派遣・請負・委託のどの契約に該当するのか
現在は、旋盤等による金属加工の作業を作業請負契約で請負っていますが、実態から見てどのような契約に該当するのか、教えてください。
①作業内容 → 旋盤等による金属加工
②作業場所 → 発注者の工場の一定エリアを無償で使用
③作業機材 → 発注者の機材を無償で使用
④指揮命令 → 当社の管理者
⑤勤怠管理 → 当社の管理者
⑥請負料金 → 実際に稼動した人員の稼動時間により、残業は割増で頂いている
投稿日:2006/05/25 19:03 ID:QA-0004816
- *****さん
- 北海道/運輸・倉庫・輸送(企業規模 51~100人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
派遣・請負・委託のどの契約に該当するのか
■まず、各契約の定義を整理します。<報酬の対象>と<労務提供の方法>の二つのキーワードを使えば整理し易いのではないかと思います。
▼派遣契約とは、派遣元と派遣先の契約に基づき、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために従事させる契約です。報酬対象は<労務の提供>であり、労務提供の方法は<派遣先の指揮命令下>にあります。
▼請負契約は、<仕事を完成>させることを約束し、仕事の結果に対して報酬をもらう契約で、報酬対象は<仕事の完成>であり、注文主に対する<労務提供はなく>、自己の判断で労務を調達・使用できます。建築請負・運送請負などがその事例です。
▼業務委託契約は、法律行為以外の事務を行うことを受諾した者が自分の責任・管理のもとで、その事務の処理を行うことを約束する契約で、報酬対象は<任された事務の処理>で、労務調達・使用は自己の判断と責任で行いますので、<労務提供はなし>と言うことになります。診療行為・不動産管理・財務諸表の作成業務などがその事例です。
■今回ご質問の契約は、<御社の指揮命令>の下にあるので、派遣契約ではありません。また、業務委託契約は民法656条に定めのある「準委任」に当り、対象は<事務処理>に限られていますので、今回の事例には当てはめるのは無理と思います。残るのは、請負契約ですが、「旋盤等による金属加工」を仕事の完成として把握する概念が窺がえないこと、報酬が従量的「実労働時間」で決められているとのことから、やはり難があるように感じます。
■対象の仕事ないし成果物は製品であることからは、消去法的に現行の請負契約の応用と考えるべきと思いますが、仕事着手から報酬受領までの流れには、むしろ業務委託契約の性格が窺がえます。結論としては、現時点では、変形請負契約とも言うべき契約というのが正しいのではないかと判断します。
投稿日:2006/05/26 10:01 ID:QA-0004821
相談者より
丁寧に答えていただきありがとうございます。一つ質問なのですが、当社の現在の契約実態が法的に問題があるかどうかなのですが?
投稿日:2006/05/26 10:12 ID:QA-0032004大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
派遣・請負・委託のどの契約に該当するのか
■御社の現在の契約が、下記二点に抵触していない限り、法的に問題はありません。
①公序良俗に反する契約(民法90条)⇒犯罪行為を依頼する契約等
②強行規定に反する契約⇒現在グレーゾーンが問題になっている「利息制限法」「出資法」に定める利息限度を上回る定めをした契約等
■《参考》
▼民法の「契約自由の原則」の下では、契約は当事者間の自由に委ねられていますので、契約の種類も無限大になります。民法では、典型契約として次の13種類を決めています。
贈与 売買 交換 消費貸借 使用貸借 賃貸借 雇用 請負 委任 寄託 組合 終身定期金 和解
▼契約はこれですべてと言うわけではありません。時代が変わっていくにつれて、民法では対応しきれない、新しい形の契約(非典型契約)も生まれてきており、民法はこのような新しい形の契約を認めています。
▼御社の契約は、「加工生産委託契約」とでも呼称すればよいのではないでしょうか?
投稿日:2006/05/26 11:26 ID:QA-0004828
相談者より
非常にわかりやすく丁寧に教えていただきありがとうございます。今後の参考にしていきたいと思います。本当にありがとうございました。
投稿日:2006/05/26 12:33 ID:QA-0032009大変参考になった
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