第90回 エイベックス株式会社
ベンチャーに負けない、スピードとイノベーションを。
創業30年、エイベックスが目指す構造改革とは?
エイベックス株式会社 グループ執行役員 CEO直轄本部 本部長
加藤 信介さん
成功の秘訣は「トップダウン」に尽きる
仕組みを変えたとしても、一人ひとりのマインドを変えるのはそうたやすいことではないと思います。チャレンジを賞賛する空気をつくったことを振り返ってみて「これはよかった!」と思えることはありますか。
改革にあたり、さまざまな施策を試しました。そのすべてに一貫していたのは、「トップダウン」で実施したことです。トップのコミットなしに、ボトムアップだけでは、大規模な改革は成立しませんでした。
「WHY」、つまり何のためにやるのかを伝え続け、全ての施策「HOW」がこの目標にひもづいている。「だから皆も付いてきてほしい」ということをトップの松浦がまずコミットし、未来のためにこの構造改革をやりきるんだと社内外に対して発信し続けたことが、今見え始めている成果につながっているのだと思います。「思いに賛同できない、変化が受け入れられない人は、辞めていただいて結構です」というメッセージも出しました。強い言葉でしたが、そうすることで「トップも本気なんだ」ということを示したのです。
改革を行う中で、全ての社員の賛成を得ながら進めていくことは困難です。トップや経営ボードメンバーが一枚岩で改革にコミットしてくれていなければ、会社にとっての成功だと信じている施策を、進めていくことは難しかったと思います。
もちろん、改革はこれで終わりではありません。現在、エイベックスの社員は1800名。全員がスピード感を持って動くのは、まだまだ難しいと感じています。そのため、まずは「あるべき姿」を、CEO直轄本部が見せられたらいいなと思っています。スタートアップのようにどんどん挑戦し、失敗しながらPDCAを回していく。そんなテストケースの組織が、社内にあってもいいと思うんです。そこでうまく行ったことを会社全体に広げていきたいですね。
目指すは、“全員フリーランス”な集団
この7月、大規模な人事ローテーションを実施されたそうですね。
弊社では「人材開発会議」というかたちで、次世代リーダーとなりうる人材を発掘し、抜擢することや、また一部の選出された人材だけでなくこれを全社員に広げ、一人ひとりの希望や能力を見える化し、それに基づいた配置をしたいと、かねてから考えていました。これが、改革の中で1on1などの人事制度を導入した理由の一つでもあります。
面談を通じて聞いた本人の希望や、勤続年数や評価など、さまざまな要素を加味しながら、7月には第1回のローテーションを実施しました。若手のマネジメント層への抜擢やグループ会社をまたいだ大きな異動が実現しました。
これまでの「この人は優秀だからこの部署にいさせたい」という考え方ではなく、より個人の能力を最大化させる配置を実現する。そのためには、一人ひとりの能力や想いを把握しなければなりません。人事はもちろん、マネジメント層などからの協力があったからこそ、それを実現できました。当然、一度で終わりではなく、ローテーションを回しながら理想の組織に近づいていこうと考えています。
最後に、エイベックスが目指しているのはどのような集団でしょうか。
「全員フリーランス」といえるようなあり方が、究極のかたちだと思っています。それぞれが好きなことに情熱を燃やすことで、会社全体も良い方向に向かっていく状態です。自分の叶えたいことを実現するために、エイベックスという「箱」に社員が集う。エイベックスは、それを実現するリソースを提供します。社員もエイベックスに集う意味をよく考えて、自分の役割にコミットする。そうして、一人ひとりが叶えたいことを追及するうちに、社員自身も組織も成長していくことが理想です。