アイデム人と仕事研究所 研究員 三宅 航太
現在、労働者全体に占める非正規社員(パート、アルバイト、派遣・契約社員など)の割合は約4割となっています。非正規社員は待遇や雇用の安定性など、さまざまな面から正社員との格差が指摘されており、是正が課題となっています。
一方、少子高齢化や景気の回復傾向などの影響で労働力の確保が難しくなる中、従業員の定着や採用力の向上を目指し、正社員と非正規社員の中間的な働き方を模索する企業が現れ始めています。その中間的な働き方と位置づけられるのが、限定正社員です。
2013年の新語・流行語大賞の候補にもなった限定正社員は、職務や勤務地、労働時間などの労働条件を限定し、企業と無期の雇用契約を結ぶ働き方です。ちなみに一般的な正社員の定義は無期雇用、フルタイム、直接雇用で、労働条件が限定されていない働き方です。
限定正社員は、安倍首相の経済政策「アベノミクス」の成長戦略の一つとして、規制改革会議の雇用ワーキング・グループで議論、検討されたものです。雇用制度の改革が議論される中、多様な働き方の実現に向けたモデルの一つでもあります。2013年に施行された改正労働契約法に対する役割も期待されています。同法の改正により、同じ職場で5年を超えて働く契約社員やパートが希望すれば、無期雇用に切り替えることが企業に義務付けられることになりました(「無期転換ルール」の導入)。その無期雇用の受け皿としても可能性を秘めています。
雇用区分 | 正社員 | 限定正社員 | 非正規社員高い |
---|---|---|---|
雇用期間 | 無期 | 無期 | 有期 |
労働条件(職務、勤務地、労働時間など) | 限定なし | いずれか、あるいは 複数に限定あり |
限定あり |
賃金水準 | 高 | ⇔ | 低 |
雇用保障 | 高 | ⇔ | 低 |
会社からの拘束 | 強 | ⇔ | 低 |
2015年9月、弊社が発行した平成27年版パートタイマー白書は、限定正社員をテーマにしました。調査結果からは、限定正社員のさまざまな現状や可能性が見えます。その取っ掛かりとして、二つの調査結果をご紹介します。
企業に、限定正社員の有無と導入の意向を聞きました(図1)。「限定正社員に該当する従業員がいる」と回答した企業は33.4%でした。「限定正社員に該当する従業員はいないが、会社のしくみ・制度上では就業可能である」は15.6%、「限定正社員に該当する従業員はおらず、会社のしくみ・制度上では就業不可能であるが、今後導入に興味がある(導入を検討している)」は13.5%となっています。
また、「限定正社員に該当する従業員はおらず、会社のしくみ・制度上も就業は不可能であり、導入に興味もない(今後の導入も検討していない)」は37.4%です。
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