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キーパーソンが語る“人と組織”
日本の人事部「HRアワード2016」受賞者インタビュー

人事は世の中でもっとも面白い仕事
注目の新制度「WAA」に込めた、
人と組織への熱く深い思いとは(後編)

島田 由香さん
(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長)

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島田由香さん ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長
日本の人事部「HRアワード2016」企業人事部門 個人の部 最優秀賞に輝いた、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長の島田由香さん。働く場所と時間を社員が自由に選べる新人事制度「WAA」(Work from Anywhere and Anytime)の導入で大きな注目を集めた功績が、授賞理由の一つでした(前編参照)。インタビューの後半では、その「WAA」導入の経緯や背景、実際の運用にまつわるエピソードなど、新制度に“魂”が込められていくプロセスをじっくりとうかがいました。
Profile

しまだ・ゆか●1996年慶應義塾大学卒業後、日系人材ベンチャーに入社。2000年コロンビア大学大学院留学。2002年組織心理学修士取得、米系大手複合企業入社。2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。中学一年生の息子を持つ一児の母親。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLPⓇトレーナー。

WAA導入の背景にあるのは組織に根付く「人を大切にする」思想

―― ユニリーバ・ジャパンでは2016年7月から新人事制度「WAA」を導入しています。あらためて制度の概要をご紹介いただけますか。

「WAA」は、いつでもどこでも、働く時間と場所を社員自ら自由に選択できる制度です。上司に申請すれば、理由は問わず、自宅やカフェ、図書館といったオフィス以外の場所でも勤務することができます。勤務時間や休憩時間も、平日の6時~21時の間で、自由に決められます。対象は全社員におよび、制度の利用に期間や日数の制限もありません。“いつでもどこでも”、そして“誰でも”OKというわけです。これを適切に機能させることで、働き方の多様性を高め、社員一人ひとりが自分らしく、持てる能力を最大限発揮できるように支援していきたいと考えています。

―― 島田さんが「WAA」を発案し、立ち上げられた背景には、どのような思いや経緯があったのでしょうか。

制度の構想が浮上したのは、実際に始める2年前の2014年で、その年の11月には全社員に対し、「『WAA』をやります」と宣言しました。そう、ネーミングの「ワー」はその時点ですでに決めていたんです。うれしい驚きでみんなに「ワーッ!」と言わせて、その勢いで「ワーッ!」とこの取り組みを広げていきたかったからです。

アイデア自体は前々から温めていたのですが、実行に向けて背中を押されたという意味では、14年夏に着任した現トップ、フルヴィオ・グアルネリ(代表取締役プレジデント& CEO)の影響が大きかったですね。彼が来て数ヵ月後の11月にはもう、社内に向けて制度導入を発表しているわけですから。彼はイタリア人なのですが、当初から「日本人の働き方はおかしい」と話していました。「日本人はなぜ、遅くまでオフィスに残って、帰らないのか」「帰ったと思ったら、なぜ飲みに行くのか」「なぜ家族ともっと過ごさないのか」……。とにかく、人としてのあり方の大切さを、トップが自ら熱心に語ってくれて、社内の雰囲気もかなり変わりました。ビジネスでは「絶対に勝つ、売上を伸ばす」という強烈な意思を持つリーダーですが、それと同じくらい人への思いや関心が強い。WAAについても、私と同じようなことを考えていたようで、「どんどんやろう」と背中を押してくれました。

―― もともと御社はダイバーシティ推進に積極的で、以前から在宅勤務制度やフレックスタイム制度など、多様な働き方ができる仕組みが整えられていましたね。

在宅勤務も、フレックスタイムも、年齢・性別を問わず、多くの社員に活用されていましたし、それらを有効に運用してきた下地が、WAAの導入にも役立っていることは間違いありません。というのも、私はこの会社に来て9年目になりますが、当初から強く感じていたのは、「制度よりその運用が大切」という企業風土でした。制度がいくらきちんと設計されていても、運用されなければ意味がありません。逆に、多少設計に不備があっても、現場でちゃんと運用できれば制度はうまく回っていく。元気なベンチャーなら、きっとそんな感じでしょう。組織に共通の思いがあり、社員のマインドセットがしっかりできていれば、制度の運用は難しくありません。制度もいろいろとあるけれど、それ以上に「人を大切にする」というマインドセットが浸透していることが、ユニリーバという企業のアドバンテージなのだと、私も実際に働いてみて納得できました。例えば、カンファレンスなどで人が大勢集まったとき、当社では一番初めに避難経路の説明をするんです。人の安全が第一ですから。

―― それだけ「人を大切にする」思想が徹底されている、と。

はい。私も最初は驚きました。着任するなり、まず手渡されたのが避難用のバックでしたから。女性はヒールを履いているので、万一のときは履き替えて逃げるため、避難用の靴もあります。最初は正直、「これは無駄じゃない?」と思いました。しかし今はマネジメント側になって、その大切さがあらためて分かるようになりました。「組織は人。人が大切」だと、頭では理解しているつもりでしたが、その大切さの本当の意味を心と体で実感させてもらっています。「人を大切にする」とは、何よりもまず、社員の健康と幸福に資することであり、その観点からすると、一人ひとりがよりイキイキと自分らしく働けるように支援する「WAA」の導入は、まさに必然だったと確信しています。


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