“300年以上成長し続ける企業”を目指す
ソフトバンクグループの人材育成戦略(前編)
ソフトバンクグループでは、次の30年そしてさらなる300年に向けて、「世界の人々から最も必要とされる企業グループを目指す」というビジョンを掲げ、事業戦略を推進しています。そのビジョンは、人材育成においても大変重要ですが、グループ全体で7万人を超える多様な人材がその強みを発揮し、スピード感を持って成長し、事業に貢献していくようにするには、どうすればいいのでしょうか。また、グループ独自の文化を将来に渡ってどのように継承していけばいいのでしょうか――。ソフトバンクグループでは、「ソフトバンクユニバーシティ認定講師(ICI)制度」など、研修を内製化する取り組みを行うことでも、それらの課題に対応していこうとしています。研修の内製化に至った背景や経緯、具体的な取り組み内容や今後の課題などについて、人材開発部のお二人に詳しいお話を伺いました。
- 武田健佑さん
- ソフトバンクモバイル株式会社、ソフトバンクテレコム株式会社、ソフトバンクBB株式会社、ワイモバイル株式会社 人事本部 人材開発部 人材開発2課 課長
たけだ・けんすけ ● 2002年入社。営業を経験後、08年より現職。「ソフトバンクユニバーシティ認定講師(ICI)制度」や「知恵マルシェ」の運営責任者。ソフトバンクユニバーシティやICI制度の立ち上げを経て、後継者育成機関であるソフトバンクアカデミアの運営にも参画。ソフトバンクグループ社員の「知恵と知識の共有を推進する」ことを目的に、各種取組みを強化している。
- 島村公俊さん
- ソフトバンクモバイル株式会社、ソフトバンクテレコム株式会社、ソフトバンクBB株式会社、ワイモバイル株式会社 人事本部 人材開発部 人材開発2課
しまむら・きみとし ● 2005年入社。営業を経験後、08年より現職。ソフトバンクユニバーシティの立ち上げに参画し、プログラム開発、社内講師の育成体系作りに従事。約100名の社内講師陣の育成を担当する。累計登壇回数700回以上、受講者数1万7千人以上の登壇実績。最近では、東北の高校生の人材育成を支援するワークショップ企画・実施にも従事している。
ソフトバンクグループにおける人材育成面での「課題」とは?
ソフトバンクグループでは、人材育成、能力開発に関してどのような「課題」がありますか。また、グループにおける人材の「強み」とは何ですか。
武田: ソフトバンクグループは、300年後の社会やテクノロジーのあり方をイメージし、300年成長し続ける企業を目指すことを「新30年ビジョン」の中で謳っています。30年を一つのスパンとしてとらえていますが、30年後に世界で最も必要とされて、時価総額200兆円・5000社のグループになるためには、どうすればいいのか。また、その時点での人材育成や人材開発のあり方を見据えて、今何をすればいいのか。他には前例がないので私たちが作っていかなければなりませんが、それが一番の課題であり、悩ましい部分でもあります。
30年ビジョンを考える際もそうでしたが、実際に300年続いた国家、それを成し遂げた偉人などを調べて、何かヒントになるものがないか、いろいろとベンチマークしながら構想を練ることもあります。一方で足元を見れば、他にも成長し続けている企業があります。いったい、それらの企業ではどんな取り組みを行っているのか、そういったものも参考にしながら、いろいろと模索している最中です。もちろん、業種・業態や社内カルチャーが違いますから、そのまま適応できるわけではありません。しかし、変化の激しい時代を乗り越えていくためには、ありとあらゆることを想定し、その中でいろいろな“構え”を用意しておくことが、一つのポイントになると思っています。
島村: ソフトバンクグループには、「多様な人材」がいるという「強み」があります。あらゆる分野で突出した経歴を持つ人が多くいます。私たちは、常に、No.1にこだわり、挑戦し続けているのですが、このこと自体も「強み」だと思っています。
そうした中で、ソフトバンクグループの人材および人材育成について、どのような思いやお考えがありますか。
武田: 今申し上げたように、ソフトバンクグループの特徴の一つは、人材の「多様性」だと私は思います。グループ全体で1000社以上、7万人を超える従業員がいます。このボリューム感はとても重要だと思います。これだけの人材がいれば、能力の高い人材や、いろいろな知識・経験、ノウハウを持った人材が数多く存在します。個々の知識・経験、ノウハウをどう成長させ開花させていくのか、また、それを事業の成長へとどのように結び付けていくのか――。とても重要なことですが、そのためには人材の発掘や育成が大きなポイントになります。そこで私たち人材開発部では、教育・研修もミッションの一つとして行っています。もちろん、研修が必ずしもその中心にあるのではなく、いろいろな考え方、やり方がある中の一つの手段だと思っています。
多様性とは、人材の「強み」「弱み」を考えた場合、表裏一体かもしれません。社員一人ひとりを考えたら、「強み」もあれば「弱み」もあります。グループにもいろいろな会社があって、それぞれカルチャーが違います。当然のことですが、いろいろな人材もいる。では、それを一つにまとめる必要があるのか、あるいはそれぞれ違っていていいのか。このことにも今、悩んでいます。例えば、一人ひとりがあまりにバラバラだと、「弱み」に振れることがあるかもしれません。しかし、中央集権的に無理に一つにまとめると、今度はまた違う「弱み」となってしまうこともあります。
島村: 人材育成の基本は、社内の人間が社内の人間へ教え、伝えることだと考えます。その前提には、教えられるのを待つのではなく、自ら取りに行く姿勢が前提にあります。
教育はOJTが基本だと思いますが、非常に忙しい昨今では、常に上司や先輩がそばにいるとは限りません。そういう時に、自ら学習して状況を打破しようとする前向きな社員に、off-JTの場を通じてさまざまな学習機会を用意しておくことはとても大切だと考えています。また、ライフスタイルに合わせ、集合研修だけでなく、モバイルでいつでもどこでも学べるなど、多種多様な学習形態が揃っていることも大事だと考えます。