既卒者を新卒扱いで採用する
三宅 航太(みやけ・こうた)
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非正規雇用だった者を正社員として雇ったことがあるか?
最後は、直近3年間に20代・30代の正社員採用方法として中途採用を行い、「採用できた」と回答した企業を対象にした調査です。
採用者の中に、「どのくらい前職が非正規雇用だった者がいたか」を聞きました(図2・左)。採用者のうち、「全員、前職は正規雇用だった」とする企業は24.5%、「ほとんどの者の前職は正規雇用で、一部の者は非正規雇用だった」44.8%、「前職が正規雇用だった者と非正規雇用だった者は同じくらいだった」21.0%、「ほとんどの者の前職は非正規雇用で、一部の者は正規雇用だった」8.0%となり、約3割の企業が、採用者の半数以上は前職が非正規雇用だったと回答しています。
「全員、前職は正規雇用だった」以外の回答をした企業に、非正規雇用で働いていた者の能力や仕事に対する姿勢・意欲を「どのように感じているか」も聞きました(図2・右)。最多は「既存の正社員と同程度」で65.8%、次いで「既存の正社員よりも劣る」16.3%、「既存の正社員より優れている」9.3%でした。約75%の企業(「既存の正社員と同程度」65.8%+「既存の正社員より優れている」9.3%)が、前職が非正規雇用だった者の能力や姿勢は既存の正社員と同程度、もしくはそれ以上だと評価しています。
自社に適した採用方法を模索する
紹介した調査結果をまとめると、下記のようになります。
・非正規の若年者を、自社の正社員として雇うことを前向きに考えている企業は多い
・選考は人物本位
・実際に採用した企業の約3割で、採用者の半数以上は前職が非正規
また、前職が非正規雇用だった中途採用の正社員の働きぶりについて、多くの企業が既存の正社員と遜色ないと評価しました。
以上を踏まえ、「“新卒・既卒ワンプール/通年採用”の定着に向けて」という提言を考えると、十分に可能性があるのではないかと思います。
新卒一括採用の「採用選考期間を集中的に行える」という代表的なメリットは、早期化・長期化が問題となっている近年の新卒採用の状況を鑑みると、一部の大手企業しか享受できていないように思われます。
明治期に始まった新卒一括採用は、戦後の復興期に確立された日本独特の雇用慣行です。変化が激しく、かつてのような経済成長を望めない今の環境になじまないのは、当然なのかもしれません。企業は既存の枠組みに捉われず、自社に適した採用方法を模索する必要があるのではないでしょうか。
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●文/三宅 航太(みやけ・こうた)
2014年、株式会社アイデム入社。同年8月、人と仕事研究所に配属。賃金に関する統計・分析を担当。人と仕事研究所WEBサイトで発信している労働関連ニュースの原稿作成なども行っている。
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