経営からの高い評価でメンバーも成長を強く実感
最終報告会の後、経営からはどのような評価・フィードバックを受けましたか。
古西:経営への提言が終わった時、社長が開口一番「本当に素晴らしい。期待していた以上の内容だ」と絶賛してくれました。特に、当社の8割以上を占める実務職がこんなにもやる気があることを知り、とてもうれしいと言っていました。社長自身、女性活躍推進の本質が提言の中にあることを理解し、だからこそ実務職がもっと活躍できるような職場環境にしなければならない、ということを強く認識したようです。
また、提言内容が素晴らしかったので、経営陣への提言だけで終わらせるのではなく、この内容を「冊子」にして社内に広めていこう、「ダイバーシティ強調月間」を実施しようと、その場で言ってくれました。あまりの決断の速さに、周囲の役員をはじめ、皆が驚いていたほどです。そこですぐ「冊子」を制作し、12月に「ダイバーシティ強調月間」を設定。各職場でダイバーシティとワークライフバランスについて意見交換をしてもらうことにしました。
プロジェクトメンバーの方々は、この1年間をどのように感じていらっしゃるのでしょうか。
佐藤:当初は、「これは研修なのか、プロジェクトなのか」「そもそもこの活動は何になるのか、本当に会社は変わるのか」といった疑問の声も聞かれました。また、“やらされ感”や日常業務との両立、周囲の理解にも不安もあったようです。そういったメンバーに対し、、事務局の岡田課長(現在ダイヤプラスフィルム社)は、個別に話をじっくりと聞き、メンバーの気持ちに寄り添いました。また、一緒に頑張ろうと常に言い続けてくれたことが、メンバーのプロジェクトに対するモチベーションアップにつながったように思います。本当にいろいろなことがありましたが、今回のプロジェクト経験について、メンバーからは次のような声を聞いています。
【プロジェクトを進めていく中で印象に残っていること】
会社への理解が深まったことです。育児や介護の規約については知らないことが多く、また上司や自分とは異なる部署・ポジションからの視点は見えている世界がまるで異なることなど、多くの知見を得ました。新しい視点からながめ、分析していく中で、中盤は迷いや距離を置きたい気持ちなどもありましたが、最終的にはやっぱりいい会社だ、これからもっと良くなれる、との思いにたどり着いたことが、印象深く残っています。
初めは自信がなかったり、物事を成し遂げることが難しいと考えがちであったメンバーが、プロジェクトの中でいろいろ考えを重ねていくうちに積極的思考に変わっていくことができたことです。
提言の前日に、みんなで深夜までプレゼン内容を練ったことが印象に残っています。時間的にもギリギリ、精神状態もギリギリの中、みんなでプレゼンの内容を練り、リハーサルを繰り返したことで、一体感が生まれたように思います。また、アンケート、企業訪問を実施したことも印象的でした。アンケートを作成する際、一つひとつの設問に対し、目的や仮定を設定するのには本当に苦労しました。企業訪問では他社の活動内容を知りたいと思いつつも、どのように訪問したらいいのか、何を伺えばいいのか、わからないことばかりで行動に移せない期間が長かったように思います。実施するのにはエネルギーが必要だったアンケートと企業訪問、この二つが自分たちの言いたいことの裏づけ材料となって、プレゼンに説得力がうまれたと思います。エクセルに長けている人、コミュニケーションが得意な人など、メンバーそれぞれの得意分野をよく活かせることができた活動だったと思います。
同じ会社でも、地域差を含め、職場によっては、別会社ではないかと思うくらい環境が違います。職場環境が違うとはいえども、どの職場でも上司がキーパーソンということがわかり(そのためキラボスの提言)、女性活躍推進を進める上では、女性自身、上司の双方の意識改革が必要不可欠であるとあらためて感じました。意識を変える上で、まずは職場(上司、部下)のコミュニケーションが重要であり、よりコミュニケーションをとれる仕組みづくりが大事(キャリア面談実施の提言)だと感じました。
第1回目の全体ミーティングでは、決してメンバー全員のベクトルが合っているとは言える状態ではなかったと思います。しかし、一つの目標に向って徐々にベクトルが合い、提言に向って、活発な討議を進められました。1年間、全体ミーティング以外にもチームに分かれてメンバーと討議を重ねましたが、なかなか答えが見つからずにもがき苦しんだ日々や、提言前日の夜中までの打ち合わせ、提言当日のメンバーの結束、提言最後のSさんの涙の提言が印象に残っています。
毎回毎回疲れ切ってしまうほど頭を使って考えて議論しましたが、そんな機会はなかなかないと思います。
【プロジェクトに参加して、よかったと思っていること】
人とのつながりが広がったことです。このプロジェクト無しにメンバーと知り合うことは無かったと思います。深く話し合ったこのメンバーを大切に、ずっとつながり続けたいと願っています。
今まさに会社が女性活用を考えて変わろうとしている瞬間に立ち会えたことです。
クリティカルシンキングや、MECE、アサーション、ジョハリの窓など、これからの人生に必要なスキルを学ぶことができました。これらの知識を知っているのと知らないのとでは、仕事はもちろん、生きていく上でも全く結果が異なると思います。自分の意見を言って、相手の意見を聞いて、一つの方向にまとめていく。三菱樹脂では特に女性がこういった経験をすることが少ないので、プロジェクトを通してとことん経験することができてとてもよかったです。
「みらキラプロジェクト」を進める上で、女性社員の意見を直接聞くことも多々ありましたが、思った以上に女性陣はやる気がある、仕事の幅を広げたいと思っていることがわかって良かったです。また、この活動を通して、人生は人によってさまざまで、何が幸せと思うかは人それぞれであることを実感しました。
プロジェクトに参加して良かったのは、普段仕事ではなかなか接する機会のない職場・年代のメンバーに出会えたこと、会社に対してより興味を持てるようになったこと、同じ女性でも、年齢やバックグランド、経験や置かれた状況によって、さまざまな考え方があり、正解も不正解もないということを改めて気付かされたことです。今まで、さまざまな人がいていろいろな考え方があることを、自分はちゃんと理解していると思っていましたが、そこはやはり人間で、実際は、頭で考えることと心で感じることで(自分の中で)折り合いをつけるのが難しい部分もありました。ダイバーシティの活動(議論)を通して、同じ女性同士でもこれだけ違うのだから、さらに広く捉えたら、違って当たり前だと考えた方がいいと最後は思うようになりました。この考え方は私にとって大きな気づきで、今後、会社人生だけでなくいろんな場面で助けられると思います。もっと広い視野で物事を捉えられるようになれば、と思っています。
このプロジェクトに参加しなければ出会えなかった、大勢の方に出会うことができました。メンバーに刺激をもらって、自己成長にもつながったと思います。入社以来、長年思っていたことを経営幹部に伝えることができたり、カゴメのAさん、北海道支店のI支社長、常務から貴重な体験談をうかがうこともできました。ファシリテーターのTさんの講義を聞き、クリティカルシンキング、パーソナルスタイルなどの研修を受けられたことも良かったです。
プロジェクトに参加して良かったと思うのは、メンバーの皆ととことん議論できたことや、自分が知らない会社の現状を目の当りにできたことです。最初は自分の思いばかり先行していたけれど、ロジックツリーやMECEなどを意識することによって、ロジカルにそして客観的に考えられるようになりました。とにかく大変だったけれど、妥協せずに必死に取り組むことによって達成感を得ることができました。
【その他】
現場の実態はまだまだ厳しいと思っています。互いに理解しあおう、がんばって会社を良くしよう、という前向きな志向を持てる会社・職場になってほしいと願っています。
本当にこれから、男性が普通に会議で行っている「自分の意見を言って、相手の意見を聞いて、一つの方向にまとめる」ということを、女性みんなができるような会社になってほしいです。
活動が始まった当初は、その内容にセミナー的要素を感じてしまい、疑問に感じたり反抗的になったりしましたが、活動終了後、業務で資料を作成する際に、「みらキラ」で実施してきた内容が、自分の身になっていると感じました。資料の組み立て方など、ダイバーシティの活動を通し、多くのことを学んだと感じていて、今は感謝しています。よく言われることですが、無駄な経験はひとつもないと思います。
このメンバーに選んでいただいたことに感謝しています。プロジェクトメンバーとの出会いは、私にとって宝です。全社員を対象にアンケートを取り、その分析も行っての提言ではありましたが、工場で働く社員の気持ちをどれだけ取り込めただろうか、と実は少し不完全燃焼ではあります。これからも機会があれば、何かの形で関わっていけたらと思っています。
とにかく今振り返ると、よく通常の仕事と両立できたなぁとしみじみ感じます。その原動力はこの会社で働く女性がイキイキと働けるための貴重なチャンスなので、絶対無駄にできないと思う気持ちだと思います。それはきっとメンバー全員が同じだったのでは。プロジェクトは終わっても、自分なりの思いはまだ続いてます。