【本誌特別調査】改正労働契約法に伴う無期転換への対応アンケート(労務行政研究所)
無期転換ルールはフルタイム型で63.2%、短時間勤務型で59.1%が策定済み
3 無期転換申込権が発生する有期契約労働者への対応
無期転換申込権が発生する者への対応[図表11~12]
正社員、限定正社員への登用では会社からの働き掛け、無期転換では本人からの申し込みを待つケースが多い
無期転換申込権が発生する者に対して、どのような手順で登用や無期転換を進めるかを、雇用形態別に尋ねた[図表11]。
「正社員への登用」「既存の限定正社員への登用」の場合では、それぞれ57.1%、50.0%が「会社から対象者を選別して働き掛ける」と回答している。一方、労働条件変更を伴わない「無期転換(労働条件の変更なし)」では77.9%、労働条件の変更を伴う「無期転換(労働条件の変更あり)」では69.7%が、「本人からの申し込みを待つ」としており、取り扱いに違いが見られる。
無期転換に際して選別を行う場合のルール内容(複数回答)は、[図表12]のとおり。「上司の推薦」「人事評価」「面接」が他の項目を引き離して上位3位を占めている。なお、「無期転換(労働条件の変更なし)」で選別を行うのは、正社員等他の勤務形態への登用があるケースで、一定以上の人事評価を獲得し、上司の推薦があった場合には正社員へ登用し、そうでない場合には単に労働契約の期間のみを無期に転換するなどを意味している。「評価が悪かったときには無期転換を行わない」などということではないので、ご留意いただきたい。
契約期間が通算5年を超えないようにする方法[図表13~14]
契約更新回数や勤続年数の上限を設ける、上限内容を変更するなどの対応が約半数。クーリング期間の活用は短時間勤務型の1社のみ
有期契約労働者の契約期間が通算5年を超えないように管理し、無期転換申込権の発生を防止する企業もある。また、改正労働契約法には、1年契約の場合、有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約がない期間が6カ月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含めないというクーリング期間の定めも盛り込まれたが、企業ではどのような対応(複数回答)を考えているのだろうか[図表13]。
「契約更新回数や勤続年数の上限を設ける・内容を変更する」がフルタイム型45.3%、短時間勤務型46.3%で最も多く、次いで「契約更新時の基準を厳格化する」がフルタイム型32.6%、短時間勤務型25.0%であった。
規模別に見ると、1000人以上では「契約更新時の基準を厳格化する」がフルタイム型、短時間勤務型とも最も多くなっており、上限の設定と更新基準の厳格化という両面から、通算5年を超えないよう管理を行っていることが分かる。
「契約期間の途中でクーリング期間を設けて、通算期間をリセットする」と回答した企業は、短時間勤務型でわずか1社であった(フルタイム型は0社)。1年を通して業務が存在する中で、半年間以上欠員が発生するクーリング制度は、通算期間をリセットするためとはいえ、実務上は活用しづらい方法のようだ。
[図表14]は、[図表13]で「契約更新時の基準を厳格化する」と回答した企業に対し、その具体的な内容(複数回答)を聞いたものである。
フルタイム型の場合は、「勤務成績・勤務態度」74.2%、「期間満了時の業務量・業務上の必要性」58.1%、「能力」54.8%が上位3項目に挙げられた。しかし、現在の基準との比較で見ると、「能力」や「契約更新の上限回数に達したかどうか」は割合が高くなっているものの、「本人の意思」や「期間満了時の業務量・業務上の必要性」の割合が低くなっている。
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