やるだけでなく、やりきる仕組み
“働き方改革”でIT業界の常識を覆す。
SCSKの「スマートワーク・チャレンジ」
とは(前編)
SCSK株式会社 執行役員 人事グループ副グループ長
河辺 恵理さん
困難な目標に挑まなければ具体的な行動変革につながらない
働き方の改善に向けた一連の取り組み(図1)が始まったのが2012年4月。前年秋に新会社が合併・発足してから、半年しか経っていませんね。
社員の中には、合併したからいろいろ制度が変わったのだ、と思っていた人もいたようです。逆に、合併直後のタイミングでなければ、あれほどうまく導入できたかどうか、わかりません。12年4月にフレックスタイム制を全社に適用。同年7月には裁量労働制を導入し、メリハリの利いた働き方に向けて環境整備を進めるとともに、7~9月の期間限定で「残業半減運動」を展開しました。これは、その年の4~6月に残業の多かった弊社全部署の約2割にあたる32部署を選んでエントリーし、7~9月の平均残業時間を4~6月の半分にするという取り組みです。
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いきなり前四半期の半分に、というのはすごいですね。
最初は、人事部の中に「2割、3割減からスタートしては」との声がありました。しかし中井戸が、それでは「手緩い」と。気合や勢いだけでは達成できない困難な目標にチャレンジしなければ、具体的な行動変革にはつながらないということで、最終的に前四半期比半減を目指すことになったのです。問題は、ストレッチな目標をどう達成するか。具体的な施策は各部署が主体的に策定し、内容を会社にコミットした上で、取り組みを進めました。期間終了後には、削減結果と、効果的な施策を全社に向けて発表・共有。32部署のうちの約半数で目標がほぼ達成され、「効果が高かった」と評価された実施施策のベスト5(図2)には、(1)業務の見直し・負荷分散、(2)リフレッシュデーの推進、(3)日次(朝礼・終礼)/週次での確認、(4)フレックス・裁量労働の活用、(5)会議の効率化、が挙がりました。13年4月からはさらなる改革として、残業削減に有休取得も加えた「スマートワーク・チャレンジ20」、通称“スマチャレ20”が始まりましたが、興味深いことに、そのスマチャレで現場が選択した施策も、基本的にはこのベスト5の組み合わせや応用編。内容はほとんど変わらなかったのです。とくに1位の「業務の見直し・負荷分散」は、残業削減だけでなく、有休取得の促進策としても“鉄板”といっていいでしょう。先述のとおり、ワークシェアを進め、独り抱えの仕事を失くさないかぎり、休みたくても休めません。
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「日時(朝礼・終礼)、週次での確認」には、どういうねらいがあるのですか。
これは、上司と部下、リーダーとメンバーがより密なコミュニケーションを図り、業務の内容や優先順位を明確化することで、作業に無駄や手戻りが生じないようにしようという取り組みです。多くの部署で日時(朝礼や終礼)、週次に励行したところ、相当効果があがりました。また、システムの仕事にはどうしても波があって、たとえば月初、月末はとても忙しいけれど、月中は比較的のんびりした日も少なくありません。だから、そういう日は交替で午後3時や4時に帰り、月初・月末に一定の時間を費やせるようにします。4位の「フレックス・裁量労働の活用」ですね。IT業界では、これを徹底して使わないと、まず残業時間は減らせません。始めた頃は「早く帰りなさい」といいながら、誰かが本当に「じゃあ、お先です」と午後3時、4時に退社したりすると、何だかドキドキしたものですが、半年ぐらいで慣れました。
そうした施策については、各部署で主体的に考えて、実施するということでしたが、現場のマネジャーの中には、そういうことが得意ではない人もいるのではないですか。
おっしゃる通りです。誰でも、いいアイデアが浮かぶわけではありません。ですから、専用のポータルサイトを立ち上げ、これを通じて、他の部署がどういう取り組みをしているのか、効果の高い施策は何なのかを“見える化”。参考事例として全社展開し、残業削減の流れが定着・発展していくように工夫しました。
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人事・人材開発において、先進的な取り組みを行っている企業にインタビュー。さまざまな事例を通じて、これからの人事について考えます。
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