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人材採用“ウラ”“オモテ” 
企業・求職者・人材紹介会社の「転職」三角関係

実は不安の裏返し?
採用条件に細かい外国人求職者

企業との交渉は、人材紹介会社を通じて…

外国人の国内転職事情とは?

日本で働く外国人が増えているが、それに伴って、国内で転職するケースも増えてきている。転職に際しては、外国人は人材紹介会社をよく利用する。その割合は、日本人よりも高いかもしれない。もともと海外では、日本に比べて人材紹介の普及率が高く、外国人が利用することに慣れている、というのもある。紹介会社はさまざまな企業との交渉を代行してくれるため、細部まで条件にこだわりたい彼らにはぴったりのサービスなのだ。

海外勤務のない会社を希望します

「私の技術が活かせる仕事に就いて、年収も今よりアップさせたい。なにより強く希望するのは、“日本企業で働く”ということです」

中国人エンジニア・Cさんは流ちょうな日本語でこう言った。来日してまだ2年というが、仕事上のコミュニケーションにはほとんど不自由はない、と思われるほどのレベルである。そのCさんが転職を考え、相談にやってきたのだ。

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「別の紹介会社では中国の企業を紹介されました。でも、せっかく日本にいるのだから、日本の企業で技術を活かしたいのです」

景気の低迷で、いまの日本企業は採用を抑制しているところが多い。日本人でも転職はそう簡単ではない状況だ。言葉の問題やビジネス習慣の違いなどが気になる外国人を採用する際には、それを補うよほどの実力が認められない限り、企業側としては慎重になるかもしれない。

「中国向けのビジネスに力を入れている日本企業であれば、一番可能性が高いかもしれませんね。今回はそういう企業をいくつかリストアップしておきました」

Cさんは求人票を一枚ずつチェックしながら、こんな質問をしてきた。

「これらの企業に入社した後、中国に転勤する可能性はありますか?」

中国向けのビジネスを行っている企業だから、将来的には可能性があるかもしれない…と答えると、Cさんはそれでは困ると言い出した。

「出張ならば良いのですが、中国での勤務や子会社への異動はしたくありません。私はあくまでも日本で働きたいのです」

Cさんは、中国に赴任したり、現地法人に出向や転籍になってしまったりすると、給与が中国の現地採用並みになってしまうのではないか…と心配していたのだ。たしかに、現地と比べると、日本の方が給与は高い。

「転職して今より年収が下がったら意味がありません。ですから私は日本の企業で働きたいのです」

「中国勤務の可能性がない会社を探して欲しい」という要望はなかなかの難題だったが、Cさんにとってはそれが第一条件だ。私は求人リストをもう一度見直してみることにした。

外国人だからこその不安がある

「日本勤務のみ」という条件付きではあったが、エンジニアとしてのCさんはかなり優秀な人材だったようだ。国内で勤務しながら中国の現地法人との橋渡しを担当してもらいたい、という大手メーカーが現れたのだ。

「よかったですね。先方もとても期待されているようですよ」

「ありがとうございます…」と言いながらも、Cさんは「ちょっと先方の人事部に聞いてもらいたいことがあるのですが…」と言葉を続けた。

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「海外出張があると思いますが、手当はいくら出ますか。また、出張期間はどれくらいになりますか。住宅補助はありますか。社宅があるとありがたいのですが…。転居費用は会社負担ですか。最初のボーナスはいつ支給されますか。またその額はいくらになりますか――」

こうした質問がぽんぽん飛び出すのは、やはり外国人ならではだと思ってしまう。日本人の場合、最初から細かい条件面に話が及ぶのは印象が良くないという気持ちがあるせいか、疑問に思っていても積極的に聞かない人が多い。そのため、私たち人材紹介会社が「この条件は確認しておいた方がいいですよ」とアドバイスすることもある。

しかし、Cさんの場合はまったく逆である。「入社してから確かめても問題ないのでは?」と思うようなこともすべて確認したいという。外国人の中には事前に就業規則を見せてほしい、と言い出す人もいるくらいだから、Cさんの場合はまだ控え目なのかもしれないが…。

「外国人だからこそ不安なんです。気になることは、すべて最初に聞いておかないと…」

Cさんのその言葉に私はハッとした。企業が慎重になる外国人採用は、採用される人材(外国人)にとっても不安要素が多いものなのだ。条件面をしっかり確認しておかないと、「外国人だから」という理由だけで、日本人とは異なった対応をされるリスクがあることを、気にしていたのである。

「わかりました。すぐに確認します」

私は一瞬でも「外国人は条件に細かいな」と思ったことを恥じた。そしてすぐに企業へ条件を確認するための依頼書作りに取り掛かった。



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