野村證券株式会社:
多様性に優先順位をつけない!
野村證券の“草の根”発「ダイバーシティ&インクルージョン」の取り組みとは(後編)[前編を読む]
野村證券株式会社 人材開発部 エグゼクティブ・ディレクター タレントマネジメント・ジャパンヘッド 兼 ダイバーシティ&インクルージョン・ジャパンヘッド
東 由紀さん
「アライになろう」――92.4%の非当事者にできること
「アライ」とは、英語のally(同盟、支援)が語源で、当事者ではないけれど、LGBTを理解し、自分にできることは何かを考えて実行する支援者のことです。LGBTは人口の7.6%と言われています(電通ダイバーシティ・ラボ「LGBT調査2015」より)。約13人に一人というマイノリティーですから、当事者だけが頑張っても、LGBTが働きやすい職場環境をつくることはできません。そもそも職場で当事者がカミングアウトすることには、大きなリスクも伴います。むしろ当事者ではない92.4%がアライになることこそが、職場を変えていく大きな力になる。そうした発想から、MCVでは現在、「アライになろう!」をスローガンに掲げ、活動を通して社内にアライを増やすことを最大の目標にしています。
当事者でないから何もできないのではなく、当事者でないからこそできること、すべきことがある、というわけですね。
そのとおりです。かつては当事者がネットワークの中心でしたが、現在はアライが中心になって活動しているので、弊社ではLGBTにアライのAを加えて「LGBTA」と表記しています。具体的には、LGBTに関するイベントへの参加・協賛、社員食堂に当事者への理解を促すパンフレットや、アライであることを表明する虹色の卓上コーン、ダイバーシティ&インクルージョンのバナーを設置するなどの啓蒙活動を展開しています。
それから、(‘I am an LGBT Ally’と記された小さなステッカーを取り出して)これも。このステッカーを社員に配り、自席のパソコンに貼るように呼びかけています。アライの見える化ですね。「うちの職場にLGBTはいない」と思っても、統計上 13人に一人はいるわけですから、本当は周囲に伝えたくても誰に伝えればいいかわからず、隠しているのかもしれません。そうした当事者が、同僚の PCにアライステッカーが貼ってあるのを見たら、どれほど安心するか。現に、当事者の社員からは「社内で相談できる相手が見つかってよかった」という声も寄せられています。