なくてもいいビジネスを、なくてはならない存在に
強みを磨き、経営に直結するサービスを提供
株式会社 マネジメント サービス センター 代表取締役社長
藤原浩さん
「アセスメント」で人と向き合う面白さを発見、責任の重さも
MSCに入社された当初の印象や、担当された業務についてお聞かせください。
MSCの主力商品に、当社が1973年に国内で初めて導入した「ヒューマンアセスメント」という、米国発の人材評価プログラムがあります。これは通常2、3日間の集合研修スタイル(アセスメントセンター方式)で行い、研修中に観察された参加者の言動を評価するサービスですが、私の当社におけるキャリアは、その研修の講師役としてアセスメント業務に携わるところから始まりました。
入社してまず驚いたのは、人材アセスメントというものにこれほど多くのニーズがあるのかということです。当時、一般にはほとんど知られていなかったのですが、すでに数多くの企業が導入し、しかも継続的に取り組んでいることに感銘を受けたのを覚えています。何よりも、企業を支えているのは一人ひとり異なる特徴や傾向をもつ“人間”なのだ、という事実を目の当たりにしたこと自体、私にとっては大きな発見でした。それまでは経営コンサルタントとして、企業を総体的に見ることが多く、そうした見方では、個のレベルの実態までなかなかつかめなかったからです。アセスメントを通じて、個々人の志向性や頭の使い方、行動特性といったものを明らかにするだけでなく、それらが本人の職務に本当にマッチしているのか、会社によってうまく活用されているのかという部分にも、興味や問題意識をもつようになりました。人は、100人いれば、本当に100通りですからね。
アセスメント業務を通じて、一人ひとりの人材と向き合うやりがいや面白さを、あらためて見出されたわけですね。その「ヒューマンアセスメント」の流れを、もう少しくわしく教えていただけますか。
集合研修はお客さまサイドで運営され、1回の研修に通常は18名程度が参加します。参加者には目標職務を擬似体験するさまざまなシミュレーション演習が課せられ、そうした課題に対する参加者個々の反応を、当社から派遣した「アセッサー」と呼ばれる評価者が、あらかじめお客さまの求める人材像から抽出、設計した能力要件にもとづいて、観察・評価します。シミュレーション演習では、個人で意思決定をしたり、他者を説得・交渉したり、あるいはグループで討議したり、目標職務を想定してさまざまなシチュエーションが提供され、そこから一人ひとりの能力を分析するというのが基本的な流れです。人材アセスメントがお客さまに価値をもたらすためには、何よりも、評価の客観性や安定性が担保されなければなりません。状況や視点によって偏りが生じないように、当社では複数の演習課題を組み合わせた上で、一人の参加者を複数のアセッサーが観察・評価する多面評価を用い、評定の公正性、客観性を高めています。
コンサルタントに求められる“人を見る目”とは、どういうものでしょうか。また、それはキャリアを積むにしたがって磨かれていくのでしょうか。
アセスメントでは、その行動がどういう能力に裏づけられ、ひもづけられているかを分析することが一番重要なのですが、その際、「これならこれ」と安易に決めつけないで、この可能性もある、あの可能性もあるというふうに幅広く、柔軟に見ていかなければいけません。そうした“仮説の引き出し”は、たとえば「アドミニストレーター」のレベルに達すると、かなり広がってきますね。アドミニストレーターとは、アセッサーを統括し、アセスメント全体を設計・マネジメントする役割で、このポジションに就くと、1年間におよそ1000人は人を見ることになるからです。また、目標職務に応じた評価が求められますので、研修に参加する方々の、組織での立場や役割によっても、相手を見る視点は変えなければなりません。たとえば参加者が、トップや役員などの経営層であれば経営層の視点で、現場のリーダーであれば現場リーダーの視点で、それぞれ観察・評価できているかということです。そういう部分も、私自身はキャリアを重ねるにつれて熟練度が上がってきたと思います。
人が人を見て、評価するわけですから、やりがいもある反面、難しさや厳しさを痛感される場面もあると思うのですが。
やはり一番は、責任の重さでしょうね。特にアセスメントのデータは、その人の評価を決定し、昇進昇格をも左右するという意味で、きわめて重要な人事情報ですから。アセスメント研修も、われわれにとっては日常的にたずさわっている仕事の一つですが、参加される方はほぼ一生に一度。自分のキャリアがそれで決まってしまうかもしれない、重要なイベントなのです。私自身、自分たちの仕事がもたらす影響の大きさを肝に銘じ、社内に向けてもたえずそのことを訴えてきました。
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。