びぬけたリーダー」プログラムでは、研究結果から得られた基準値に照らし合わせて、個人の強みを正確に特定することができます。また、リーダーシップ特性を伸ばすにはどうすればいいかということもわかるようになっています。

三井物産では、なぜ、「飛びぬけたリーダー」プログラムを受講しようと思われたのですか。

濱田:これまで三井物産の関連会社では、本部からの出向者が管理職を担うのが常態でした。しかし、変化の激しい市場環境下において、組織を強くしていくためには、それぞれの会社のプロパー社員からリーダーを輩出していく必要があるという声が年々高まっていったのです。そこで、次世代を担う関連会社の中堅層を対象にしたリーダー教育プログラムを企画したいと考えました。

濱田一人

数多くあるリーダーシップ開発プログラムのなかで、「飛びぬけたリーダー」プログラムを選んだ理由の一つは、信頼できる膨大なデータに基づいていたことです。いくら会社がリーダーシップを開発しようと思っても、本人が能力を開発したいと思わなければ、伸びるものも伸びません。データに信頼性があり、研究成果に納得感があることが重要でした。加えて、個々人がどのように行動すればいいか、アクションが明確であることも特徴的でした。

また、個人的にこのプログラムの好きなところは、「強みを伸ばすこと」にフォーカスしている点です。私は子どものころにアメリカで暮らしていたことがあるのですが、外国人の先生はいつも「あなたのこういうところがいいね!」とフィードバックしてくれました。一方、家に帰ると、日本人の父親や母親からはよく「こういうところを直したほうがいい」と言われていました。日本では、幼いころから強みを伸ばすよりも弱みを改善することに注目する傾向があるように思います。ただ、個人的には、やはり強みを伸ばしていくほうがポジティブなアクションにつながりやすいと感じていました。「飛びぬけたリーダー」プログラムでは、強みを伸ばしていくほうが弱みを改善するよりも効果的であることがデータで示されていることを知り、「飛びぬけたリーダー」プログラムを日本で展開している、株式会社スマートワークスさんに講師派遣を依頼しました。

プログラムを受講した方々からの反響はいかがでしたか。

濱田:360度評価のコメントを、涙を流しながら読んでいる人もいます。「コメントに励まされた。もっと能力を伸ばしたい」と言う人や、「これからどのように行動すればいいかがわかったので、まずは愚直にやってみようと思う」と言う人もいます。受講者の上司からも「部下がまわりのメンバーを巻き込めるようになった」「行動に変化があらわれている」というフィードバックをもらっています。

ゼンガー:「飛びぬけたリーダー」プログラムでは、自分というものがよくわかるようにできています。自分の特性を知り、まわりの人たちは自分のことをこんなふうに見てくれていたのかと励まされ、喜ぶことが多いのです。自分の想像以上によく思われていた、ということもよくあります。反対に、自分の行動が期待されているパフォーマンスから外れてしまっている現実を知る人もいますが、割合としては小さなものです。その人たちの弱みをケアすることも大切なのですが、ほとんどの人たちは心配する必要はないでしょう。自分のどこに強みがあるのかを見つけ、どう行動すればもっと強いリーダーシップを身につけることができるのかを知ることのほうが大切です。また、世界で活躍するリーダーのトップ層と比較して、自分はどの程度の能力を持っているのかを把握できることもユニークな点です。自分の立ち位置を知り、「もっと力をつけたい」「もっと行動しよう」と動機づけられるでしょう。濱田さんの話から受講者の上司が部下の行動変化に気づいていることを知り、うれしく思いました。というのも、上司の関与が、人材の能力を伸ばすうえで大きなファクターになるからです。

濱田:プログラムを遂行するにあたり、「受講者の上司との関わり」は特に意識した点です。部下が研修に行っても、上司は報告書を読むだけということが多い。内容を把握していなければ当然、フォローアップもできないので、以前から課題だと感じていました。そこで「飛びぬけたリーダー」の研修を開催するにあたっては、上司向けにメッセージ動画を作成し、プログラムの概要を知ってもらうようにしました。また受講前、受講中、受講から3ヵ月後に、「部下にどんな変化がありましたか?」と定期的なモニターを実施。部下とアクションプランについて面談をセッティングしてもらうなど、1回の研修で終わらせないように工夫しています。継続的に取り組めている点も、このプログラムの魅力ですね。

ゼンガー:私たちのデータによれば、自分自身の能力開発に一生懸命な上司は、実は、部下の能力開発にも真剣であることがわかっています。反対に、自分の成長に興味がない人は、部下の成長にも意欲的ではない。ですから、マネジャーたちが「自分の能力をどのように高めたらいいだろうか」と試行錯誤することによって、自然と、その下の人たちの能力が伸びやすくなるといえます。“ひとりよがりであること”“傲慢であること”は、リーダーの敵。自分たちがすべての答えを持っていると思わないこと。昇進したから自分は偉いのだと勘違いしないこと。自分がどんなに優秀であっても、さらに優秀になる方法はあると謙虚に努力することを心掛けて欲しい。私は50年にわたってリーダーシップを研究していますが、実際にずっと伸び続けるリーダーはいることをお伝えしておきたいと思います。

ジャック・ゼンガーと濱田一人

リーダーシップ教育の対象者は
部下を持たない専門職も例外ではない

今後、「飛びぬけたリーダー」プログラムをどう活かしていくのか、貴社の展望についてお聞かせください。

濱田:リーダーシップ開発を継続的に行い、その効果をより高めていきたいと考えています。昨年から三井物産本社では、上司と部下の関係性を強めていくための「1 on 1」の取り組みを行なっています。組織開発を目的として2週間に1回、部下の能力開発にかかわるテーマで15分~30分、話をしてもらうというものです。これがうまく機能していて、アンケート結果から三井物産ならではのコンピテンシーも見えてきています。組織として戦略的にリーダーをどう輩出し、育てていくのか。これからさらに追求していきたいです。

ゼンガー:プログラムの効果を持続させていくうえで、コーチングや「1 on 1」のような取り組みは効果的です。人事考課のときに、もっと部下と話をしよう、コーチングを取り入れようというのは世界的な流れでもあります。これからのキャリアについてどう考えているのか。仕事をするうえで何がモチベーションになっているのか。コーチングを取り入れる企業が増えたことは、喜ばしい変化です。

濱田:時代の変化によって、「飛びぬけたリーダー」プログラムが提唱する、組織業績を大きく左右するリーダーシップ特性の傾向が変わるということもあるのでしょうか。

ゼンガー:時代の流れとともに、リーダーシップ特性の傾向が変わることはあります。私はずっとリーダーのコンピテンシーを見続けてきたわけですが、近年、三つの新しい特性に注目しています。一つは、「ダイバーシティ&インクルージョン」。特に欧米を中心に、人種や性別、年齢、宗教、嗜好などの違いを受け入れ、認め合い、生かしていくことの重要性や関心が高まっています。二つ目は「リスクテイク」。新しいことに挑戦することは常にリスクと背中合わせです。リスクを冒してでも新しい価値を生み出していくことが求められているといえます。そして三つ目は「アジャイルな学習能力」。リーダーやマネジャーたちが新しい状況に放り込まれたとき、柔軟に適応し、すばやく学ぶことができるかどうか。これら三つが重要であることをデータが示しているのです。北米の企業では、これら三つのリーダーシップ特性を追加する企業が増えています。

そのほかのトレンドとして、大手企業の多くが実感しているのが、リーダーシップとは一人の力ではなく、チームの力であるということ。サッカーであれ、ラグビーであれ、ビジネスであれ、チームとはお互いをよく知っていて、信頼しているときにうまくいくものです。チームリーダーを育てることに、今、大きな関心が寄せられていると感じています。そのような意味でも、リーダーシップ教育をより多くの人に行うことは重要です。例えば、1000人のマネジャーがいるのに、育成対象が50人だけであれば、企業文化を変えることは難しいでしょう。この話はよく家畜の病気に例えられるのですが、家畜の伝染病を止めようと思ったら、すべての家畜に免疫の注射を打ちますよね。一頭だけに注射をしても仕方がないわけです。悪いマネジメントというのは病気のようなもので、何かを改善しようとしても、対象人数が少なすぎればうまくいきません。より大きな範囲で、すべての階層・部門・職種を対象にしていく必要があります。たとえば、エンジニアや経理、研究者のように、会社の成長に欠かせないミッションを担っているけれども部下を持っていないといった人たちにも教育や研修を行うべきだと私は考えています。

最後に、日本企業で人材育成に携わっている方々にメッセージをいただけますか。

ゼンガー:リーダーシップの良し悪しが、ビジネスの結果を左右します。人材の採用や定着、従業員コミットメント、生産性、イノベーション、顧客満足、売上や利益率……ビジネスを成功させるうえでこれ以上に大切なものはないというほど、リーダーシップの質は非常に重要です。優秀なリーダーを得ようと思えば方法は二つ。一つ目は、外部からヘッドハンティングしてくること。二つ目は、社内の人材を育てること。アメリカの調査ではありますが、外部から採用した人材の40%が18~20ヵ月以内に辞めてしまうというデータもあります。外部から連れてくるよりも、組織のなかにいる人を育てるほうが、ずっと安全でコストパフォーマンスが高く、成果も出やすいのです。ぜひ、「飛びぬけたリーダー」の育成を通じて、その事実を体感してほしいですね。

ジャック・ゼンガーと濱田一人

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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この記事ジャンル リーダーシップ

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