転職者の「夢への近道」を考えた転職サポートとは
転職者が思い描く、将来の働き方を実現するために 時には「希望と異なる道筋」をすすめることもある
メジャーリーグに挑戦することを表明していた花巻東高の大谷翔平投手を、昨年のドラフト会議で指名し、入団させることに成功した北海道日本ハムファイターズ。入団交渉にあたって使われた資料は、豊富な事例を盛り込んだもので、その説得術とあわせて話題になった。人材紹介を介した人材獲得競争でも似たようなケースは多い。外資系企業への入社を希望する人材を国内企業に紹介する時、あるいは大手志向の人材をベンチャー企業に紹介する時――どんな場合でも、決め手になるのは、それが本人の希望を叶えるための近道だということを具体的に示し、直接対話することだろう。
外資系企業限定で転職活動しています
「とても良い人材ですね。ぜひ採用したいと思っています。しかし、面接で話したところ、外資系企業が第一希望とのことなので、候補者の説得をお願いします」
紹介したFさんのことをとても気に入ってくれたのは、国内計測器メーカーのY社だった。しかし、採用担当者が言うようにFさんの第一希望は外資系企業である。Fさんは帰国子女で語学力には自信を持っているので、転職後は、ぜひそのスキルを生かしたいというのが転職動機にもなっている。
実はFさんは、私との転職相談の前に、別の人材紹介会社からの推薦で、外資系企業数社の面接を受けていた。まもなく最終面接が行われる会社もあるという。その中には第一志望の企業もあるようだ。
私はFさんの転職動機をもっと細かく聞いてみることにした。
「Fさんは外資系企業で日常的に英語を生かせる仕事をしたいのですよね?」
「そうなんです。できれば将来は海外で働ければベストなのですが」
「海外ですか?」
「ええ、小学生の時アメリカに住んでいたので、アメリカで働くのは夢ですね」
なるほど、と私は思った。Fさん本人は、語学を生かせる転職先として外資系企業をイメージしている。しかし、今回の転職を「将来海外で働くためのステップ」と捉えたらどうなのだろうか。私はその考えをFさんにぶつけてみることにした。
「外資系企業なら、日常的には語学を生かす機会が増えるでしょうね。でも、外資の日本法人は、基本的に日本市場を攻略するための組織ですから、海外で活躍するチャンスは意外と少ないんですよ」
これは決して嘘ではない。確かに、海外研修や出張はあるだろうし、場合によっては本社への異動や転籍もゼロではないだろう。しかし、可能性はかなり低い。
「国際的に展開している日本企業の方が、Fさんのようなグローバル人材を熱心に探していますよ。海外に赴任する機会も多いはずですし、本当に海外で働きたいなら、その方が夢への近道かもしれません」
「そうなんですか……」
第一希望の外資系企業の最終面接までには、まだ時間が残されていた。そこでFさんが、一種の「滑り止め」として受けたのが、前述のY社だったのである。