なくてもいいビジネスを、なくてはならない存在に
強みを磨き、経営に直結するサービスを提供
株式会社 マネジメント サービス センター 代表取締役社長
藤原浩さん
トップ就任直後の窮地、救ったのは半世紀におよぶ歴史の財産
MSCは、今年で創業50年を迎えます。国内における人材開発コンサルティングのパイオニアとして、これほど長く業界をリードし続けている秘訣はズバリ、何ですか。
創業者ともよく話すのですが、成長のベースとしては、やはりアセスメントという主力商品が、安定して支持されてきたことが大きいでしょう。当社が今日まで存続できた最大の要因だと考えています。戦後、在日米軍の人事訓練部でトレーナーとして勤務していた創業者が、米軍時代の仲間と共に当社を立ち上げたのが1966年。当初から、女性が活躍できる社会をつくるにはどうすればいいのか、誰もが公平・公正に処遇される職場をつくるにはどうすればいいのかという問題意識を持ち、女性の能力開発にいちはやく取り組んでいたことから、海外はどうなのかと視察に出かけ、アメリカでアセスメントという手法に出会いました。性別ではなく、能力――そこをきちんと評価する科学的なしくみがあることを知り、ぜひ日本に持って帰ろうと考えたのです。アセスメントの導入に伴い、ノウハウを所有していた世界最大規模の人材コンサルティング会社である米DDI社と、技術提携を結ぶことができたのも、当社にとっては大きかったですね。
日本におけるアセスメントサービスの歴史が、そのままMSCの成長の歴史であるといっても過言ではありませんね。
おっしゃるとおりです。ただ、時代とともに、企業がアセスメントに求めるものはずいぶん変わってきましたね。用途としては、最初は能力開発がメインでしたが、しだいに昇進昇格や配置転換などのセレクションに活用されるようになっていきました。非管理職から管理職に上がる段階で使うだけではなく、たとえば若手の適性を少し早めに見極めて適材適所への配置を進めたり、逆にいえば、社員には若いうちから自分の能力の傾向を把握することで、自分の将来のキャリアを考える材料にしてもらったり。あるいは、より上位層でいうと、経営職に登用する・しないという段階でも使われます。そこのジャッジをしっかり行わないと、企業としては経営リスクが格段に高まりますからね。また、私が入社した頃は、集合研修も三日間ぐらいカンヅメでやるのがふつうでしたが、最近は時間やコストの制約もあって、せいぜい一日か二日で、より“ライト”にやってほしいという企業も少なくありません。アセスメントの用途だけでなく、やり方も非常に多様化しています。
さて、そうした長い歴史をもつMSCを、藤原社長は2011年から、トップとして率いていらっしゃいます。就任当初の心境をあらためて振り返っていただけますか。
東日本大震災があり、正直なところ、就任当初は将来の目標や大きな志を掲げるどころではありませんでした。震災の影響で、研修関係の予算は、各企業とも軒並みストップしてしまいましたから。アセスメントをやりたくても、コストの問題以前に、オフィスが壊れたり、使えなくなったりして、研修を行う場所が用意できないというお客さまも少なくありませんでした。あのときはもう、このままでは会社がどうにかなってしまうんじゃないかという恐怖さえ感じましたね。生き残るためには、何をどうすればいいのか。トップを任された以上、とにかく会社をつぶさないようにと、そればかり考えていたような気がします。
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。