「共振の経営」を実現する「共振人材」は
いかに生まれるのか
社員の自律的行動を促す“ユニ・チャーム流”人材育成術(後編)[前編を読む]
ユニ・チャーム株式会社 グローバル人事総務本部 キャリア開発グループ シニアマネージャー
中島 康徳さん
「働き方改革」が多様な人材の力を100%発揮させる
そのほかに、ユニ・チャームで予定している人材育成関連の施策についてお聞かせください。
現在ユニ・チャームでは、全ての社員が輝くことのできる、働きがいのある会社を目指し、職場環境の整備と改善に努めています。これまでも、「所定外労働時間の削減」「通年サマータイム制の導入」「年次有給休暇の取得促進」など、さまざまな取り組みを進めてきました。そうした流れの中で今回、働き方改革の一環として「働き方改革推進室」を新設し、全社員を対象とした「在宅勤務制度」と「インターバル勤務制度」を導入しました。
「在宅勤務制度」では、働く時間・場所を社員の裁量に任せ、重点業務に集中して成果物を創出してもらいます。多様な働き方ができることによって、一人ひとりの自立・自律のマインドを加速させ、その結果、生産性の向上・創造性の発揮が期待できます。また「インターバル勤務制度」は、22時以降の勤務を原則禁止し、勤務終了から翌日の勤務開始まで8時間以上の休憩を義務化、10時間以上の休息を奨励するものです。このような勤務体制を徹底することによって、疲労蓄積防止による健康維持と、ダラダラ残業の撲滅を図っていきます。
「共振の経営」を実現するには、「働き方改革」も必要不可欠なのでしょうか。
ユニ・チャームを世界No.1の会社にするためには、いろいろな人が必要です。いろいろな才能・能力を持った人が、その力を100%発揮することができれば、事業目標の成功確率は高まっていくはずです。だからこそ、働きがいのある会社になるよう、いろいろな施策を考えていきたいと考えています。「働き方推進室」を設けたのも、そのような理由からです。
最後に、人材育成に取り組む人事担当の方々に向けて、メッセージやアドバイスをお願いします。
企業価値の源泉は「人」にあります。では、どうすれば価値を生み出す人を育てられるのでしょうか。逆説的ですが、その答えは「人は作れない」ということです。では、人事にはいったい何ができるのかというと、私は成長する「場」や「機会」を準備することしかないと思っています。最終的には、本人のやる気に火がつかない限り、何もできないからです。取って付けたような研修ではなく、日々の仕事や業務の中に、人が育つ「上司と部下の関係性」「部下の一挙手一投足が気になる上司の育成」「大事な価値観が伝承される風土作り」があるなど、リアルな現場での対応が大きなカギを握っていると思います。
社長の「カバン持ち」の事例を出しましたが、「感化する力」あるいは「以心伝心」は人の成長において大切だと思います。真摯に仕事をして成果を出している先輩の姿を見たら、部下もそれを見習うようになります。そういう関係性や価値観を皆が持つことのできる職場をどう維持・拡大していくのか――人事として多いに苦心するところです。
結局、先輩が「いい後ろ姿」を見せることが重要なのだと思います。「いい仕事」をして「いい成果」を出す先輩が、途切れずに存在すること。そのための評価・処遇制度や教育制度を、今後は複合的に組み合わせて構築していきたい。それこそがまさに、「共振の経営」を実現する「共振の人事」だと思います。
(取材は2016年10月20日、東京・港区のユニ・チャーム本社にて)