ソン?トク?パートの時給アップ
岸川宏(きしかわひろし)
時給のアップは“みとめ”の証
前頁で引用した調査結果を、さらに詳しく見てみましょう。
ここでは、2位、3位以降に注目します。すると、自分の“能力”や“仕事の結果”に対する「みとめ」が嬉しい、との答えが並びました。例えば、“「自分に合った仕事」を「任せて」もらえる”“「ねぎらい」の声をかけられる”ことがうれしい、といった具合です。
ここからは、パート・アルバイトが「時給アップ」を嬉しいとする理由は、「もらえる額そのもの」もさることながら、むしろ、自分の働きぶりに対する“みとめ”つまり、評価の結果の反映だと感じているからこそ、と言えるようです。
評価の効果は?
従業員に気持ちよく働いてもらうことは、とても重要。でも、「時給を上げたら、みんなが喜んでくれた。よかった、よかった」と、単純に手を叩いてもいられません。時給アップには、現在の働きぶりに対する評価の反映という側面もありますが、そこには「アップに見合った(さらなる)活躍への期待」も当然含まれます。「喜んでもらっておしまい」では、人件費が跳ね上がるだけです。
パートの時給について、よく見受けられるのは、勤務年数や勤務時間数などに応じて機械的に上げていく仕組み。働く時間が長くなれば、それだけ能力や知識も高まるだろう、という考えです。これは、特に勤務したての新人等には有効です。手間もかからず、決して間違いではありません。
半面、その熟練レベル等には、目が向けられていない。つまり、個々人の「能力」や「取り組み姿勢」の違いに基づく、習熟スピードや成長度合いが反映されない仕組みのため、「働きぶりに見合った」時給になりづらいのです。
働きぶりと時給を比例させるためには、“評価”が必要です。同調査では企業に、「パートアルバイトを評価すること」が有益かどうかを聞いています。結果は、9割以上の企業が「有益」だと回答しました。具体的には、「本人のモチベーションが向上した」54.6%、「評価に応じた適正な処遇ができた」37.0%、「能力を考慮した人員配置ができた」32.8%など。評価することで、働く側の労働意欲が喚起でき、その雇用管理も最適化できるという、両面の効果を実感しているようです。
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