「入社辞退されても大丈夫」という会社
はたしてその真意は…
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「他社はもっと頑張ってくれていますよ」
「承知しました。『まずは一度話を聞いてみませんか』と求職者にアプローチして、とにかく面接までこぎつけるように頑張ってみます」
その日からE社の募集スペックを満たしている技術系人材に連絡を取りはじめた。ただ、そう簡単に面接に進むわけでもない。
「セールスエンジニアは考えていないのでお断りします」
「設計の経験しかないので厳しいと思います」
そんな反応が大部分の中、どうにか面接を受けてもいいという人材を紹介できた。さっそく面接の翌日、候補者に連絡をとってみる。
「面接はどうでしたか。E社のお仕事に、興味を持てそうですか」
「ええ、いい会社だと思いました。ただ、同時進行で別の企業の開発職も受けているので、その結果次第で次のステップに進むかどうかをお返事したいと思います」
しかし後日、またもや辞退との連絡があった。E社の人事部長は、面接で良い手応えを感じていたようで、辞退の報告に落胆の色を隠せなかった。さらにこんな話題まで出てきた。
「別の人材紹介会社さんは先月2名、入社までもっていってくれましたよ。推薦の段階であらかじめモチベーションを上げてくれるので、私たちも非常に助かっているんです。御社の場合、そのあたりはどうなんでしょうか……」
ソフトな言い回しだが、もっとしっかり動機づけしろという要望のようだ。紹介さえしてくれれば候補者に辞退されても怒らないとおっしゃっていましたよね、とは口が裂けても言えない。
「誠に申し訳ありません。次回はもっと仕事内容を理解している人材をご紹介します」
こうなると、人材紹介会社側は、希望度の低い人材は紹介しない方がいいと思ってしまう。入社前の辞退は採用側だけでなく、人材紹介会社にとっても「骨折り損」でしかない。とにかく紹介してほしいと言われても、その方針に素直に従っているだけではダメだと改めて考えさせられた一件だった。
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