パート賃金10年史
~10年間で87円の上昇。平均1,000円オーバーの時代へ
岸川 宏(きしかわ ひろし)
パート・アルバイトの需要は依然として高く、採用が困難な状況が続いています。企業は、働き手のニーズに合わせて短い勤務での募集を増加させる傾向があるように思われます。
パート・アルバイトが働く理由は、「生活と仕事の両立をはかりたいから」「自分の都合のよい時間に働きたいから」「扶養の範囲内で働きたいから」となっているからです(図6)。
一方、人材確保が困難な中で、超短時間のシフトとは別に、待遇を正社員並みの待遇にすることにより、人材の確保を図る動きもみられるようになりました。育児や介護などの事情があり、正社員のようにフルタイムでは働けないものの、能力や就労意欲の働き手を確保することがねらいです。人材確保のため、多様な働き方を提供する企業が増えてくる可能性がありそうです。
正社員との賃金格差~大きな変化は見られない
非正規労働者と正社員の賃金格差を埋めていくため、「最低賃金の引上げ」や「同一(価値)労働、同一賃金」等の取り組みが試みられています。また、パート労働法も大きく改正され、企業が非正規労働者を雇い入れる理由も大きく変化してきました。人と仕事研究所で行なっている調査でもその傾向は顕著でした(参考1)。では、実際に募集時の賃金データにおいてはどのような結果となっているでしょうか。
図7は、募集時の平均時給に、正社員のひと月の平均所定労働時間(今回は、厚生労働省「毎月勤労統計」平成27年確報 就業形態別月間労働時間 一般労働者 所定内労働時間 154.3時間で計算)で乗じ、「しごと情報アイデム」に掲載された正社員の募集時の平均月給と比較をしたものです。結果は、職種計が69%前後、専門職を除いた職種の合計が68%~63%前後で、専門職が84%~88%前後で推移していて、大きな変化は見られませんでした。
平均時給の推移だけを見れば、パートアルバイトの賃金は上昇傾向でした。企業側のパート・アルバイトを雇用する意識も「人件費が安い」という認識では無くなってきたという結果もありました。
しかし、正社員との賃金比較においては大きな変化はありませんでした。これは勤務時間を短くしたり、仕事の内容を正社員と細かく分業するなど、仕事の質を変えることにより、人件費の総額を変えずに効率の良い運用を求めてきた結果といえるかもしれません。
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●文/岸川 宏(きしかわ ひろし)
アイデム人と仕事研究所 所長/社会保険労務士
大学卒業後、リゾート開発関連会社へ入社。飲食店部門での店舗運営を経験後、社会保険労務士資格を取得。社会保険労務士事務所にて、主に中堅・小規模企業の労務相談、社会保険関連手続きに従事した。
1999年、アイデム人と仕事研究所に入社。労働環境の実態に迫る情報提供を目指し、社内・外への情報発信を続けている。2015年4月より現職。
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