<就職サイト5社に聞く> 26卒分析と学生動向
採用意欲は高くても、応募者の確保に苦戦
採用施策の「選択と集中」を
林 茜氏(株式会社キャリタス キャリタス就活編集長 )
松本 あゆみ氏(株式会社キャリタス キャリタスリサーチ上席研究員)

2026年卒の新卒採用市場や27卒の見通しなどについて、株式会社キャリタスの林茜氏と松本あゆみ氏に聞いた。
7月時点の充足率は過去10年で最低
2026年卒の採用市場の特徴についてお聞かせください。
松本:企業の採用意欲は非常に高い状態が続いています。一方でここ数年、計画通りに採用できていない企業は多く、「今年こそは」という思いで、かなり前のめりに活動しているようです。母集団の拡大に注力する動きが活発でした。企業の採用活動における優先順位を尋ねる調査では、「質より量を確保したい」という回答の割合が年々増えています。しかし、その意欲とは裏腹に、多くの企業が苦戦しているのが実状です。早期から活動量を増やした企業でさえ、応募者の確保に苦戦するケースが目立ちました。エントリー者数が「減った」企業は45.9%で、「増えた」の31.2%を上回っています。一方で、1000人以上の企業やIT業界は、エントリー者数が増えた割合が比較的高めです。
7月時点での企業の内定者充足率は53.5%と、ここ10年で最も低くなりました。7月時点で採用を継続している企業の6割近くが、充足は難しいと見通しています。
内定の状況はいかがでしたか。
松本:当社のモニター学生の内定率は2月1日時点で39.9%、3月1日時点で47.7%と、序盤から高水準で推移しました。その後は伸びが緩やかになり、6月、7月時点では前年をわずかに下回っています。早い段階から応募企業を絞り込んだ学生の選考が、思うように進まなかったケースが多いのではないかと思います。

特徴的なのは、学生の活動スタイルの変化です。かつてのように3月や6月に集中的に活動するのではなく、早い時期から1社か2社程度の選考を常に動かし続けるような、「細く長く」活動する学生が増えています。早い段階で内定を得ると、それ以降は志望度の高い企業に絞って活動するため、企業側からすると、3月の広報活動解禁以降に応募者が思うように伸びない、という状況が生まれています。
採用がうまくいっている企業と、そうでない企業には、どのような違いがあるのでしょうか。
松本:大前提として、多くの企業にとって厳しい環境であることに変わりはありません。その中でも、比較的うまくいっているのは、やはり大手企業です。もちろん知名度の差はありますが、それ以上に「採用にかけられる工数」の差が大きいと感じます。
近年の採用活動は長期化しています。大学3年生の早期から接点を持ち、インターンシップ等、スピーディーな選考、手厚い内定者フォローと、1年以上にわたって学生との関係を維持しなくてはなりません。当然、工数をかければかけるほど採用の確度は上がりますが、そのためには潤沢な予算や人員が必要です。専任の担当者がいないことが多い中小企業にとっては、この時点で大きな差が生まれてしまいます。
初任給の引き上げや、働きやすい環境への改革といった待遇改善の取り組みも、学生の企業選びに大きな影響を与えています。こうした動きは大手企業が先行しているイメージがあり、学生の大手志向をさらに強める一因となっています。
学生が企業を選ぶ基準は変化していますか。
林:学生の企業選びの基準として「給与・待遇の良さ」への関心は、ここ数年で際立って高まっています。メディアで初任給アップのニュースが頻繁に報道されたこともあり、学生は非常に意識しています。
26卒の学生に調査したところ、最低限必要だと思う初任給額は「25万円」が23.4%で最多でした。一方で、25卒では30.9%を占めた「20万円」は21.1%と、基準そのものが大きく上がっている印象です。学生は過去からの引き上げ幅を見ているのではなく、現在の金額で判断する傾向があります。
松本:「働きやすさ」も非常に重要です。残業時間や勤務地はもちろんですが、「職場の雰囲気」を重視する声も大きくなっています。インターンシップ等で実際にオフィスを訪れる機会が増えたことで、落ち着いてフラットな人間関係の中で働ける環境かどうかを、自身の目で確かめようとしています。
明確な採用ターゲットに響く施策の検討を
インターンシップやオープン・カンパニーの動きについてもお聞かせください。
松本:枠組みが変更されて2年目となり、企業の混乱は収まってきましたが、学生の動き出しが大きく前倒しになりました。これまでは6月頃から夏のインターンシップ等を探し始めるのが一般的でしたが、今や大学3年生への進級と同時に情報収集を始めるのが一般的です。そのように指導している大学も多く、夏のインターンシップ等がその後の選考に大きく影響するという情報を学生はよく理解しています。
特に、選考を経て参加するタイプのインターンシップの場合、「わざわざ選考を受けて参加するだから、きっとメリットがあるのだろう」と学生は考えます。実際に、インターンシップ等参加者の半数以上が、何らかの早期選考の案内を受けた経験があるというデータもあります。
林:26卒まではインターンシップ等のエントリー数がピークとなるのは6月でしたが、27卒では、5月が6月を上回りました。しかし、学生の本音を調査すると、「就職活動の開始時期が早すぎる」と感じている学生が年々増え続け、今や6割近くに達しています。
3年生は本来、学業や部活動など、学生生活でやりたいことに注力するものです。しかし、今の学生は注力したいことと就職活動、どちらを優先させるかという、非常に難しい選択を迫られています。
27卒の採用に向けて、企業はどのように動くべきでしょうか。
松本:まず、27卒の採用意欲も、引き続き高い水準で推移すると予測されます。ただ、ここまでの採用活動で時間、コスト、労力を費やしてきた結果、企業側に一種の”疲れ”が見え始めています。
学生の動きはさらに早まっていて、大学2年生の5月時点で、インターンシップ等への応募経験を持つ学生が急増しています。企業としては、夏のインターンシップ等で早期に接点を持った学生を、いかにつなぎ止め、志望度を高めていくかが重要です。
最も重要なのは、「選択と集中」です。これまでのように、「やった方が良い」と言われる施策をすべてやろうとするのは、もはや限界だと思います。早期からの活動、手厚いフォロー、内定者懇親会など、施策を足し算し続けた結果、すべてが中途半端になり、労力だけがかかって成果が出ない、という事態に陥りかねません。
今、企業がやるべきは、自社が本当に必要としている人物像を明確に定義し、採用ターゲットを定めることです。そして、そのターゲットに響く施策は何かを考え、リソースを集中投下していく。例えば、夏のインターンシップ等で接点を持った学生全員に同じようにアプローチするのではなく、自社の求める人物像に近い学生や、自社への関心が高い学生に絞って手厚くフォローするといった判断が必要です。
1、2年生対象のコンテンツを強化

27卒採用に向けて展開している貴社のサービスのコンセプトや特長を教えてください。
林:早くからキャリア形成に取り組みたいというニーズに対応するため、1、2年生に向けたコンテンツを強化しています。たとえば主に2年生を対象に、自分のキャリアを考えるきっかけにしてもらう「キャリタスキックオフ」があります。2年生の前期では、就職活動準備の手前の段階として、お金や投資、コミュニケーションスキルについてのイベントを企画。最近増えている、1、2年生が応募できるオープン・カンパニーも特集しています。
クチコミでの選考対策も当社サービスの特徴です。サイト上でクチコミを検索する機能に加え、毎月、学生のクチコミを基に作成したお役立ち資料も提供しています。たとえば、大手人気企業のインターンシップ等に参加した学生の体験談や、本選考のエントリーシートや面接で聞かれた質問を一覧にまとめています。
学生に寄り添う相談機能も改良を重ねていて、相談数は累計で6000件を超えました。利用した学生からは好評で、お礼のメッセージをもらうこともあります。認知度を上げて、より多くの学生に利用していただきたいと考えています。
最後に、採用担当者の皆様へメッセージをお願いします。
松本:本当に厳しい採用環境が続いています。まずは「どのような人物が必要なのか」、自社が求める人物像を具体的に洗い出すこと。そして、その人物像に合致した人材に出会い、ひきつけるためにどうすればよいのか。自社ならではの方法を考えることが、これからの採用活動を成功に導く鍵になると考えています。
林:企業にとって関心が高いのは、早期化が進む中で1、2年生にどうアプローチするか、ということだと思います。キャリタス就活は今後も1、2年生に向けたコンテンツを強化し、長く利用していただけるようなサービスを提供していきます。

社名 | 株式会社キャリタス
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本社所在地 | 〒112-0004 東京都文京区後楽2-5-1 飯田橋ファーストビル 9階 |
事業内容 |
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設立 | 1973年10月 |
代表者名 | 代表取締役社長 新留 正朗 |
URL | https://www.career-tasu.co.jp/service/#service01 |
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