転職者の「夢への近道」を考えた転職サポートとは
転職者が思い描く、将来の働き方を実現するために 時には「希望と異なる道筋」をすすめることもある
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「滑り止め」から「夢への近道」に
Y社から好感触は得たものの、Fさんの第一志望が外資系企業であることに変わりはなかった。しかも、その選考は着々と進んでおり、内々定が出たような感触さえあった。他の人材紹介会社が進めている案件なので、Fさんも詳しいことは話してくれない。私としてはできることをすべてやるしかなかった。幸いだったのは、Y社がFさんの採用にとても協力的だったことだ。
「説得するために何か必要なことがあれば、言ってください」
そこで、二次面接の時に、海外への駐在経験がある社員と話す機会を作ってもらえないか頼んでみることにした。Fさんも具体的な話を聞いてみたいという。
「わかりました。私たちもFさんが入社してくれたら、海外営業部に配属するつもりでいます。部長はアメリカに駐在していたこともありますから、Fさんにとって参考になる話が聞けると思います」
心配なのは、Y社の二次面接の前に第一志望の外資系企業から内定が出てしまうことだった。その場合、「Y社は辞退します」と言われる可能性があるからだ。
Y社での二次面接の日。直前までFさんから辞退を伝える電話やメールが来るのではないかと気をもんでいた私だったが、面接は無事に始まったようだ。終わった頃を見計らってFさんに電話を入れてみる。
「海外営業部の部長のお話は、とても参考になりました。Y社で海外駐在を希望する社員と、その方たちが実際に赴任できたかどうかのデータも見せていただきましたし……」
Fさんの感触は良かったようだ。
「実際に海外に赴任している社員の方と、テレビ電話で話すこともできました。どんな仕事なのか、かなり詳しく教えてもらいました」
Y社の二次面接への力の入れ方は素晴らしかったようだ。選考のための面接というよりも、内定者への説得面談のような位置づけで行ってくれたらしい。Fさんは興奮気味に面接の様子を話してくれた。
Fさんには外資系企業からも内定が出たそうだが、Y社への入社が決まった。当初の「外資系企業に絞って転職活動をしたい」というFさんの希望とは正反対の企業を紹介することになったが、海外で働く夢への近道となる転職をサポートできたのではないかと思っている。
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