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キーパーソンが語る“人と組織”

採用活動の新たな指針となる「採用学」とは(前編)
―― いま企業が抱える、新卒採用の課題について考える
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2015/4/20

服部 泰宏さん(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院 准教授)

雇用環境の変化や働き方の多様化などの影響もあり、ここへきて日本企業の新卒採用活動のあり方を見直す動きが活発化しています。そもそも日本企業は、新卒採用に関してどのような課題を抱えているのでしょうか。また、それらを解決していくためにはどうすればいいのでしょうか。横浜国立大学大学院の服部泰宏准教授は、これらの問題を解決するため、人材の採用に関する科学的アプローチである「採用学」を確立しようとしています。いま新卒採用の現場では何が起きていて、企業はどのような考えの下に採用戦略を講じていけばいいのか、「採用学」の観点から、服部先生に詳しく解説していただきました。
Profile
はっとり・やすひろ●1980年神奈川県生まれ。2009年神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了、博士(経営学)取得。滋賀大学経済学部情報管理学科専任講師、同准教授を経て、現在、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授。日本企業における組織と個人の関わり合い(組織コミットメントや心理的契約)、経営学的な知識の普及の研究、シニア人材のマネジメント等、多数の研究活動に従事する。主な著書に『日本企業の心理的契約:組織と従業員に見えざる約束』(白桃書房)があり、同書は第26回組織学会高宮賞を受賞した。2013年以降、人材の「採用」に関する科学的アプローチである「採用学」の確立に向けた「採用学プロジェクト」に従事、同プロジェクトのリーダーを務めている。新進気鋭の若手経営学者として、注目を集めている。2014年に人材育成学会論文賞を受賞。

「新卒一括採用」による日本独自の問題とは

―― 企業における「採用」の意味や位置付けについて、どのようにお考えですか。

企業の目標・戦略を達成するためには、人材のプールが必要です。採用とは、そこで必要となる人材を現場に届けること。そのための入口となる場面で、応募者の中から誰を採用するのか、あるいは採用しないのかを決めるのが「採用活動」です。採用するかしないかの選択は非常に難しいことですが、一方で大変面白いことでもあります。自社の目標や戦略に合った人材を選ぶわけですが、うまくいけば多様な人材が集まって組織が活性化し、そうでなければ同質的な人材ばかりとなって組織が硬直化してしまうこともあります。そういう意味でも、採用は組織の「境界」を決める、と言うことができます。

―― 欧米企業と比較して、日本企業の「採用」にはどのような特徴がありますか。

採用の目的自体は、欧米企業と特に変わる点がないと思います。日本企業の特徴として挙げられるのは、ある期間に多くの企業が同時に採用活動を行う「新卒一括採用」という仕組みがあることです。企業の目標や戦略を達成するために必要な人材を採用するよりも、将来必要になるであろう人材、貢献する可能性の高い人材を採用するという、予測・確率的な要素が入ってくる点が新卒一括採用の特徴です。欧米企業とは大きく異なる、日本企業の採用活動における面白さでもあり、難しさでもあります。

ただ、この状況が日本独自の問題を三つ引き起こしています。一つ目は、「曖昧にされる期待」。本来ならば相互に確認し、クリアにしなければならない条件面のことです。私はこれを「期待」として広い意味で用いていますが、どうしても曖昧になりがちです。日本では、給与などを具体的に質問することを避ける傾向にあるからです。

二つ目は、「曖昧で画一的な能力評価」。日本の新卒採用では、その人材が「現在、どのような能力を持っているか」よりも、「将来、能力が伸びるかどうか」を評価します。しかし、能力評価の項目にはコミュニケーション能力や協調性など、曖昧なものが多い。その曖昧さが、企業間における評価基準の画一化につながっています。

三つ目は、「活動の過熱化」。期待と能力評価の曖昧さが、日本企業の採用活動の過熱化を引き起こし、同質的な競争が熾烈になっています。例えば、募集段階では大きな採用母集団を形成することが不可決で、就職サイトに多額を投資しなければならない。基準が曖昧なため、良い大学に在籍していて能力の高い学生を、どの企業でも欲しいと考えるようになる。当然、人材の奪い合いとなり、水面下での駆け引きも激しくなります。


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