派遣期間満了に備えて引抜き防止策を立てたい
当社は機械設計業の会社で特定労働派遣で人材を派遣しております。
この業界では派遣という言葉に馴染みの無い昔から「入り込み」と呼び、自社の社員をメーカーなどに入業させております。
当社は小規模な会社であり、仕事を確保するため2年半前に特労をとり、現在6名の派遣人員がおります。
昔の感覚で何年たっても当社の社員であり、政令26業種なので期間の定めも関係なかろうと思っておりました。
ところが先日派遣先より派遣法の遵守ということで勉強会の名のもとに派遣元企業が集められ、実質3年たったら、現在いる派遣社員は雇い入れの義務があるので声をかけますと宣言されました。
そこは慢性的な人員不足で十分な新人を集める力が有るとは言い難い企業です。
当社は人材を発掘し派遣できるまで育てるのに非常な労力を使い投資をしております。
不人気企業へ紹介予定派遣をするつもりで人材を提供している訳では有りません。
勉強会後に危機感を持ち状況を知るにつれ当社が余りに無防備であり、真っ先に社員が引抜かれてしまう企業であることが判りました。
以下現在の当社の状況を記載します。この状況で出来る引抜き防止策のアドバイスを頂ければ非常に助かります。
①就業規則には競業避止義務で2年以内の同業他社への転職は禁止している。
②特定労働派遣の登録しか持っておらず、紹介予定派遣も有料職業紹介業の許認可も持っていない。
③派遣契約書に雇用期間満了後の引抜き禁止の条件は一切記載していない。
④派遣契約書に逸失収益機会に対する保証料的な記載は一切していない。
⑤請負に切り替え出来る技量は無いし、指揮命令系統も成り立たない。
⑥先方は上場企業の100%子会社で、福利厚生や将来の安定性などから、一旦社員化の声掛けをされてしまうと、当社に社員が残る可能性は極めて低い。
⑦当社の社員は皆評価が高く、先方が狙いをつけて社員にするつもりなのが見え隠れする。
⑧派遣先企業には古くからの設計会社の集まり(○○会)がありそこの会員企業には声を掛けないという紳士協定が存在している。(当社はその会員企業ではない)
⑨つい先日2年半の契約が終わり、新たに2年半の契約書を交わした。(残念ながら社内のベテラン事務員が機械的に社印を押し無条件で提出してしまった。)
⑩09年1月で派遣後3年をむかえる。
このまま何の対策も講じずにいると、あと数ヶ月で当社の社員は半分になってしまいます。何卒良きアドバイスをお願い致します。
投稿日:2008/08/31 02:18 ID:QA-0013523
- *****さん
- 兵庫県/その他業種(企業規模 11~30人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
派遣先企業による正社員化への対応
■労働者派遣から派遣先の直接雇用へと移行を促進する目的で、派遣先企業は、いわゆる「26業務」を含め、派遣受入期間の制限のない業務についても、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けている場合において、当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該3年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければならないとされています。
■これは、派遣先企業にとっては、「追い風」でしょうが、真面目に派遣業務に取り組んでいる企業には物凄い「逆風」だとお察し致します。御社が無防備であったことは今更悔やんでも仕方のないことです。今後の企業存続のためのミラクル手段は見当たりませんが、平凡ながら、下記2点のオーソドックス措置をアドバイスしたいと思います。
■今回の派遣先のアクションでは、派遣契約の途中解約または終了、当該派遣労働者の派遣元会社からの退職、派遣先との雇用契約の締結という流れになると思います。派遣元会社としては、派遣業務の収益源をなくするわけですから、何らかの《移籍料を要求》する場合も少なからずあります。退職社員の再就職時については特別な法規制があるわけではありません。まずは、派遣先会社との話合いをお勧め致します。力(ちから)関係でどうなるか分かりませんが、フェアな精神が少しでもある派遣先なら可能性があるでしょう。
■次は、「人材を発掘し派遣できるまで育てるのに非常な労力と投資」を継続することです。10年前は、人材派遣大歓迎であった政府も、いまやコロリと正社員化促進に変りました。重苦しい世界不況の中で、正社員化の流れも若干変化しつつある気配も感じます。悪質派遣会社が消滅させられていく中で、真っ当な派遣業者に薄日が差してくるのではないかと思っています。その日に備えて、出来る限りの努力を期待致します。
投稿日:2008/09/01 21:36 ID:QA-0013538
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
派遣先企業による正社員化への対応 P2
かなり厳しい状況ですね。
■最初のご相談における、①~⑩ の契約条件、ないし状況では、手足がかなり縛られてしまっている感じがしますが、次の3点を抑えた上で、検討してみましょう。
▼派遣先の義務は「雇用契約の申込み」であって、先方説明の「雇い入れの義務」ではない。
▼「派遣労働者の希望」が最優先される。
▼派遣元による、派遣先への就職禁止規定は無効とされる。
① 雇用契約の申込み義務は強行規定(従わない場合には公表を含む罰則対象となる)ですので、「声掛けからの除外」は出来ないでしょう。本人の自主的判断と行為が優先されることを念頭に置きつつ、可能な範囲内での経済的措置を含めて、派遣先の申込みを辞退してもらう話合いしか方法はないものと思います。
② 途中解約の損害賠償額の相場と云うほど一般的なケースではなく、契約当事者間での交渉になります。派遣先のダメージが大きければ、当然、高額が要求されるでしょう。「評価が高く先方が狙いをつけて社員」ならば、話は更に、こじれるかも知れません。解約を必要とする妥当な理由も求めれ来るでしょう。今回のような環境では、感覚的に、派遣代金の数ヶ月分の覚悟が要るかも知れません。要は、容易な交渉ではないということです。
③「派遣労働者と派遣元との雇用関係が終了した後に派遣労働者が派遣先と雇用契約を締結した場合には、派遣先は派遣元に対して損害賠償を支払う」などの特約を派遣元と派遣先の労働者派遣契約に盛り込んでいても「派遣労働者が正社員として雇用されることを阻害する」ので効力を持たないとする意見があります。
正社員化の大合唱の下では、分の悪さは否定できませんが、正当な理由なくして失うことになる派遣業務の収益源補填としての移籍料要求は、「業として、反復して」行う行為ではないので、紹介業の許認可条件の対象とならないでしょう。当事者間で合意が必要、且つ十分な条件だと思います。派遣先の反応が気になるところです。
投稿日:2008/09/02 13:20 ID:QA-0013543
相談者より
大変ありがとうございました。
色々と一人で考えておりましたので、随分と精神的に楽になりました。
まずは、誠意を持って派遣先と話し合いをするという方向で考えます。
後は、当社社員に残ってもらう為の魅力の打ち出しについて考えて見ます。
不安定な雇用形態を安定させる為の正社員化の流れは十分理解出来ますが、長期出張の延長のようなこの業界の派遣については3年での雇い入れは期間として短く、何よりも特労は社員としての身分もしっかりしているはずですので、現在の法律は粗削りな感が否めません。
また、機会が御座いましたらどうぞ宜しくお願いいたします。
有難う御座いました。
投稿日:2008/09/02 21:26 ID:QA-0035388大変参考になった
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