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『ビジネスガイド』提携

企業による積極的な取り組みが増加中!
「障がい者雇用」をめぐる最新動向と採用&労務管理上のポイント
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社会保険労務士 松山 純子

3. 法定雇用率引上げに対する企業の対応

2013年4月1日より、法定雇用率が2.0%に引き上げられたことで、企業はより一層、障がい者雇用に積極的に取り組んでいく必要があります。では、実際にどのように障がい者雇用を行っていけばよいのかを確認していきましょう。

障がい者を雇用するにあたっては、「障がい者雇用を知る」「職務の棚卸し」「職場環境を整える」「募集」「教育」「職場定着」など、押さえておくべき事項がたくさんあります。これらの問題をすべて解決することは難しいですが、企業の努力と工夫と理解で、障がいがある方々が就職して元気に活躍する場が増えています。

(1)障がい者雇用を知る

障がい者の能力を十分発揮してもらうために、障がいを知り、理解し、できることを見つけ、強みを見つけることが障がい者雇用の第一歩となります。自治体が主催する障がい者雇用の研修会などに積極的に参加されることから始めることをお勧めします。

(2)職務の棚卸し
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障がい者雇用にあたって、まず取り組むことは「どんな仕事をしていただくか」の検討をすることです。日頃から「この仕事を誰かにお願いしたいな」と思っている業務の棚卸しをしてみるとよいでしょう。このとき、障がい者雇用を意識しないで、「お願いできたら助かるな」と思うものを挙げてみてください。一つの業務には、いろいろな作業が含まれていますので、これを棚卸し(細分化)するイメージです。

例えば、毎日の仕出し弁当の注文、コピー用紙の補充、社内郵便の配付、インターネットでの情報収集、書類またはデータの校正、社内の消耗品管理、ファイリング、名刺管理、社内を巡回しての書類集配作業などが挙げられます。そして、この棚卸しした業務に一工夫することで、障がい者にお願いできるようになります。「一工夫」とは、例えば社内を巡回しての書類集配作業をお願いする場合には、書類ごとに行き先と担当者を記載しておく、などです。気を付けていただきたいことは、「きっとこれはできないだろう」と決め付けてしまうことです。

(3)職場環境を整える

障がいの種別によって、働きやすい職場にするための環境整備の仕方はさまざまです。より詳しく障がいを知ることで働きやすい環境整備を行うことができます。

身体障がい者の場合、障がいの事由が視覚・聴覚・肢体等のいずれによるかで整備の仕方が異なります。視覚であれば掲示物にはできるだけ大きい文字を使用する、通路に物を置かないようにする、聴覚であれば視覚的に情報提供を行う、コミュニケーションの取り方に配慮する、肢体であれば廊下や階段に手すりを付け、室内はつまずかないようカーペットなど摩擦の高いものを使用しない、などの配慮が大切です。

知的障がい者の場合、抽象的な言葉や概念を理解することや自分の考えを伝えることが苦手とされていますので、このあたりの配慮が大切です。

精神障がい者の場合、新しい環境に慣れることや物事を臨機応変に行うことが苦手であったり、不安や悩みを抱え込んでしまったりすることがあります。周囲が状態の変化に早めに気づいて声掛けを行う等の配慮が大切になります。

職場環境の整備を行った場合には、要件に該当しますと助成金が支給されることがありますので、詳しくは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に問い合わせてみてください。

職場環境の他に、労働時間や通勤時間などの労働条件の整備も必要になります。

(4)募集の仕方

初めて障がい者雇用に取り組む場合、どのような順序で進めていけばよいかわからないことや不安もありますから、早い段階でハローワークの専門援助部門に相談するとよいでしょう。ハローワークは、障がい者雇用のサポート機関でもあります。専門の雇用指導官が、求人の相談や助成金など支援の制度の紹介を含めて、障がい者雇用に関するさまざまなサポートをしてくれます。

また、全国のハローワークで「障がい者就職面接会」を開催しています。就職意欲のある方々が面接に参加していますので、日頃からハローワークに面接会に参加したい旨を伝えておくとよいでしょう。

そして、障がい者雇用を進めていくうえでは、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関との連携も大切です。

他には、民間の職業紹介事業者や特別支援学校、作業所などにも求人を出すことができます。

(5)教育の仕方

受入れ側は、自社の全従業員に障がい者雇用に関心と理解を持ってもらうことが大切です。なぜ、全従業員が対象なのかといいますと、人事部署や受け入れる該当部署だけでは、受け入れる当事者だけに負担がかかってしまい、結果として障がい者雇用の拡大につながらなくなるからです。研修では、障がい者雇用の意味・障がい状態や特性・必要とされる配慮などを学ぶとよいでしょう。

従業員向け研修を開催するにあたって、地域障害者職業センターの障がい者職業カウンセラーなどに相談すると、研修内容や講師についてアドバイスを得られます。

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地域障害者職業センターとは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置・運営する障がい者職業センターの一つで全国47都道府県に設置されています。ハローワークと連携しながら、職業リハビリテーションを行う機関です。障がい者職業カウンセラーが配置され、障がい者雇用の相談、採用人数、労働条件、職場環境整備なども相談できる大変心強い機関です。採用後のフォローアップまでの一貫した専門的な助言も行ってくれます。

また、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、障がい者雇用への理解を深めるために、「理解する心、支えあう職場~精神障がい者雇用への道~」「はじめてみませんか? 障がい者雇用」などのDVD等の無料貸出し制度もあります。障がい者雇用のイメージが持ちやすくなるため、活用してみるのもお勧めです。「障がい者雇用事例ビデオ」と検索すると情報が出てきます。

(6)定着のための支援体制

障がい者の職場定着に欠かせないのは、支援体制の確立です。障がい者が、不安や改善してほしいことを誰にも言えずに1人放置されてしまうことがないよう、障がい者雇用推進者や障がい者職業生活相談員を配置して、体制を作ることが必要です。

社内で支援体制を整えることが難しい場合は、地域障がい者職業センターなどの外部支援機関に協力を求めて、ジョブコーチを派遣してもらうのもよいでしょう。

「ジョブコーチ」とは、障がい者が職場に適応できるように通勤のサポートや同僚との関わり方、仕事の進め方について、常に障がい者のそばに付いてフォローしてくれる方です。


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