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“幸福学”を知れば誰でも幸せになれる! 従業員が幸せになれば会社が伸びる!
人・組織・経営を変える“幸せの四つの因子”(後編)[前編を読む]

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 研究科委員長・教授

前野 隆司さん

リーダーシップもイノベーションも生み出す、幸福こそ競争力

 従業員の幸福とリーダーシップとの間には、何か相関関係があるのでしょうか。

大いにあります。幸せな人は楽観的だと言いましたが、楽観的な人は物事を俯瞰して全体的に捉えられるのに対して、悲観的な人は部分や枝葉末節にこだわりがちだという、面白い研究があるんです。言われてみれば、そうですよね。悲観的な人の場合、はたから見るとどうでもよさそうなことでグチグチと悩んだり、重箱のすみをネチネチとつついて人を責めたりすることがよくあります。そういう人が上司だと、部下はたまったものではありません。やはり楽観的で「よし、まかせとけ」みたいな人のほうが、本来はリーダー向きなのでしょう。物事の全体像を見ようとするので、大局に立った経営判断もできると思いますよ。

また、幸福度の高い人はリーダーとしてだけでなく、イノベーターとしても期待できるんです。イノベーションに必須の「創造性」に優れていることが第一の理由ですが、それだけではありません。企業におけるイノベーションの現場は、結構泥臭いというか、会社や上司からのプレッシャーとも戦いながら、ギリギリの局面を半ば強引に越えていくようなところがありますから、真面目すぎたり、悲観的だったりすると心が折れてしまいやすいんです。その点、幸せな人は楽観的で前向き。周囲の雑音を気にせず、しゃにむに突き進めるので、結果としてイノベーションを起こしやすいといえるでしょう。

 前野先生も、エンジニアとしてメーカーに勤務されていた時代に、そうしたご経験がおありですか。

非常につらかった時期もありますが、当時の職場は楽観的というか、とにかく明るかったですね。苦しいときでも、いや、苦しいときほど、みんなでばかばかしいことを言い合っていました。半分遊びで試したことから新規事業が始まるなんてこともありました。余談ですが、その会社には当時、勤務時間の8割で真面目に仕事をしたら、残りの2割はどんな研究に充ててもいい、「20%ルール」という制度がありました。私がその2割の時間で何をやったと思いますか? “超能力”の研究です(笑)。せっかくだから、一番ヘンなことをやろうと思って。それが許されたんです。

そうした自由な空気というか、組織としての明るさや懐の深さがなかったら、イノベーションは生まれなかったかもしれません。逆に、笑いなんてとんでもない、とことん厳しく追い込んで、新しいものを生み出すという方法論もあります。それだと短期的にはイノベーションを起こせても、すぐに人が疲弊して、長続きしないでしょう。『北風と太陽』ではありませんが、従業員を幸せにする会社のほうが、より持続的にイノベーションを生み出せるのは間違いありません。

 ありがとうございます。幸福学には、企業の人・組織・経営を大きく変える可能性があることをあらためて認識しました。では最後に、企業の人事の方々へ向けて、メッセージをお願いいたします。

かつては、企業が働く人を不幸にすることもいとわず競争に勝つ時代がありました。しかし、それはもう限界。逆に、従業員を幸せにできる企業しか生き残れない時代がやってきます。

企業において、人を幸せにするための、まさに最前線に立っているのが人事部でしょう。言い換えれば、しかるべき手を打つことで、すぐにでも従業員の幸福度を高められるポジションにいるのですから、どんどん行動を起こしてほしいですね。繰り返しますが、どうすれば幸せになれるのか――そのメカニズムはすでに明らかになっています。あとは理解し、実践するのみ。従業員が幸せになれば、企業も幸せになり、企業が幸せになれば、社会も幸せになるのですから。

前野 隆司さん 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 研究科委員長・教授

(取材は2016年9月13日、神奈川・横浜市の慶應義塾大学にて)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

前野隆司さん: “幸福学”を知れば誰でも幸せになれる! 従業員が幸せになれば会社が伸びる! 人・組織・経営を変える“幸せの四つの因子”(前編)
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