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人事担当者の現状と方向性
――調査結果から探る、これからの人事部と人事担当者の要件

人事部門の役割に関する対応状況

各社の人事部門はその役割として、さまざまなテーマにどの程度対応できているのでしょうか。ここでは、人事労務管理上、よく課題に挙げられる14項目につき、対応状況を4段階で答えていただきました[図表2]。

“対応できている”(「十分対応できている」「ある程度対応できている」計)および“対応できていない”(「あまり対応できていない」「ほとんど対応できていない、または重視していない」)割合が50%以上の項目は、次のとおりです。

【対応できている】
(1)従業員の定着の促進(67.4%)
(2)人材の確保・要員管理(66.0%)
(3)従業員の健康管理(メンタルヘルスを含む)の推進(60.2%)
(4)働きやすい職場環境づくり(ワーク・ライフ・バランスなど)(52.9%)
(5)従業員のモチベーションの向上(50.7%)
(6)人材の適正配置(ローテーション管理を含む)(50.2%)

【対応できていない】
(1)事業のグローバル展開に向けた支援(70.2%)
(2)組織風土の変革・企業文化の浸透(59.5%)
(3)長期的な人材育成(経営幹部育成を含む)、同プログラムの開発(59.3%)
(4)労働組合との協調的関係の維持(58.3%)
(5)女性・外国人・障がい者活用など雇用におけるダイバーシティ(多様性)の推進(57.4%)
(6)経営戦略を実行し、達成するための人事制度や施策の開発(55.2%)
(7)労働生産性の向上(直接・間接の労務コスト管理・削減、従業員1人当たりの収益、売上高向上)(53.1%)
(8)従業員のキャリア形成支援(52.6%)

全体的に“対応できている”より“対応できていない”ほうが、項目数・各項目の割合ともに多くなっています。

【図表2】自社の人事部門の役割として、下記の各項目にどの程度対応できているか
【図表2】自社の人事部門の役割として、下記の各項目にどの程度対応できているか

自社における人事部門のスタンス(役割)

ここでは、人事部門のスタンス(役割・あるべき姿)として、D・ウルリッチ氏の『MBAの人材戦略』(日本能率協会マネジメントセンター、1997 年)で紹介されている、下記の「人材経営の役割の四つの考え方」に従い、自社において最も当てはまるものから順に1~4位までランクづけいただきました 【図表3】。

  • 戦略のパートナー:人材マネジメントと事業戦略を統合し、企業戦略を実現する役割
  • 管理のエキスパート:組織内の制度や仕組みを整備し、組織効率を高める役割
  • 従業員のチャンピオン:従業員の声に耳を傾け、ライン管理者と連携して人材育成に力を入れていく役割
  • 変革のエージェント:経営理念の浸透・共有化を促進し、人材育成を通じて組織を変革する役割

1位で最も多いのが「管理のエキスパート」で、過半数(51.9%)を占めます。同割合は順位が下がるとともに低下し、4位ではわずか4.0%にと どまります。他方、1位で最も少ない「変革のエージェント」11.2%は順位が下がるほど割合が高まり、4位では46.0%と最も多くなります。現状の優 先順位は、多くの人事部門で「変革<管理」であることがうかがえます。

また、「戦略のパートナー」は、各順位でおおむね25%前後に落ち着いており、この点、各社各様の優先度合いを反映しているとみられます。「従業員 のチャンピオン」は、2~3位で3割前後と最も多くなり、“最優先でもないが、後回しにもされない”という手堅い位置づけにあるようです。

【図表3】自社における人事部門のスタンス(役割)の優先度合い
【図表3】自社における人事部門のスタンス(役割)の優先度合い

[注]人事部門のスタンス(役割)として上記四つを設定し、最も当てはまるものから順に1~4位までランクづけいただいた (同分類は、D・ウルリッチ氏の『MBAの人材戦略』による。)

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