株式会社リクルートホールディングス:
働く場所を従業員自らが選ぶ「リモートワーク」
働き方の選択肢を増やすことが、
個人の能力発揮と会社の成長につながる
(後編)[前編を読む]
株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 室長 林 宏昌さん
「サイバーオフィス」の実現に必要なこと
「働き方変革プロジェクト」をスタートして、1年近く経ちました。社内の反応など、何か変化はありましたか。
まず、働き方を変革することが「普通」になりました。最初の頃は、「新しく、リモートワークをやるぞ!」という感じでしたが、これが常態化してきた結果、「リモートワーク」のない働き方は考えられなくなったのです。正直、やる前は「賛否両論」がありましたが、今では逆に、「リモートワーク」をもっとうまく活用するにはどうすればいいのか、これを使って次に自分はどんな新しいことにチャレンジするか、といったことを考えるようになってきました。施策の是非に関する議論から、具体的にどう活用するかというフェーズに移ってきています。
現時点で「リモートワーク」を導入しているのはリクルートホールディングス、リクルートアドミニストレーション、リクルートマーケティングパートナーズ、リクルート住まいカンパニーの4社で、適用人数は約3000人に達しています。この他、リクルートジョブズなど何社かが実証実験レベルを行っていて、今後はリクルートグループ全体に展開していく考えです。ただ企業ごとに「働き方変革」に対する考えがあるので、「リモートワーク」はあくまでその選択肢の一つとして捉えています。何から、どのような形で「働き方変革」を進めていくかは、各企業によって異なると思います。
次のフェーズでは、どのような展開を考えていらっしゃいますか。
次に目指しているのは、あらゆる業務を「オンライン」でできるようにするためのオフィス環境の構築です。私はこれを「サイバーオフィス」と呼んでいます。その際、「テレビ会議の仕組み」「チャットのツール」、そしてどこからもファイルにアクセスできる「クラウドのストレージ」の三つが重要だと考えています。この三つがあれば、情報共有と意思決定が迅速に進むことは間違いありません。
この環境を実現するためには、二つのポイントがあります。一つ目は、あらゆる情報がクラウドにアップされ、検索できるようにすること。例えば、これまでは一人ひとりがノートPCを持っているので、その中に情報が個別に存在していました。必要な情報があるとき、おそらくその情報を持っているであろう人のところに行って聞いてみて、実際に情報を持っていたらメールで送ってもらう、というようなやり方をしていますが、変化のスピードがどんどん速くなっている今のビジネス環境において、これでは遅すぎます。今後は、こういったことに関する検索の強化を進めていく考えです。
二つ目は、コミュニケーションのあり方を多様化させること。例えば、現時点ではメールの返信に時間がかかっていますが、もっと効率的、合理的に行う必要があります。会社組織ですから、対面のコミュニケーションは大切にしつつも、目的に合わせて、テレビ会議やチャット、メールなどをうまく使い分けていかなければなりません。個人的には、チャットがコミュニケーションを図る上で面白い存在になると考えています。実際、チャットをうまく使うようになると、会議の回数が減り、会議のための資料作成に関する作業や手間も省くことができます。少なくとも私の組織では、このことを強く実感しています。
オンラインをうまく使えば、結果的に場所の制約は徐々に無くなっていくことでしょう。オフィス内で仕事の話をする場合、対面よりもチャットで行った方がいいケースもあるからです。その場に居合わせた人だけで決めてしまうのであれば、十分に議論されたとは言えません。それよりもチャットに話題を投げて、皆がオンラインで話し合いを進めていくことができれば、議論の中身はより良いものとなっていくでしょう。参加者全員の納得感も高まります。チャットだと全員が参加でき、意思決定が的確に行われ、判断が早くなると実感しています。グローバルな場だと、よりその効果は大きくなると思います。