「世の中になくてはならない企業」をつくりたい
人材教育と紹介で、就職ポテンシャル層と企業の可能性を拓く
株式会社ジェイック 代表取締役
佐藤 剛志さん
氷河期世代フリーターと接し、可能性を確信する
現在、貴社で力を入れている事業は何でしょうか。
就職がスムーズにいっていない若者の就職支援サービスです。「就職カレッジ®」「セカンドカレッジ®」では、フリーターや大学中退の若者たちが内定を勝ち取り、正社員として活躍できるようにお手伝いをしています。このほか、女性をターゲットとした「女子カレッジ®」や、大学と連携して4年生の支援をする「新卒カレッジ®」、独自開発の診断ツールで人材と企業をマッチングさせるFutureFinder(フューチャー・ファインダー)メディア事業も展開しています。
また社員教育事業としては、世界的ベストセラーの『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)や、目標達成手法として注目されている「原田メソッド」の研修ライセンシーとして、全国の中堅中小企業に研修を提供しています。さらに、次世代リーダーに学びの場を提供する「リーダーカレッジ」なども手がけています。
フリーターや大学中退者を対象とした事業は、どのような思いで始められたのでしょうか。
きっかけは2004年。ハローワークの事業を受託し、一都六県で年間14万人を相手にセミナーなどを行っていました。当時は就職氷河期と言われ、若年層の失業率が社会問題化していた時代です。そこで多くのフリーターと話をする機会がありました
驚いたのは、意欲的な人が非常に多く、態度もきちんとしていたことでした。高学歴の人や留学経験のある人もいます。私は「彼らなら、絶対に正社員として就職できる」と確信しました。しかしその一方で、彼らの話には、「私なんて」といった言葉も目立つ。「自信をなくしている」ことに気づいたんです。
若いときは自信をつけるのも早いですが、失うのもあっという間です。大学まで順調に進んできた彼らも、就活に失敗したり、一度レールを外れたりすると、たちまち心が折れたり、不安になったりします。本来、若い人たちにはいくらでも可能性があるのに、そう思えなくなってしまうのです。
私は彼らに、「そんなことはないんだよ」と言いたいのです。自己イメージを変えてあげれば、彼らは絶対に社会に出て活躍することができる。そう考え、「営業カレッジ®」(現在の就職カレッジ®)のプログラムを作りました。
現在行われている就職カレッジ®は、どのようなプログラムなのでしょうか。
5日間のプログラムで、基本的なビジネススキルやビジネスマナーを学ぶ講座や、面接対策などを無料で行っています。さらに毎日プレゼンをして、講師からフィードバックを受けるカリキュラムも取り入れています。
プレゼンでは、自己紹介と絡めて、自分がなぜフリーターをしているのか、大学を中退したのか、これからの人生をどう描いていくのかといったことを話してもらいます。自己を振り返り、自分について相手に伝えることを体感してもらうのです。
5日間で驚くほどのスキルが身につくわけではありません。でも、プログラムが終わるころには、参加者たちの表情も面接の態度もまったく変わってきます。「営業だけはやりたくない」と言っていた人が、5日目には「自分は営業に向いているかもしれません」なんて言うようになることもありました(笑)
心が変わるということは、それだけ大きな影響を生むんですよね。5日間の体験は彼らにとって小さなステップかもしれませんが、ひとたび「自分は変われる、成長できる」という実感を得られると、就活はもちろん、人生そのものに対して前向きになります。実際、私は就職カレッジ®を終えて就職を勝ち取り、人生が変わっていく若者を何人も見てきました。
また、既卒者や中退者の就職活動は「仲間がいない」という課題があります。就職カレッジ®に参加すれば同じ境遇の人がたくさんいるので、本音を言い合える仲間ができて、一緒に面接の練習をしたり、励まし合ったりすることができます。
就職する企業の紹介はどのように行うのですか?
5日間の研修のあとに、卒業生と企業をつなげる場として集団面接会を用意しています。約20社の企業にお集まりいただき、卒業生が順番に各テーブルをまわって面接を受ける仕組みです。人材側にとっても企業側にとっても、総当たりの面接会ですね。その時々で人数は変わりますが、企業は一度に20人程度の人材と出会うことができます。
企業からは、「ジェイックのプログラムを卒業した人材」に対する信頼をいただいていると感じます。なかには、プログラムの卒業生をこれまでに累計で300人以上も採用してくださっている企業もありますし、ジェイックを通じて採用された社員が、その後社長に抜てきされたケースもありました。
そもそも、5日間とはいえ自主的に就職カレッジ®に参加する時点で、その人たちは真面目なんです。深夜のアルバイトがある人でも、毎朝9時30分に集まって講義を受けるわけですから。求人サイトなどで不特定多数から募集するよりも、見込みのある人材と出会えるので、企業から評価をいただいているのだと思います。
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。