「適性検査」の特徴・利用メリット
人材の能力・性格・興味などの個人差を、経営人事のために測定できる「適性検査」。 ここでは、「採用」における「適性検査」に重点を置き、その特徴や限界、利用メリットについて解説する。
「適性検査」とは「感情」「知能」「意欲」など さまざまな角度から測定し、人物理解を深めるためのもの
人事における「適性検査」とは、人材の能力・性格・興味などの個人差を、経営人事のために尺度で表し、測定するものである。特徴としては、1)人を理解するための三側面である「感情」「知能」「意欲」を柱に人物の全体像をみることができること、2)この三側面をさらに細かく分類し――「感情」であれば、向性・情緒安定性・理知性・活動性・慎重性など、「知能」であれば、言語・数理・理論・常識・英語力など、「意欲」であれば、チームワーク力・計画的行動力・目標達成力・柔軟な思考性・リーダーシップなど――人物を広く、さまざまな角度から分析ができること、3)他の受検者と比較できることから人物の個性や持ち味が明確になることなどが挙げられる。
そのため、採用選考以外にも、配置やマネジメント、昇給・昇格の場面などで使用されるが、ここでは採用選考に絞って「適性検査」とは何かを探ってみたい。
短時間・効率的・客観的に測定できるが、 大前提として「求める人材像」を明確にする必要がある
先述した他にも、適性検査の特徴・利点には、1)短時間で、2)効率的に、3)客観的に、大量の情報を収集できることがある。そのため、採用選考の際には人事担当者の負担軽減・予算削減などの点から利用価値が高いものであることは言うまでもない。しかし、気をつけるべき点は、ツールの選択によって得られる情報が違うため、自社に相応しい適性検査を選択する必要があるということである。具体的な選択方法については「『適性検査』の選び方」の項に譲るが、「選ぶ」前に大前提となるのが「求める人材像の明確化」である。というのも、最大の目標である「優秀な人材を採用する」ためには、「優秀な人材」を企業側で定義づける必要があり、その定義なくしては、「どの尺度に着目」して適性検査を実施するのかを決定することができないからである。また、ツールとしての適性検査の選択を誤るだけでなく、尺度ごとの採用選考の適切な基準値を設定することができず、そもそもの「優秀な人材を採用する」という目的を達成できなくなってしまう。
適性検査の限界を理解した上で、利用すること 採用選考の一手段であり、絶対的尺度ではないことを知る
では、求める人材像を明確にし、自社の採用選考に相応しい適性検査を選択すれば、自動的・機械的に適切な人材を採用することができるのだろうか――答えは「否」である。そもそも適性検査には測定できる範囲が限られている。例えば、能力や応用力、専門性、人柄や性格、個性、やる気や価値観・志向といった内容は適性検査で測定できる範囲内であるが、忍耐力・洞察力・創造性・コミュニケーション能力・機転が利く……といった内容は測定できない。というのも、これらは心理学的に一つの概念として認められてはいるものの、質問紙などでは測定できないものであり、測定できるものは、心理学的な理論から概念が明確になっていて、尺度で表すことができるもののみということができる。
また、適性検査の精度を測るためには「信頼性」「妥当性」「標準性」という概念を使用するが、あくまで理論的な想定値であり、「信頼性」については誤差を含む。適性検査を導入するにあたっては、この誤差の程度を事前に把握し、限界を理解しておく必要があるだろう。
ただし、時間やマンパワーの制限のある中で、短時間で、客観的に、大量の情報を収集できる適性検査の活用ニーズが高いのは必然である。だからこそ、正しい理解をした上で適性検査を使用する必要があるのだが、それには適性検査以外の採用選考の手段――応募書類(エントリーシートなど)・論文試験・面接――などと比較し、適性検査の位置づけを明確にしておくのがよい。以下は採用選考の手段と測定内容、その特徴を簡単にまとめたものである。
『日本の人事部』編集部が取材・作成。「適性検査」の活用方法や業界の代表的企業の最新情報などコンテンツが満載。
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