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となりの人事部
日本の人事部「HRアワード2015」受賞者インタビュー
第67回SCSK株式会社

やるだけでなく、やりきる仕組み
“働き方改革”でIT業界の常識を覆す
SCSKの「スマートワーク・チャレンジ」とは(前編)
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執行役員 人事グループ副グループ長 河辺 恵理さん
2016/01/07
河辺恵理さん
株SCSK株式会社 執行役員 人事グループ副グループ長
かつては時代の先端で輝いていたIT業界も、近年はイメージの悪化で逆風にさらされています。最大の問題は長時間労働でしょう。深夜にまで及ぶ残業や休日出勤は当たり前、仕事によっては客先に常駐し、交代制で24時間、システムの監視にあたらなければなりません。そんな業界で“平均月間残業時間20時間、有給休暇取得率100%”を目指し、すでにその目標をほぼ達成しているのが、日本の人事部「HRアワード2015」で企業人事部門最優秀賞を受賞したSCSK株式会社です。月間残業時間が20時間といえば、1日1時間以下。奇跡のような数字を、同社はなぜクリアできたのか。受賞対象となった「スマートワーク・チャレンジ」を中心とする働き方改革の取り組みは、どのようにして進められたのか。同社執行役員で人事グループ副グループ長の河辺恵理さんにじっくりとうかがいました。
プロフィール
河辺恵理さん プロフィール写真
河辺恵理さん
SCSK株式会社 執行役員 人事グループ 副グループ長
かわなべ・えり●1986年、住商コンピューターサービス株式会社(現SCSK株式会社)入社。 流通業界、金融業界を中心とした大企業向けのシステム開発、営業、プロジェクトマネージャー、海外パッケージソフトの日本導入などを担当。ライン職を歴任。 2006年4月より社内「女性活躍プロジェクト」へリーダーとして参画。 2013年4月より人事グループ 人材開発部長として全社の人材育成を担当。 2014年4月より同社初の女性執行役員として人事グループ 副グループ長就任、現職。 同社の目指す「働きやすい やりがいのある会社」づくりを担当する。ダイバーシティ・女性活躍、ワークライフバランス、人材開発・キャリア支援、健康経営などのさまざまな施策を推進。

夜遅くまでいる社員、休まない社員を“いい社員”とする風潮

―― 最優秀賞受賞、おめでとうございます。先日の表彰式では、「何よりうれしいのは、会社全体において、以前よりも活力と明るさが増したことです」という、河辺さんの受賞コメントが印象的でした。その“以前”の状況から、まずお話しいただけますか。

SCSKは2011年の合併を機に「夢ある未来を、共に創る」という経営理念のもと、「人を大切にします」との約束を掲げ、「働きやすい、やりがいのある会社」づくりを追求してきました。裏を返せば、以前は必ずしもそうではなかった、ということです。ご存知のように、IT業界、特に私たちのようなシステムインテグレーターの業界は、男性も女性も、営業職も技術職も、とにかく残業や休日出勤が多い。弊社も以前はご多聞に漏れず、長時間労働が常態化していました。その原因はやはり、IT人材の仕事の特性によるところが大きいです。システムは24時間365日稼働でということで、夜間の問い合わせや作業依頼にも、基本的に対応しなければなりません。そうなると、結果として「夜遅くまでいる社員」「休まない社員」が「良い社員」と思われ、ますます帰りづらく、休みづらくなってしまう。徹夜や会社に寝泊まりしている人もいましたが、私自身も旧住商情報システム(SCS)に入社して以来、ずっとそういう環境で働いてきたので、それが当たり前だと思っていました。弊社だけでなく、業界全体にそういう固定観念があります。そしてもう一つ、IT業界では、優秀な技術者ほど難しい仕事を独りで抱え込んでしまうため、ジョブローテーションやワークシェアが難しく、休めません。この“独り抱え”の習慣も深刻な問題でした。

―― 以前はそれが当たり前だったということですが、危機感を持ったきっかけは何ですか。

09年にトップの中井戸(信英会長)が親会社の住友商事から合併前の住商情報システムに、会長兼社長として赴任しました。当時はまだ、晴海の手狭な旧オフィスで、省エネで消灯するお昼の休憩時間には、みんな自席に突っ伏して寝ていました。疲労していたと思います。しかもその机の幅が90センチと狭かった。中井戸はそれを見て、着任するや否や、強い危機感に駆られたそうです。「この労働環境はありえない。インテリジェンスとはかけ離れている」と。それが、すべての始まりでした。

―― トップ自らが、業界の“常識”に異を唱えられたわけですね。

はい。これは「抜本的な取り組みが必要だ」と考え、中井戸が打ち出したのが、「仕事の質を高める働き方の改革」というテーマでした。つまり、夜遅くまでへとへとになって行う仕事が、本当にいい仕事なのか。そういう量や面積だけの働き方は、もうやめようということでした。社員が心身の健康を保ち、仕事にやりがいを持ち、最高のパフォーマンスを発揮してこそ、お客さまの喜びと感動につながる最高のサービスができる――取り組むべき改革は、単に残業削減や有休取得の量的成果を追うのではなく、お客さまに最高のサービスをするための新しい働き方を創り出すこと、というのが中井戸の強い思いです。

―― とはいえ、多くの企業で、経営陣がいくら旗を振っても働き方改革が進まないのは、長時間労働で疲弊しているはずの現場の社員自身が、それを止めたくないからだ、という事情もあります。

弊社でも当初、「残業を減らすと収入が減る」という懸念を持つ社員がいました。そこで中井戸は、削減した残業代分の原資を、すべてインセンティブ(特別ボーナス)の形で社員に還元することに決めたのです。よく残業削減を人件費抑制の問題と捉える企業がありますが、そもそも弊社の働き方改革の目的はそこにはありません。残業代を還元するという決断は、改革にかけるトップの姿勢や覚悟を社員の心に響かせる意味でも、大きな効果があったと思います。また、一部の役員からは「残業を減らすと業績に影響が出る」との声もあがりましたが、中井戸が「業績の悪化も覚悟する。そうしてでもやらなければいけない。将来、必ず回復していく」とまで言い、改革の歯車が回り出しました。


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2件中 12件を表示

1. *****さん 化学 東京都
所期の目標の一つである、「業績向上(一時的に下がっても、将来は伸びる)」は達成できたのでしょうか?
2. がびさんさん 医薬品 福島県
ありがとうございます。
とても参考になりました。

「困難な目標に挑まなければ具体的な行動変革につながらない」
と、目標を厳しくしたことは効果的だったと思います。

これはビジョンを掲げることと同じです。その目標が価値を持っていないと、その目標までたどり着く意味が見いだせません。その目標:月間20時間、だからヤル気にもなるわけです(→1日1時間1!?スゴい!それならこんな生活になる。楽しみ)

それから、なんとなく残業が減るのを待つようなやり方ではなく、トップが率先してやる、やり方にも上記のように(それがダメだと思えば)積極的に関わるようでないとダメですね。


なんとなくやっていると、とても困難な時短の推進。
でも本気で取り組めばそれができる、ということを教えてもらいました。

唱えるだけじゃダメです!

本気度を見せて、そのために変えるところを変えなくちゃ!

ありがとうございました。

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