いよいよ10月から施行!企業担当者が押さえておくべき
「年金一元化」の改正ポイント
社会保険労務士
高木 隆司
今まで共済年金と厚生年金に分かれていた公務員と会社員の年金は、平成27年10月1日、厚生年金に一元化(統合)されます。一元化による改正の影響は、制度が変わる公務員だけでなく、会社員にも及びます。今回は、会社の人事労務担当者にかかわりがあると思われる、いくつかの改正点をピックアップしました。いずれも執筆時点の情報によるものですが、直前に迫った一元化の影響を理解するとともに、業務に役立てていただければ幸いです。
1. 採用月に退職した従業員の保険料
(1)一元化前=保険料を納める
従業員が、採用した月の月末の前日までに退職してしまった場合、今までは厚生年金と健康保険の保険料を1カ月分納めていましたが、一元化後は厚生年金の保険料は還付されます。
例えば、4月1日付で従業員を採用すると、会社は、4月分からその従業員の健康保険と厚生年金の保険料を納めます。翌月の5月末日に口座振替などで納める4月分の保険料には、この従業員の分が含まれています。従業員負担の4月分の保険料は、5月に支払う報酬から天引きできます。
保険料は、加入者の資格を取得した月から、喪失した月(退職日の翌日=資格喪失日が含まれる月)の前月までの加入期間について納めますが、この従業員が例えば4月20日に辞めてしまった場合、4月分を納めることになっています。
加入者の資格を取得した月に喪失した同月得喪の月は加入期間とされるので、保険料を納めるのです。この保険料は、この者の厚生年金の年金額に反映されます。
この者が退職後、国民年金の1号加入者となった場合、4月分の国民年金保険料を納付しなければなりません。4月は厚生年金と国民年金の保険料を二重に負担しますが、それぞれの保険料はそれぞれの給付に反映されます。
なお、この者が4月中に再就職して、再び厚生年金の加入者となった場合、4月は再就職した会社での加入期間とされます。その前に同月得喪した会社が納めた保険料は、この者の年金給付には反映されず、会社が請求すれば還付されます。
(2)一元化後=保険料は還付される
一元化後、厚生年金の加入者資格を同月得喪し、その後、国民年金の1号加入者または3号加入者となった場合、その月は厚生年金の加入期間とされません。資格の取得や喪失は、一元化前と同じように届け出ますが、納めた保険料は還付されます。
これは、一元化前の共済年金の仕組みに合わせるもので、保険料の二重負担を防ぐためと言われています。還付される者がいる場合は、年金事務所から会社へ通知される予定なので、それに基づいて還付手続を行います。
国民年金の1号または3号加入者とされるのは、任意加入者を除けば、20歳以上60歳未満の者です。この例の4月が20歳前あるいは60歳以後の場合は、一元化前と変わらず厚生年金加入期間とされ、保険料は還付されません。
また、この者が死亡によって加入者資格を喪失した場合は、その後、年金制度の加入者にならないので、一元化後も4月は加入期間とされ保険料は還付されません。
この者が4月中に再就職した場合の仕組みは一元化前と変わりませんが、保険料の還付については、該当者がいることが通知される予定です。
このように、一元化後は同月得喪の月の厚生年金保険料は、原則として還付されます。会社が、従業員負担分の保険料を天引きなどで受け取っていたときは、退職した従業員に返還する必要があります。
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