職場のモヤモヤ解決図鑑
【第1回】「1on1」をやってね、と言われたけど、話すことが見つからない……
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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志田 徹(しだ とおる)
都内メーカー勤務の35才。営業主任で夏樹の上司。頼りないが根は真面目。口癖は「う~ん…(無言)」
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児玉 夏樹(こだま なつき)
社会人3年目の25才。志田の部下。ネットとサブカルが好き。仕事はビジネスライクにこなす。
どうやら志田さんは、コミュニケーションの最初の一歩でつまずいてしまったようですね。いきなり部下の休日の趣味に踏み込んだうえ、「夏樹さん」と下の名前で呼んでいる。これでは、「児玉さん」の拒否感あふれる反応も当たり前です。
こんな話をしていると、「親しくない部下といきなり一対一で話すことなんてないよ!」と志田さんから文句が聞こえてきそうですね。ごもっともです。よほどコミュニケーション能力がない限り、仲良くしていない人と最初から会話を弾むことはありません。職場で気まずい雰囲気で一緒に仕事をしている分、もしかするとお客さまと話すときよりも大変かもしれません。「難しい」ことを自覚しながら、落ち着いて対策を考えましょう。
話題を探さなきゃ! と焦るその前に
最初からつまづかないために、志田さんの失敗を振り返ってみましょう。あまり交流がない部下に対し、急に距離を詰める話題、名前で呼びかけ……そう、距離感を間違えているのです。少しさみしいですが、まずは「部下はまだ心を開いてくれていない! 仕方ない!」と自覚することです。
ずっと前からやっていたかも? 1on1の話題探し
そのうえで、最初に話すことを準備しましょう。できる営業は新規の営業先に行くとき、「最初に何を話すか」を入念に考えるといわれます。「1on1」も同じです。
用意したいのは、「上司・部下共通の話題」です。よく「最近の流行」が良いといいますね。なにも思い当たらなければ、「天気」についてでもいいでしょう。
ぜひ活用してほしいのは、「部下の仕事内容」に関する話題です。部下の朝礼発表や業務報告に注目してみましょう。ヤフーの吉澤氏は、仕事はもちろん、部下の一つひとつの行動から話題を考えるべきとアドバイスしています(ダイヤモンドオンライン)。細かく「あのメールの文面は良くなかった」とお説教をするのではなく、「あのタイミングで報告してくれて、スムーズに会議で発表ができたよ」と、事実をもとに褒めながら話を進めるのがベストです。
避けたいのは、「踏み込みすぎる話題」です。志田さんが選んだ趣味や、仕事のミスは、親しくないうちから取り上げるものではありません。かといって、ある程度踏み込まなければいい1on1につながりにくいのも事実。踏み込む話題は、仲良くなった時のためにとっておきましょう。
部下を観察し、どの距離感まで踏み込むか。一対一の対話を成功させる準備は、もう始まっているのです。
- 最初は仲良くない! 当たり前のことを受け入れて入念な準備を
- 上司・部下共通の話題を、世の中や部下の仕事にアンテナを張って事前に探しておく
最後に二つだけ。「1on1」の冒頭では、時間を割いてくれた部下へのお礼を忘れずに。部下は「なぜ、仕事が忙しいのに上司と話さなきゃいけないの?」と思っているかもしれません。また、あなたが準備した話題にどれだけ思い入れがあっても、部下が話し出したら、会話の主導権は譲りましょう。部下の話したいことを丁寧に聞けるのが理想の上司です。
本当は、せっかくもらった部下との時間を部下の成長のために生かしてほしいのですが……。まずは目の前の部下となごやかに話せるようになりましょう。それだけでも十分大変かつ大事な仕事です。
次回に取り上げるのは、「1on1、上司側がずっと話しちゃった!」という、話題が見つからない人からすれば贅沢なお悩みです。
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参考書籍
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フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術
著者:中原淳
出版社:PHP研究所
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ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
著者:本間浩輔
出版社:ダイヤモンド社
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もう、その話し方では通じません。
著者:藤原和博
出版社: KADOKAWA
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!