景気低迷下における一時帰休・休業等の実施状況
労務行政研究所では、昨年来の深刻な景気低迷の下で、受注減に伴う操業調整や雇用維持等のために、社員の休業など労働時間面での対策を講じている企業が多くみられたことから、こうした不況対策としての労働時間関連施策の実施状況について調査を行いました。
※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
不況対策としての労働時間関連施策の実施状況
回答企業の3分の1が何らかの施策を実施
景気低迷が深刻化する局面では、製造拠点での操業調整や人員余剰への対処、コスト削減などの必要から、社員の休業や時間外労働の抑制など、労働時間関連の施策を講じる例がしばしばみられます。これらについて、09年1~4月の間での実施状況を尋ねたところ、何らかの施策を講じた企業は、回答が得られた273社のうち33.7%、3社に1社の割合となりました[図表1]。
何らかの施策を実施した企業に、具体的な実施内容を複数回答で尋ねたところ、[図表2]のように「一時帰休・休業」80.4%が突出して多く、以下、「操業調整等のための年休の計画的(一斉)付与」16.3%、「時間外労働の削減」13.0%と続いています。「その他」6.5%の実施内容では、「従業員に年休取得の協力を要請」「法定より高く設定していた時間外割増率の引き下げ」などの例がみられました。
また、何らかの施策を実施した企業の割合は、規模別では1000人以上の大手企業が42.5%と高く、産業別では製造業が52.3%と過半数に上っています[図表2]。実施した施策別では、生産拠点を持つ製造業で「一時帰休・休業」の実施率が9割に上っている一方、非製造業は「時間外労働の削減」50.0%が最多となっています。
一時帰休・休業の実施対象
「特定の事業所の一部社員」が47.3%で最多
前項で「一時帰休・休業」を実施したと答えた企業(74社)に、実施した対象(部署・社員)を複数回答で尋ねました。集計結果では、[図表3]にみるように、「(3)特定の事業所の一部社員」47.3%が最も多く、これに「(2)特定の事業所全体」45.9%が続いています。ちなみに、一時帰休・休業を実施したと回答した企業の大半は製造業が占めており、非製造業は2社のみとなっています。このため、実施対象に挙げられた“特定の事業所”の多くは製造業の製造・生産拠点を指しており、その“一部社員”は製造工程に携わる直接作業員を対象としているケースが多いとみられます。
なお、一時帰休・休業は、各社事業の実情により、「3月は全社一斉で2日、4月は全社一斉で2日のほか、A工場で2日」「3月にA工場全体とB工場の製造ラインで2日」などさまざまなパターンで実施されています。そこで、この設問の選択肢に挙げた(1)~(4)の組み合わせ別に集計したところ、最も多かったのは「(1)全社一斉」のみ行った企業で、25.7%と全体の4分の1を占めました。一方、(1)~(4)を組み合わせたところでは、「(2)特定の事業所全体+(3)特定事業所の一部社員」17.6%が最も多くなっています。
休業手当の支給水準全体の9割が法定の下限より高水準で支給
操業調整など、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合、使用者には当該労働者に対し、平均賃金の60%以上の休業手当を支給することが義務づけられています(労働基準法26条。「平均賃金」の規定は同法12条)。
一時帰休・休業を実施した企業に対し、休業手当の水準をどの程度としたかを尋ねたところ、全体の89.2%、ほぼ9割が法定の下限(平均賃金の60%)より高い水準で支給していることが明らかになりました。規模別では、300~999人規模で「法定の下限分を支給」が 19.0%となっていますが、他の規模はいずれも「法定の下限より高水準で支給」が90%を超え、大勢を占めています。
休業手当については、例えば「3月の休業2日分は平均賃金の60%、4月以降は同80%」「休業3日目までは80%、4日目以降は100%補償」などのように、同一企業でも休業日や実施日数によって設定が異なる場合がある。このため本集計では、“最も高い水準で支給された日の支給内容”によって集計を行っているので留意いただきたい。
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