労働協約と賃金控除に関する協定書の関係性について
いつもお世話になっております。
当社では労働協約に、賃金控除に関する事項(※一般的に賃金控除に関する協定と同内容)を条項化して記載し、協約を締結しております。
会社代表と従業員代表が結んでいる労働協約にて賃金控除に関する事項が網羅している状態でも、”賃金控除に関する協定”は別途締結しないとならないものでしょうか?もしそうだとしたら、根拠法律などがあれば教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/08/04 14:00 ID:QA-0156282
- HOKKAIさん
- 北海道/販売・小売(企業規模 1001~3000人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
結論から申し上げますと、労働協約に賃金控除に関する事項が規定されており、それが有効に締結されたものであれば、別途「賃金控除に関する協定(労基法24条1項但書の協定)」を締結する必要はありません。つまり、重複して締結する義務はありません。
2.根拠法令・通達
・労働基準法 第24条(賃金の全額払いの原則)
賃金は、原則として全額を労働者に直接支払わなければならない。
ただし、法令もしくは労使協定による場合は控除を認める(第24条1項但書)。
・該当条文(抜粋)
賃金は、通貨で、直接労働者にその全額を支払わなければならない。
ただし、…法令に別段の定めがある場合及び労使協定がある場合を除いては、この限りでない。
・労働協約がある場合の特例(労働基準法第2条、労働組合法)
労使協定の代わりとして、労働組合と使用者が締結した労働協約が存在する場合、その協約が有効に締結されていれば、法的効力は労使協定に優先するとされています。
※労働協約は、民間の労使間で締結される公法上の契約であり、
労基法上の労使協定に代替する効力があると解されています。
3.参考通達・行政解釈
労働省労働基準局監督課「昭和63年3月14日 基発150号」などによれば、
「労働協約で当該内容(控除の項目等)が明確に規定されている場合には、別途協定を締結する必要はない」
4.要件を満たすか確認すべき点
労働協約によって代替可能ではありますが、以下の要件を満たしているかは確認してください。
確認ポイント→内容
締結相手→適法な労働組合(または労働者の過半数代表)と締結しているか
協約内容→控除の目的・対象・項目が明確に記載されているか
有効期間→有効な期間中の協約かどうか
労働者への周知→従業員に協約内容が開示されているか
5.補足:過半数代表との協定との違い
項目→労働協約→労使協定(協定書)
相手方→組合(労組)→過半数代表者など
法的効力→就業規則等にも優先される→協定内容が限定的(例:36協定等)
周知義務→就業規則と同様に周知推奨→労基署への届出が必要なものあり
今回のケース→賃金控除の内容が労働協約で網羅されていれば協定不要
6.まとめ
項目→回答
労働協約に賃金控除の条項がある場合→別途協定(協定書)の締結は不要
条件→有効な労働協約であること/内容が明確であること
法的根拠→労基法第24条1項但書/労働協約の優越性(判例・通達)
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/08/04 15:31 ID:QA-0156289
相談者より
お世話になります。
ご回答ありがとうございました。
非常に解りやすく且つ根拠となる情報も提供いただき、感謝申し上げます。
アドバイス頂いた点を参考に、社内対応を検討したいと思います。
ありがとうございました。
投稿日:2025/08/04 19:55 ID:QA-0156331大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、労働協約であっても、従業員の過半数で組織された労働組合の代表者と締結されていれば、労使協定に該当します。つまり、法令上の労使協定の性質を有する労働協約という事になります。
従いまして、別途労使協定の締結についてはご不要です。
投稿日:2025/08/04 16:29 ID:QA-0156299
相談者より
お世話になります。
ご回答ありがとうございました。
アドバイス頂いた点を参考に、社内対応を検討したいと思います。
ありがとうございました。
投稿日:2025/08/04 19:56 ID:QA-0156332大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
賃金控除に関する内容が労働協約に明記されており、使用者と労働組合(または
過半数代表者)がその協約を締結している場合は、賃金控除に関する協定を別途、
締結する必要はありません。
労働協約によって賃金控除が認められている場合には、労働基準法第24条第1項
但書の労使協定に該当するものと解されます。
なお、効力の優先順位としても、労働協約>労使協定となり、労働協約の方が、
効力が強いものとされております。
投稿日:2025/08/04 17:04 ID:QA-0156303
相談者より
お世話になります。
ご回答ありがとうございました。
アドバイス頂いた点を参考に、社内対応を検討したいと思います。
ありがとうございました。
投稿日:2025/08/04 19:56 ID:QA-0156333大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
労働協約に賃金控除規定があるだけでは、自動的に非組合員に効力は及びません。
労働協約は包括的な内容であり、
非組合員にも効力を及ばせたい、あるいは同意を重視するためには、
労働協約を保管する意味で、リスク管理のためにも、賃金控除の労使協定も締結しておく必要があります。
このように労働協約と労使協定は似ているようで少し違いがあります。
投稿日:2025/08/04 19:32 ID:QA-0156327
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