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人材採用“ウラ”“オモテ” 
企業・求職者・人材紹介会社の「転職」三角関係

人材紹介会社の実情は──?
本当の「キャリアチェンジ紹介」は可能か

ひとつの仕事にこだわる必要はない?

時代とともに変わる転職希望者の意識

本格的な少子高齢化社会の到来、環境を重視するエコ経済への転換…。働く人々を取り巻く社会や経済の状況は急速に変化している。当然、新しい時代に見合った仕事や勤務環境を求めて転職しよう、という人も増えていくだろう。そんな転職希望者の期待に人材紹介会社も応えていかなくてはならない。しかし、十分に対応できているとはいえないのが実情だ。

仕事人生も「二毛作」の時代が到来?

「難しいかもしれませんが、実は別の希望があるんです」

紹介に先立つ転職相談の際に、Wさんが切り出した。

「基本的には、これまでのシステムエンジニアの経験を活かせる仕事を紹介してもらえればと思います。その上で、もしあれば、まったく方向性の違う仕事も提示してもらえると嬉しいんですが…」

「まったく違う仕事、といいますと?」

Photo

そうですね、とWさんは少し考えて言った。

「若手の教育担当者やキャリアカウンセリング、あるいは今の仕事とまったく関係ないですが、農業の分野も面白いと思うんですよね」

Wさんは現在43歳、忙しいIT関連の仕事を今後もずっと続けていくことに多少疑問を持っているのだという。

「20代や30代の頃には、新しい技術を身につけるのがとにかく面白かったですし、プロジェクトが終了した時の達成感も非常に素晴らしいと思っていました。ただ、やはり肉体的にも精神的にもストレスがかなりたまる仕事なんです…」

そんな時、ふと思ったのが「人間、一生同じ分野の仕事を続けていく必要はないだろう」ということだった。

「若い時は吸収力も体力もありますから、とにかく激しい仕事をガンガンやればいい。実際、私も誰にも負けないくらい働いたという自負はあります。でも、ある程度の年齢になると馬力はなくなってきますし、家庭も大事になってきます。ただ、年齢を重ねることで、経験や判断力は身についてくると思うんですね。仕事人生の後半は、それらを活かせるまったく別の仕事に転向してもいいな…と、ずっと考えていたんですよ」

話を聞くうちにWさんの口調にも熱がこもってきた。真剣に考えていたことが伝わってきて、私も思わずうなずいていた。

「なるほど…確かにそうですよね」

一般的には一つの仕事を貫き、やり遂げるのが尊いとされる日本社会だが、これからの時代、Wさんのように「人生を二毛作で生きる」という考え方も十分「アリ」なのかもしれない。

「分かりました。ご紹介できる仕事を、幅広く探してみます」

私はWさんにそう約束した。

ツテがないから相談しているのに…

そうは言ったものの、実際にWさんにご紹介できる仕事はシステム開発の仕事ばかりだった。IT技術者の教育や指導といった、比較的近い分野の仕事すらあまりない。

「ご期待に沿えず申し訳ございません」

力強く約束した手前、まずは謝るしかない。

「第二希望の方は、『もしあれば…』くらいで考えていますから」

電話の向こうのWさんの声が明るいのがせめてもの救いだ。

「それから、農業関連は今のところ、私どもではご紹介できる案件がまったくないというのが実情です。あちこち当たってみたのですが…」

「気にしないで下さい。農業の仕事は、本気で探すならやはり地方のハローワークや知人のツテが確実でしょうか。まあツテといっても特にないんですが…」

Photo

そう、ツテがないからこそ人材紹介会社を頼って相談してくれているのである。紹介会社では、「キャリアカウンセリングを通じて、あなたが思っていなかったような新しいキャリアをご提案できる可能性もあります」…とよくうたっているが、実際に本当の「キャリアチェンジ」の相談をされると弱いのが実情なのである。

「システムエンジニアの募集ではありますが、先日お送りしたK社は、チームリーダーとして若手の指導も行うというものです。まずはこのあたりから検討されてはいかがでしょうか」

民間の人材紹介会社の場合、採用した場合の紹介料が有料であることから、未経験者向けの仕事は一部の若手採用の求人以外はほとんどない。Wさんに募集企業の説明をしながら、私はそのことを改めて実感していたのだった。



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