子供は、親の背中を見て育つ?
アイデム人と仕事研究所
岸川 宏(きしかわ ひろし)
親の背中は、○○です
それでは、「親が働いている姿を見たことがあるか?」という問いではどうだったでしょうか。
「ある」と回答した子供は59.3%と約6割(図3)。多くの子供は、親の職業が何かを知っていて、見たことがあるにもかかわらず、親と同じ職業に就こうと考える子供は少ないといった結果となっています。親の背中は、あまり効果がないのでしょうか?
しかし、少し視点をずらして調査結果を見てみると、「親の背中が何なのか?」が見えてきます。「将来なりたい職業があるか」を「親が働く姿を見たことがあるか」別で見てみます。
親の働く姿を見たことが「ある」と回答した子供が、なりたい職業が「ある」と回答した割合は53.2%。見たことが「ない」と回答した子供の割合は42.0%となり、見たことが「ある」子供が10ポイント以上、上回る結果となっています(図4)。
本調査ではさらに、「働いている親を見てどのように感じているか」も聞いています。あんな大人になりたい(なりたい+どちらかと言えばなりたい)と回答した子供の割合は、父親の場合では47.2%、母親の場合では48.8%と父母とも約半数。
しかし、先ほどと同じように、「実際に働いているを見たことがあるか」別に見ると、「あんな大人になりたい」と回答した子供の割合は、
●父親の場合:
働いている姿を「見たことがある」子供は60.2%、「見たことがない」子供は42%
●母親の場合:
働いている姿を「見たことがある」子供は57.2%、「見たことがない」子供は40.6%
と、父母どちらとも「見たことがない」子供に比べて20ポイント近い差となっています(図5)。
また、子供に「将来働くことを楽しみに感じているか」を聞いてみると、「楽しみ」と回答した子供の割合は、親の働く姿を「見たことがある」場合は78.2%、「見たことがない」場合は70.3%で、働くすがたを見たことがある子供のほうが楽しみにしている傾向にありました(図6)。
子供たちは、親の「働く姿」を見ることによって、働く大人への憧れをもち、「働く」という事への具体的なイメージを持ち始めるように思えます。子のキャリア観を育てる“親の背中”は「働く姿」でした。
冒頭のMITの実験結果が、子供がまねて学習するのは「方法」だけではなく、「姿勢」もまねて学習するといった結果にもあったように、子供たちは親の就いている仕事の種類ではなく、仕事に「取り組んでいる姿」を見て、多くの情報、感情を得ているといえるのではないでしょうか。
<パート戦力化に関する取材記事は、人と仕事研究所WEBサイトで検索・閲覧できます>
TOP ⇒ コラム/取材記事 ⇒ 現場イズムバックナンバー
詳細はこちらをご覧ください→アイデム人と仕事研究所
●文/岸川 宏(きしかわ ひろし)
アイデム人と仕事研究所 所長/社会保険労務士
大学卒業後、リゾート開発関連会社へ入社。飲食店部門での店舗運営を経験後、社会保険労務士資格を取得。社会保険労務士事務所にて、主に中堅・小規模企業の労務相談、社会保険関連手続きに従事した。1999年、アイデム人と仕事研究所に入社。労働環境の実態に迫る情報提供を目指し、社内・外への情報発信を続けている。2015年4月より現職。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。