職場のモヤモヤ解決図鑑
【第22回】給与計算の年間スケジュールと毎月の業務の基礎知識[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。仲間思いでたまに熱血!今回は人事に配属されたころのエピソード。
人事が行う給与関係の業務について、吉田さんはまだ全体像が把握できていない様子です。給与計算業務では、社会保険料の算定や住民税の年度更新など、行政に提出する書類があり、それぞれ提出時期が決まっています。それにより年間の繁忙期が決まるほか、税金の納付など給与支払い以外の毎月の定期業務もあります。給与計算に関わる重要な業務の年間スケジュールと毎月の仕事について見てみましょう。
給与計算の年間スケジュール
ここでは、年間で発生する社会保険や税金の手続きについてまとめています。住民税、社会保険、労働保険、年末調整など、役所に提出する書類の時期が決まっている業務については、あらかじめタイミングを確認し頭に入れておきましょう。
月 | 業務 | 内容 | 書類提出先 |
---|---|---|---|
4月 |
・給与改定 ・社会保険 ・労働保険 |
給与支払報告に係る給与所得異動届出書の提出 3月分の健康保険料・介護保険料の改定 雇用保険料改定(締日によって異なるので注意) | |
5月 |
・住民税 ・賞与計算 |
各市区町村から届く住民税一覧をもとに「住民税年度更新」を行う | |
6月 | ・労働保険 | 「労働保険年度更新」の手続きの開始(概算・確定保険料申告書)/7月10日締切 | ・労働局、労基署 |
7月 | ・社会保険 | 4月~6月の給与を元に「社会保険料算定」(月額算定基礎届)/7月10日締切 | ・年金事務所、健保組合 |
8月 | ・社会保険 | 4月の昇給者を対象とした随時改定者の社会保険料改定 | |
10月 |
・年末調整 ・社会保険 ・賞与計算 |
・年末調整書類の配布 ・7月に算定基礎届を提出した者の社会保険料改定 |
|
11月 | ・年末調整 | 年末調整書類の回収 | |
12月 | ・年末調整 | 年末調整の実施と源泉徴収票の発効 | |
1月 |
・法定調書の提出 ・給与支払報告書の提出 |
・税務署 ・市区町村 |
労働保険の年度更新とは
「労働保険の年度更新」とは、年に1回、前年度に納付した保険料を精算するとともに、新年度の概算保険料の申告・納付を行うものです。
労働保険には、「雇用保険」と「労災保険(労働者災害補償保険)」があります。4月から翌3月までの賃金総額に定められた保険料をかけて算出し、概算で前払いします。そのため、翌年に実際の賃金総額を精算する必要があります。この精算時の保険料を「確定保険料」、新年度の保険料を「概算保険料」といいます。この二つを毎年6月1日から7月10日までの間に、申告・納付するのが労働保険の年度更新手続きです。
- 【参考】
- 労働保険の年度更新とは|厚生労働省
詳しくは労働保険(雇用保険・労災保険)の年度更新をチェック
労働保険(雇用保険・労災保険)の年度更新|日本の人事部
社会保険の算定基礎届とは
社会保険には、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」があります。これらの保険料は、4月~6月の報酬額を平均した「標準報酬月額」をもとに定められた区分によって決定されます。
標準報酬月額を見直し、等級を変更するための手続きが「社会保険の算定基礎届」です。7月1日から7月10日までの間に提出し、変更された標準報酬月額は9月から適用されます。毎月の給与から控除できる保険料は前月分だけとなるため、変更された標準報酬月額に基づく保険料は、10月の給与から控除することになります。
- 【参考】
- 標準報酬月額|日本の人事部
社会保険の仕組みを理解しよう
制度の仕組みから、詳しい手続き内容までを解説。
社会保険|日本の人事部
住民税の年度更新とは
住民税とは、1月1日時点での居住地において、前年の所得をもとに税金の金額が決まります。算出された金額は、毎年6月から翌年5月にかけて月々の給与から天引きします。
住民税の金額を算出し更新する手続きが、「住民税の年度更新」です。住民税の計算に必要な「住民税課税通知書」は、企業が毎年1月末日までに市区町村に提出する「給与支払報告書」に基づき、5月末日までに企業に通知されます。
- 【参考】
- 住民税の年度更新、通知書作成・発行
所得税と年末調整
所得税は月々の給与から源泉所得税として納付しています。そして年末の年間所得が確定した時点で、所得税を計算し差額の調整を行います。これを「年末調整」といいます。
- 【参考】
- 年末調整|日本の人事部
給与計算の毎月のスケジュール
毎月の定例業務には、10日と月末の保険料および税金に関する手続きがあります。給与支給日は企業によって異なるため、支給日を目安に計算・データ確認・振込手続きを滞りなく行えるようにします。
給与支給日前に土日祝日がある月は、給与計算と確認の業務日数が少なくなるため、各月のカレンダーを事前に確認し、無理のない業務スケジュールを組むことが大切です。
10日 | ・勤怠の締め日。労働時間のチェックと集計を行う ・前月の給与から控除した源泉徴収税額の納付 ・前月の給与から控除した住民税特別徴収税額の納付 |
---|---|
17日~22日 | ・給与計算と確認 |
22日 | ・金融機関にて給与振り込みの手続き |
25日 | ・給与支払日 |
月末 | ・前月分の社会保険料の納付 |
参考:
No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁
個人住民税の給与からの特別徴収制度|川崎市
給与計算にまつわる業務一覧
給与計算に関連する業務は、以下のものがあります。上述で紹介した毎月のスケジュールに加え、新入社員や退職者があるとイレギュラーなタイミングで業務が発生します。そのため、入社・退職・人事異動などは関連業務を個別にまとめておくと、抜け漏れなく業務を行えます。
年次で行うもの | ||
---|---|---|
基本給のデータ入力 | 賞与計算 | 年末調整(所得税) |
月次で行うもの | ||
---|---|---|
従業員データの入力と更新 | 諸手当のデータ入力 | 勤怠の集計 |
時間外手当の計算 | 雇用保険・社会保険料の控除 | 源泉所得税・住民税の徴収 |
給与控除の処理 | 給与明細の配布 | 賃金台帳の作成 |
退職者の処理 | 退職者の雇用保険・社会保険手続き |
給与計算システムに手入力する項目は、ミスがないように慎重に行います。新入社員を登録する際に、扶養家族の人数や基本給に誤りがあると、その後の給与計算に大きな影響を及ぼします。昇給などを把握することも大切です。
年間と毎月の流れをつかみ事前準備を
給与計算にまつわる業務はミスが許されません。労働保険や住民税の年度更新、社会保険料の算定基礎届など、実施タイミングが決まっているものは、あらかじめスケジュールに組み込み、余裕を持って取り掛かるとよいでしょう。法改正による保険料・税率の変更には、自動反映される給与計算システムを利用することが省力化につながります。
人事カレンダーでヌケモレなく仕事を進行しよう
人事労務担当者が行う業務の月別予定表。行政手続きの期日・提出先・業務解説や、今進めておくべき人事業務を確認できます。
人事カレンダー|日本の人事部
【まとめ】
- 税金や社会保険料の算出・更新・反映については時期が決まっているため、期日に遅れないように取り掛かる。
- 毎月の業務では、10日の税金の納付・給与日の支払い・月末の社会保険料の納付がルーティーンの締め切りとなる。
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!