問われるインターンシップの在り方
古橋 孝美(ふるはし たかみ)
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プログラム内容は「会社説明」、「1日」開催が最多
インターンシップに参加した学生に、どのような内容だったかを聞くと、「参加企業の会社概要についての説明」67.2%、「参加企業が属する業界についての説明」64.0%、「参加企業やその業界に関するテーマのグループワーク・ディスカッション」53.8%が上位となりました。その一方、インターンシップの本来の目的である就業体験については、「実際の業務の体験(給料なし)」29.4%、「実際の業務の体験(給料あり)」7.6%と、あまり実施されていない様子がうかがえます。
また、インターンシップのプログラム日数を聞くと、多い順に「1日」29.4%、「4~5日」27.8%となりました。ここからは、ワンデー開催のものと約1週間開催のものが主流になっていることが明らかです。
インターンシップ終了後にも、企業から“コンタクトあり”
調査では、インターンシップの終了後に、参加企業から選考やイベントの案内が「あった」学生が68.2%に上ることも明らかになりました。ここからは、企業側が、インターンシップをきっかけとして学生をつなぎとめようとする姿勢が垣間見えます。実際、インターンシップに参加した企業の採用選考にエントリーまたは応募をするとした学生は7割を超え、企業側の望むであろう形に落ち着いていました。
2016年度の新卒採用活動では、調査結果と同様に就業体験機会の提供という本来の目的よりも、業界研究や企業研究の一環として、または就活に役立つ情報セミナーとして「インターンシップ」を開催した企業も少なくないという話を聞きます。もちろん、こういった機会が学生の職業観形成の一助になり、就職活動を行う学生にとって有益な情報提供となっていることも事実です。
しかし、インターンシップが、採用選考活動を強く意識したイベントとなり、新卒採用の新しいルールをかいくぐるツールになっている感も否めません。元々、就職活動時期の変更は、より豊かな人材の育成を目指すべく行われました。にもかかわらず、解禁前から水面下で広報・採用選考活動が進められていれば、学生側にも不安や混乱が広がります。
また、“働く”ことに触れて考える機会も減少してしまうかもしれません。今後は、より豊かな人材を育成し採用するためにも、インターンシップの在り方も考えていく必要がありそうです。
2016年3月卒業予定者の就職活動に関する調査(2015年2月1日状況)
調査対象:2016年3月卒業予定で、民間企業への就職を希望している大学3年生・大学院1年生 有効回答者:637名 調査期間:2015年2月1日~3日
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●文/古橋 孝美(ふるはし たかみ)
2007年、株式会社アイデム入社。求人広告の営業職として、人事・採用担当者に採用活動の提案を行う。2008年、同社人と仕事研究所に異動し、毎年パートタイマー白書の企画・調査・発行をトータルで手がける。2012年、新卒採用・就職活動に関する調査等のプロジェクトを立ち上げ、年間約15本の調査の企画・進行管理を行う。2015年出産に伴い休職、2016年復職。引き続き、雇用の現状や今後の課題について調査を進める一方、Webサイトの記事・コンテンツ制作、顧客向け販促資料などの編集業務も行っている。
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