職場のモヤモヤ解決図鑑
【第4回】新卒採用面接、応募者に何を聞けばいいのかわからない
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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志田 徹(しだ とおる)
都内メーカー勤務の35才。営業主任で夏樹の上司。頼りないが根は真面目。口癖は「う~ん…(無言)」
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児玉 夏樹(こだま なつき)
社会人3年目の25才。志田の部下。ネットとサブカルが好き。仕事はビジネスライクにこなす。
はじめて面接官として採用に参加した児玉さん。大学での部活動について尋ねるも、表面的な会話ばかりで先に進みません。案の定、面接後は評価シートに書く内容に迷うことに……。応募者から話を引き出すために、児玉さんはどうすればよかったのでしょうか。
応募者はどんな人? ぜひ聞いてみたい質問
前回お伝えしたように、面接官に求められる役割は応募者の「見極め」と「口説き」です。新卒採用に参加する若手社員に求められるのは、往々にして「見極め」の部分と言えるでしょう。自分にとっては懐かしい、大学時代の話で盛り上がって見極めができずに終わる、ということのないように質問の仕方を覚えておきたいところです。
面接の質問とは、「この人は会社が求める要素を持っている人物か」を知るために行うものです。何度も質問を重ねて話を深掘りすると、応募者の行動基準や価値観が見えてきます。
基本的な質問の流れ
面接であれもこれも聞こうとすると、表面的な回答を聞いただけで、あっという間に時間がすぎてしまいます。新卒採用の面接では、「日常生活」「学生生活」「会社・仕事」の項目に絞って聞いてみるといいでしょう。
日常生活 |
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学生生活 |
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会社・仕事 |
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話を深堀りするには、「具体性」を聞く質問を
応募者がいくらいいことを話してくれても、面接官の返しが「すごいですね」だけでは、応募者の適性を見極めることはできません。一問一答にならないよう、回答を深掘りする質問を重ねてみましょう。その際、応募者の具体的な行動や考えを引き出せるような聞き方を意識します。
とくに最初の回答は抽象的な表現が多くなりがちです。会話例を見てみましょう。
面接官:△△さんは、サッカーをされていたんですね。
応募者:はい! 小さい大会ですが、優勝もしました!
面接官:すごいですね。優勝するために、チームではどのような取り組みをしていましたか。
応募者:まずは練習日数を増やしました。最初は出席率が悪くて、練習に参加してもらうのにとても苦労しました。
面接官:出席率が悪かったのは何が理由だったんでしょうか。△△さんは、部員が練習に参加するようにどんなことをしましたか。
応募者:目標を共有できていないことが原因だと思って、部員一人ひとりと話して、優勝という目標を確認しました。それと、みんなが練習しやすいように……。
応募者が「すごく○○した」や「とても○○でした」といった抽象表現を使ったときは、質問を重ねるチャンスです。「具体的にどんなことをしましたか?」「乗り越えるために工夫したところは?」「その行動を選んだ意図はなんですか?」と面接官から投げかけることで、応募者の本質に迫ることができます。
「応募者が思ったこと」「感じた課題」「解決のための行動」などの質問は、判断力・行動力・思考力などを見極めるのに役立ちます。そのほか、自社が重んじる人材の要素にあわせて、質問の内容を変えてみましょう。
例えば「積極性」を重視するなら、アルバイトやゼミ、大学を自発的に選んでいるのか、未知のものに挑戦したような経験があるかなどを聞きます。「対人折衝力」を重視するなら、大学生活や日常において、人との関わりで困ったこと、それに対してどのように行動してみたかを聞いてみましょう。
面接官として、オープンな心で応募者と向き合うのは大切なことです。「ジャッジする」という上から目線ではなく、将来的に一緒に働くかもしれないメンバーとして、公平な態度で接することが求められます。
それを聞くのは、法律違反かも……! NG質問
面接はなんでも質問していい場ではありません。以下の質問は、就職差別につながるとして不適切な内容とされています。
- 本籍や住んでいる場所についての質問
- 家族構成、家族の職業、地位、収入についての質問
- 宗教、思想、信条、尊敬する人物、支持政党についての質問
- 男女雇用機会均等法に触れる質問
また、結婚の予定や恋人の有無、何歳まで働けるかといった質問は、男女雇用機会均等法の趣旨に違反します。聞いてはいけない質問内容はきちんと押さえておきましょう。
相手を知る気持ちで、会話のキャッチボールを
面接は企業と応募者がお互いを知るための場です。一方通行のアピールで終わらないために、会話のキャッチボールを心がけましょう。応募者の行動の基準や思考を引き出すために、どこにどんなボールを投げるのか、しっかりと意識しましょう。「この人のこんな部分が知りたい」という気持ちがあれば、面接の会話も実のあるものになるはずです。
- 面接では、質問を重ねて、応募者の行動基準や価値観を見つけよう
- 質問の基本は、「日常生活」「学校生活」「会社・仕事」の三つ
- 抽象的な回答には、具体的なエピソードを引き出す質問を返そう
- 家族構成や宗教、結婚の話題は、就職面接ではNG
質問を重ねると、こんなに相手のことが見えてくるんですね。
かつて敏腕面接官として活躍していた僕にも、いいおさらいになったよ。
さすが志田さん! 具体的に、どんなところが敏腕だったんですか?
……勢いで言っただけだから、深くは聞かないで。
あ、はい。
あわせて読みたい記事
参考書籍
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「最高の人材」が入社する 採用の絶対ルール
著者 : 釘崎清秀+伊達洋駆
出版社 : ナツメ社
編集部コメント : 初めて採用に関わる人でも、面接の本質をわかりやすく理解できる入門書。「面接でありがちな印象の悪い質問」「見直すべき面接シート例」なども収録しています。
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「聴く」技術が人間関係を決める
著者 : 宮城まり子
出版社 : 永岡書店
編集部コメント : 「聴く」を易しく教えてくれます。あいづちの打ち方や、相手の言葉を引き出す質問の仕方も掲載。
-
採用学
著者 : 服部泰宏
出版社 : 新潮社
編集部コメント : 採用を学びたい人の定番!面接をきっかけに関心を持った方は、ぜひ手に取ってみてください。
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ワーク・ルールズ!
著者 : ラズロ・ボック、訳 : 鬼澤忍、矢羽野薫
出版社: 東洋経済新報社
編集部コメント : 最後は採用に限らない幅広い内容の1冊。世界最先端、Googleの人事について紹介しています。
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!