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となりの人事部
日本の人事部「HRアワード2016」受賞者インタビュー
第78回 プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社

P&Gは「スキル」に着目したプログラムを、
なぜ他社に無償で提供するのか?――
「ダイバーシティ&インクルージョン啓発プロジェクト」
発足の背景と活動内容とは(前編)

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社 ヒューマン・リソーシス マネージャー 小川 琴音さん
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ダイバーシティ&インクルージョンの「三つの柱」

―― 御社では、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する際に必要なものとして「三つの柱」を掲げているそうですが、詳細をお聞かせいただけますか。

当社では、「企業文化」「制度」「スキル」の「三つの柱」を掲げています。

<図2:P&Gジャパンの「ダイバーシティ&インクルージョン」推進のための三本柱>

ロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社:多様な価値観の人材が活躍するための働く方活躍の場の整備

まず、「企業文化」。お互いの違いを尊重できる風土、自分の個性を安心して共有できるような風土を醸成する、ということです。

「制度」は、そうした「企業文化」を支えるものです。社員には、さまざまな事情を抱え、サポートが必要な人もいます。育児・介護といった問題に直面している人もいるし、人によってベストな「働き方」は違う。対象を絞った制度ではなく、幅広い人を対象とした「働き方」に関する制度を整えています。

次に、「スキル」。先ほどご説明したように、「ダイバーシティ&インクルージョン」には「スキル」が必要だ、と当社は確信しています。自社でプログラムを開発して、スキルを伸ばすためのトレーニングを行っています。

―― 「企業文化」は形のない、漠然としたものですが、どうやったら文化を醸成できるのでしょうか。

企業文化を醸成するには、まずはトップがロールモデルになることではないでしょうか。そうして初めて社員に浸透します。当社は、トップ自身が「ダイバーシティ&インクルージョン」の重要性を主張し続けていて、行動につなげています。それを社内広報などの場面で、積極的に見せてもいます。

また社員は、新入社員の頃から研修の場で「ダイバーシティ&インクルージョン」の重要性を教えられていますし、管理職も頻繁に研修を受けています。当社では、さまざまな場面に「ダイバーシティ&インクルージョン」の要素を散りばめることによって、文化をつくっているのです。

―― 「制度」には、どのようなものがありますか。

代表的な制度としては、三つあります。一つ目は、「ロケーション・フリー・デー」。いわば在宅勤務の進化形です。「在宅勤務」と言えば、「自宅で働く」ことを指すのが普通ですが、「ロケーション・フリー・デー」を使うと、情報機密が守られればどこでも働いていい。特別な条件は必要ありません。入社2年目から、1ヵ月に最大五日間利用できます。

二つ目が、「フレックス・ワーク・アワー」。月単位で労働時間を管理するものです。月単位で所定労働時間を満たしさえすれば、柔軟な労働時間を設定することができます。「この週はプライベートの用事が多いから、労働時間を抑えめにして、次の週はその分多めに働く」など。これは入社してすぐ、新入社員でも使えます。

三つ目が「コンバインド・ワーク」。労働時間短縮と在宅勤務の複合です。いわゆる「中抜け」。朝出社して、午後に子供の世話や介護をするために、会社を出て、そのあと自宅で仕事をする、といった働き方です。この制度に限り、利用にあたっては育児や介護などの特別な理由が必要です。

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社 ヒューマン・リソーシス マネージャー 小川 琴音さん

他社と比べると、制度の数は少ないかもしれませんが、それぞれの制度が柔軟です。利用しなければならない人が利用しやすく、利用の仕方も限定されているわけではない。常に社員のニーズに合わせて制度を改定し、拡充し続けています。

私は昨年、産休・育休から復帰したのですが、そのときちょうど「コンバインド・ワーク」の制度が始まったばかりのタイミングでした。私としては復帰後、フルタイムで働きたかったので、上司に相談したところ、「コンバインド・ワーク」を教えてもらいました。そして、この制度を使うことができ、フルタイムで復帰できたのです。そのときは、自分の希望がかない、モチベーションが上がりましたね。

当社の社長も月に一回、「ロケーション・フリー・デー」を利用しています。また、子育てを目的に「コンバインド・ワーク」を利用している執行役員の男性もいます。制度を利用する必要のある、さまざまな人が制度を利用しています。

ただ、当社としては「どんどん制度を使ってください」というスタンスではありません。社員が制度を利用する際には、オンライントレーニングで条件を確認し、制度を利用する意義を社員自身が考えます。その上で、上司に申請。上司は、「制度の利用によって生産性が上がるか」といった点を見極め、シビアに判断します。あくまでも経営戦略として多様な人材を生かし切る、ということが根本にあるからです。生産性を上げ、ビジネスを伸長させることにつながらなければ、上司は制度の利用を承認しません。

―― 「スキル」を伸ばすためのトレーニングを行っている、とのことですが、具体的にはどのような「スキル」を身につけるのでしょうか。

相手を認め、生かし合うことがインクルージョンですが、そこには双方向のコミュニケーションが必要です。コミュニケーションをとる上で「無意識の偏見」(他者に対する思い込み)が誰にでもあることを理解し、意識しながら他者の意図や考えを受容する姿勢などが、当社が言う「スキル」です。このような根本的な考え方をトレーニングで身につけるようにしています。


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