「今ならまだ引き返せる」入社前対応の難しさ
辞退してもキャリアが傷つかない 入社前研修に参加して考えてしまう人たち
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「そんな人材はうちには必要ない」でいいのか?
「そんな事例もあるので、できれば研修や会議などは、正式に入社されてから実施したほうが良いと思います」
よほどの必要性がない限りは、こう言って断っている。しかし、企業によってはさらに畳みかけてくる場合もある。
「早く慣れた方がBさんにとっても、入社後の違和感が少ないと思うんですよ。私どもから直接、Bさんに連絡をとってもいいですか? きちんとご説明したいと思いますので」
これがまた危ない。内定している企業から直接「研修に来てほしい」と言われて、断れる人はほぼいないからだ。入社前の段階では、連絡は人材紹介会社を通してほしいとお願いするしかない。
入社前研修で辞退される場合があると話すと、いわゆる「逆ギレ」してしまう企業もある。今回のK社もそれに近い状況だった。
「研修内容は、入社すればいずれわかることばかりです。少しくらい厳しいことを言われたからといって、それで辞退するような人材なら弊社には必要ないともいえます。事前に辞退される方が、入社後に早期退職されるよりお互いにとっていいんじゃないですか」
しかし、そういう問題ではないのだ。入社後にきちんと段階を踏んでいけば問題にならないことが、順番を間違えたことによって思わぬ結果を生んでしまうことを危惧しているのである。転職後にカルチャーショックを受けても、多くの人は「ここですぐに辞めたらキャリアに傷がつく」と考えて踏ん張る。そうこうしているうちに、その会社にだんだん慣れていくのである。
K社から「どうしても」と言われ続けたので、Bさんには事情をよく説明した上で、研修に参加してもらった。その後、Bさんは予定通りに入社したので、私がいろいろと考えたことはすべて杞憂に終わったが、入社日の朝に出社を確認するまで、ホッとすることができないのが人材紹介というサービスなのだ。
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