ヤフー株式会社:
四つのバリューで働き方のリズムを変える!
ヤフーの“爆速”経営を支える“ワイルド”な
新評価制度とは
人事本部 人事企画室 室長
湯川 高康さん
四つの基準で評価される「バリュー評価」
こうしたバリューはともすると単なるスローガンになりがちですが、御社の場合、ヤフーバリューをそのまま評価基準として連動させているところがユニークですね。
従来の評価制度では、評価項目が30項目ありました。数値化されて本人にフィードバックされてはいたのですが、30項目もあるとどうも腹落ちしづらいんです。改善しようにも、何がどれくらい悪かったか、本人も覚えていられません。そうなると、先述したように、本来は人材開発に資するはずの評価が、給料に差をつけるためのエクスキューズになってしまう。
そこで、われわれが目指す四つのバリューそのものを評価軸にすえた「バリュー評価」に改めたんです。人事の常識からすると、それこそワイルドな決断でしたね。たった四つの基準だけで、全社員を明確に評価しようというわけですから。たとえば「ワイルド」の評価軸に関していえば、「困難なことがあったとしても、果敢にチャレンジして、それを楽しんで取り組んでいますか?」と問われます。こうした設問を四つのバリュー軸について各2問。さらに役職に応じた設問を2問加え、計10問というシンプルな評価項目にまとめました。しかも実際に社員の評価を下すのは、上司だけではありません。
新制度では「360度評価」が採用されていますね。
ええ。多面評価自体は以前からあり、従来は上司と自己評価のほかに、同僚ラインから二人、他部署ラインから二人の評価を加味していましたが、この評価者の数を大幅に増やしました。管理職と一般の社員とで違うのですが、管理職はまず自分の上司と部下全員から評価されます。部下が10人いれば10人全員、20人いれば20人全員から、点数をつけられるわけです。あとはその他の関係者が6人。多い人になると、全部で20数人から評価されて、その点数がすべて最終評価に反映されます。一般の社員は上長ラインが二人と、同僚、他部署の関係者が8人で計10人。自己評価を入れると11人になりますから、上にだけいい顔をして仕事をしても評価は上がりません。
上司以外の評価者は、どうやって決めるのですか。
評価される本人が、自分で決めます。各期の目標を決める段階で、評価してもらいたい人を先に選んでおくのですが、これもかなり珍しい制度かもしれませんね。選ばれた評価者には人事から通知します。印象論ではなく、確かな事実をもって評価しないと相手に響きませんから、評価者にも半年間、相手の言動をきちんとチェックするように覚悟を促すわけです。とはいえ仲のいい人ばかりを選ぶかもしれないので、上司には評価者を差し替えられる権限をもたせました。「ご飯をおごるから頼むよ」といった不正行為も心配しましたが、いまのところ、それは杞憂(きゆう)だったようです。
そうやってお互いに観察し、評価しあいながら仕事をすること自体にメリットがありそうですね。
そうなんですよ。職場にいい緊張感が生まれて、無責任な発言や行動はできない雰囲気になってくるんです。やはり自分の評価に跳ね返ってきますから。人事としては、たった四つのバリューを軸とした10個の設問で、はたして評価に適切な差がつくかという点が一番の心配事だったのですが、3月に最初の評価を終えてみたら、これも杞憂でしたね。全員が真剣に観察し、評価してくれたおかげで想像以上に適切に評価に反映されました。