5類感染症(コロナ・インフル)休業手当の支払いについて
10数名の小さな会社で事務をしております。
この度コロナウイルスに感染した社員がそれを隠して出勤し、社内で問題となった為、これまで規定はなく、一般的なコロナ・インフル基準に基づき、各自の良識にまかせてその都度判断という形をとっていましたが、改めて文書で規定をする必要があるという事となりました。
そこで、どこまでを会社で指示して良いものなのか、どこからが休業手当支払いの対象となるか、ウェブ上で調べても判断基準にばらつきがある印象でしたので、こちらで相談をさせてください。
①38℃の発熱の場合に病院への受診を会社で指示して問題ないか
②医師の診断で出勤停止とされた期間は、出勤停止としても会社から休業手当の支払いは不要か
③検査キットを使用し感染が判明した場合、一般的な待機基準にもとづき出勤停止の指示をしても良いか(医師の診断をともなっていない)
あるいは検査キットで陽性の場合は病院へ行く事を指示しても問題ないか
④医師からの出勤停止期間内でも発熱が続くような場合、一般的な基準にのっとり解熱後2日経ってからでないと出社できないと規定してもその間の休業手当は不要か
長期休みとなるような場合は傷病手当を使ってもらえば良いと考えていますが、それでは問題があり、会社から6割の休業手当の支払い義務が発生しますでしょうか。
※全て感染源がどこか不明な場合(会社に責がない場合)の想定です。
数名でグループになり現場へ行き作業を行う仕事の為、
感染を広げないために、できるだけ基準を明記したいと思うのですが、書いてしまう事により、会社の支払い(休業手当)が増えてしまうのも困るため、教えていただけると助かります。
また、このような会社規定を策定する場合は、就業規則への明記が必要になりますでしょうか。
ご教示よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/08/08 16:04 ID:QA-0156597
- みゅうみゅうさん
- 埼玉県/機械(企業規模 6~10人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.ご質問ごとに整理してお答えします
(1) 38℃の発熱時に受診を会社で指示しても問題ないか?
→ 指示して問題ありません。
労務提供に支障があると合理的に判断される場合、医師の診断を求めるのは労務管理上適切な対応です。
就業規則や感染症対応の社内ルールに、「発熱時には医療機関の受診を求める」と記載しておくことで、社員も納得しやすくなります。
(2) 医師により出勤停止とされた場合、休業手当の支払いは不要か?
→ 支払いは不要です(労基法第26条の「使用者の責」に当たらないため)
医師の診断による出勤停止は、「労働者本人の私傷病による就労不能」扱いとなり、会社都合の休業には該当しません。
よって、この間の賃金補償は義務ではなく、本人が欠勤扱いや健康保険の傷病手当金の申請対象となります。
(3) 検査キットで陽性だった場合、出勤停止の指示や病院受診の指示は可能か?
→ いずれも指示可能です。
医師の診断がなくとも、検査キットによる陽性反応を根拠として出勤停止を命じることは、業務上の安全配慮義務から合理的行為とされます。
「検査キット陽性の場合は速やかに受診・報告し、会社の指示を受けること」と社内規程に明記しておくことをお勧めします。
ただし、医師の診断がない状態で会社が出勤停止を「強く指示」した場合は、会社都合による休業と見なされるリスクがゼロではありません。
→ 医療機関での受診を促し、医師の診断書を根拠に出勤停止とすることが最も安全な運用です。
(4) 医師が出勤可能とした後も、発熱等が継続している場合、解熱後●日経過を出社条件にし、休業手当不要とできるか?
→ 原則:会社が“出社禁止”とする場合は休業手当が必要になるおそれあり
医師が出勤可能と診断したにもかかわらず、会社が独自に「解熱後2日経過までは出社不可」と制限する場合、それは使用者都合の休業と評価される可能性があります。
よってこの場合、会社に「休業手当(平均賃金の6割)」の支払い義務が発生する可能性が高いです。
対策
→「出勤可否は体調と医師の判断による」とし、出社判断は医師にゆだねる運用とするのが無難です。
・傷病手当金との関係(会社の支払い義務とのバランス)
傷病手当金は「連続する3日間の待機期間のあと、4日目から支給」となります。
医師の診断書があり、労働不能とされている場合は、傷病手当金により生活保障がされるため、会社は休業手当を支払う義務は基本的にありません。
逆に、医師の判断なく会社が「自主的に」出勤停止を命じると、休業手当の支払い義務が発生する可能性があるので注意が必要です。
・ 規定化について(就業規則の扱い)
規定の作成は 就業規則の別規程や社内通知でも可
就業規則本体に記載する必要はなく、「感染症対応ガイドライン」等の別文書(社内規程)でも運用可能です。
ただし、就業規則にリンクする位置づけ(服務規律や出勤停止に関する根拠)をもたせておくとベターです。
規定記載例(社内通知・感染症対応ガイドライン等)
第◯条(感染症への対応)
1. 従業員が以下のいずれかの症状を呈した場合、速やかに上長に報告し、必要に応じて医療機関を受診しなければならない。
(1)38度以上の発熱
(2)咳、のどの痛み、倦怠感等の体調不良
(3)抗原検査キットで陽性反応が出た場合
2. 医師により出勤停止と判断された場合は、その指示に従うこと。会社は当該期間中の出勤を禁止する。
3. 出勤停止期間中の賃金については、会社に責任のない私傷病による欠勤として取り扱い、休業手当の支給対象とはしない。
4. 会社が独自に感染拡大防止の観点から出勤を制限する場合、その取り扱いについては別途協議の上決定する。
5. 感染症の予防・拡大防止のため、会社は必要に応じて体温測定、検査キットの使用、出勤制限等の措置を講じることがある。
2.まとめ
項目→会社からの指示→休業手当の要否
38℃以上の発熱→受診→指示可→不要
医師の出勤停止→指示可→不要(傷病手当金対象)
検査キット陽性で出勤停止→指示可(医師の受診推奨)→医師診断なしの場合、手当発生リスクあり
医師が出勤可でも会社判断で待機指示→指示可だがリスク高→手当発生の可能性大
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/08/08 16:28 ID:QA-0156599
相談者より
早速のご回答ありがとうございます。
とても丁寧に各項目分かり易くご教示いただいて本当に助かりました。
ネットで検索をかけても様々な記載があり、他の社員から、それは良くないのでは…など色々と指摘を受けていたもので、問題ない事が分かり、とてもスッキリ安心しました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/08/08 17:35 ID:QA-0156605大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします
会社には安全配慮の義務がありますので、高熱をともなう社員に対し、
受診を指示することは問題ありません。
医師の診断にもとづき、出勤停止された期間については出勤を停止する必要
がありますが、あくまで私傷病の欠勤として扱いますので、休業手当の支払い
義務はなく、傷病手当金でカバーする問題となります。
検査キットを使用し感染が判明した場合も同様に、医師の受診を指示し、
医師の診断にそって、出勤を停止ください。医師の受診なく出勤停止をした
場合は、会社指示により自宅待機したものとみなされ、休業手当の支払いが
必要となるケースが生じます。
復職に関しても、医師の指示(許可)により、復職を認めてください。
また、医師の指示については、医師から証明書を受領した上で、会社に
提出させ、証明書にそって、ご対応いただくのが基本となります。
投稿日:2025/08/08 16:37 ID:QA-0156600
相談者より
早速のご回答ありがとうございました。
医師の受診なく出勤停止をした
場合は、休業手当の支払いが必要となるケースが生じること、
復職も医師の指示(許可)により認めること、
このあたりの判断に迷いがあった為、ご教示いただけてとても助かりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/08/08 17:40 ID:QA-0156608大変参考になった
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