日本進出直後の海外企業のコア人材採用
クロージングの山場で決裁者がまさかの海外休暇へ――。
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採用の成否がかかるタイミングで
「この金額でどうでしょう。ぜひAさんを説得してください。期待しています」
「承知しました。さっそくAさんにお伝えします」
C社から再提示された年収額をAさんに伝えたところ、数日後に返事があった。気持ちはC社に傾いている。しかし、もう1社のへの回答期限も迫っているので、早急に正式なオファーレターを出してほしい、とのことだった。
急いでC社に連絡を入れてみると、思いがけない答えが返ってきた。
「Bは休暇で海外に行っています」
受付の女性によると、帰国は一週間後くらいになるそうだ。オファーレターについてきいてみても、採用のことはB氏でないとわからないという。
「Bさんに連絡したいので、連絡先を教えてもらえませんか」
ここで連絡が取れないと、せっかくのAさんへのオファーが無効になってしまう。必死に頼み込んだ。
「滞在先はタイのチェンマイです。○○ホテルと聞いています」
なんとか情報を聞き出した。中途採用はタイミングがとても大切だ。特に何社かで競合している場合は、一日あるいは数時間が採用の成否をわけてしまうことさえある。休暇をとるならそのことを教えておいてほしかったし、万一に備えて連絡の手段を用意してほしかった。だが、そこはやはり採用が本職ではないB氏なので、仕方がないと考えるしかない。
結果的には、チェンマイのホテルに何度か電話し、どうにかB氏と連絡をとることができた。
「では、私が直接Aさんと電話で話します。そして、日本に戻ったらすぐにオファーレターを作成します。それでいいでしょうか」
B氏がわざわざ休暇中のタイから電話を入れてくれたことで、Aさんも内定が確定したという手応えを得たのだろう。その後の手続きは無事に進んだ。
Aさんはその後、C社の日本拠点の技術責任者となって活躍した。しかし、そんな重要な採用案件の山場でも、休暇をとって海外のリゾート地まで行ってしまうあたりは、やはり外国の会社だな、と思わせられた案件でもあった。
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