子供は、親の背中を見て育つ?
アイデム人と仕事研究所
岸川 宏(きしかわ ひろし)
子供は親を真似る
昨年、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームが「幼児は、大人を見ることによって、忍耐の価値を学ぶことが出来る」という実験結果を公表したそうです(AP通信)。それは、「子供たちに一生懸命な姿を見せることで、子供たち自身も物事に一所懸命に取り組むようになる可能性がある」ということでした。
実験は、生後約15ヵ月の赤ちゃん262人に対して、大人が透明なプラスチックケースに入った玩具を取り出す様子を見せて、その後、別の玩具で様子を観察するというもの。赤ちゃんを二つのグループに分けて玩具を取り出す様子を見せるのですが、一つのグループには「なかなか取り出すことが出来ずに、30秒間奮闘して取り出す様子」を、もうひとつのグループには、「すんなり取り出す様子」を見せます。
次に、赤ちゃんには、布で覆った箱から音楽が流れる様子を見せた上で、自分でも音楽を流してみるように促します。箱には大きな赤いボタンがついていて、押せるようになっているものの、押しても音楽は流れない構造です。
すると、大人が「簡単にクリアした様子を見ていたグループ」よりも、「奮闘した姿を見せたグループ」のほうが、ボタンを押す回数が多く、より努力して音楽を流そうとしていたという結果だったそうです。
子供は、親の姿をまねるといわれますが、「玩具を取り出す様子」をまねしたということではなく、「努力する姿」をまねたということが示されているということでした。さらに、この実験では、玩具を取り出す際に赤ちゃんに話しかけたりしながら積極的にかかわりを持つと、学びの効果がさらに高まったということです。
昨今、成功する力に必要な力として「GRIT」(やり抜く力)に注目が集まっていますが、やり抜く力の育成に、「大人が目標達成に向けて努力する姿を見せることによって、醸成される可能性がある」といえるようです。
子供の育成には、身近な大人である“親”の影響が大きいということが想像される結果ですね。「子は親の背中を見て育つ」ということでしょうか。
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