既卒者を新卒扱いで採用する
三宅 航太(みやけ・こうた)
パートタイマー白書や学生を対象にした就職活動に関する意識調査など、当研究所が独自で行っている調査から見えてくることを考察します。
3月28日、経済同友会(※)は新卒採用に関する提言を発表しました。提言のタイトルは「“新卒・既卒ワンプール/通年採用”の定着に向けて」です。新卒採用の手法の一つとして、既卒者(卒業後5年まで)を新人として通年で採用するということと、従来の新卒一括採用に既卒者も含めてワンプールで採用するという枠組みを提示しています。
新卒採用の枠を広げることで、若者に再チャレンジの機会を与えつつ、企業にとっても多様な経験を積んだ人材を「新人」として確保できるメリットがあるとしています。提言のタイトルに「定着」という言葉が使われているように、すでに導入している企業は少なくありません。
※1946年に結成された日本の経営者団体。企業経営者および経済団体役員が、個人の資格で加入する会員制組織で、国内外の問題に対して国民経済的立場から意見を発表する。現代表幹事は、三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏。
新卒一括採用の問題点
提言に至った背景として、現行の新卒一括採用は学業の時間を妨げ、人材育成の阻害要因になっていることや、大学卒業後3年以内の離職率が3割に及んでいることなどがあげられます。一括採用は、卒業までに内定を得なければならないという心理的プレッシャーを学生に与えるため、雇用のミスマッチを生む可能性をはらんでいます。
そうした問題意識の下、同友会は若者にとって望ましい就職活動、採用方法の実現に向けて、企業がなすべきこととして今回の提言を行いました。
ですが、その実行性には課題もあります。企業の負担が増えるため、大手企業に限られるのではといったものから、実際に新卒者の代わりに既卒者を受け入れられるのかという懸念もあります。
これから、既卒者の受け入れを考える上で参考になりそうな調査を見ていきたいと思います。調査は、弊社発行の平成26年版パートタイマー白書で実施したものです。内容は、20代・30代の若年非正規雇用者が、企業に正規雇用で「雇い入れられるかどうか」の可能性を探ったものです。企業は非正規雇用で働く若年労働者にどのような印象を抱き、どのような評価をしているのでしょうか。
若年非正規雇用者を、正社員として雇用
企業に、20代・30代の非正規雇用の労働者を自社の正社員として雇い入れることについて、「どのように考えているか」を聞きました。結果は「積極的に雇い入れたい」18.7%、「どちらかと言えば積極的に雇い入れたい」51.0%、「雇い入れることにはどちらかと言えば消極的である」23.8%、「雇い入れることには消極的である」6.4%となり、約7割の企業が積極的に雇い入れる意向でした。
また、「積極的に雇い入れたい」「どちらかと言えば積極的に雇い入れたい」と回答した企業に理由を聞きました(複数回答)。最多は「能力本位の採用ができるから」65.8%、次いで「真剣に働きたいと考えている者が多いと感じるから」41.6%、「採用ターゲットが広がり、採用が容易になるだろうから」39.4%となり、彼らの可能性に期待するとともに、人材確保の手段としても捉えている様子がうかがえる結果となっています。
では、前職が非正規雇用だった20代・30代の労働者を自社の正社員として採用するとしたら、企業は何を重視するでしょうか(図1)。
最多は「本人の性格・人柄」で、20代に対しては76.9%、30代に対しては73.2%でした。次いで、「今までの職業経験と自社の業務の関連性」20代43.6%・30代49.4%、「今までの職業経験の一貫性」20代31.6%・30代37.0%、「正社員での就労経験」20代28.0%・30代35.2%となっています。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。