“2枚目の名刺”が若手を育て、シニアを活性化
楽しく学ぶ「パラレルキャリア」の人材育成効果とは(前編)
法政大学大学院 政策創造研究科 教授
石山 恒貴さん
パラレルキャリアは「大人の部活」、ハードルは決して高くない
ビジネスパーソンがパラレルキャリアを実践したい場合、どうすればいいのでしょう。ぜひ、具体的な始め方やしくみを教えてください。
たしかに、未経験者がいきなりNPO活動やプロボノを始めようと思っても、ハードルが高いですよね。そこで、大きな役割を果たすのが「中間支援団体」。中間支援団体とは、社会的課題を解決しようとしているNPOなどの団体と、そうした団体への支援を希望する個人とを仲介し、パラレルキャリアを推進する団体のことです。代表的なところでは、NPO法人二枚目の名刺、NPO法人サービスグラント、プロボネット有限責任事業組合などが挙げられます。パラレルキャリアを始めたい人はまず、こうした中間支援団体に問い合わせるといいでしょう。そこで情報を受け取れるようにすると、たとえば「二枚目の名刺」では、自分の専門性や希望に合ったNPOをマッチングする場を紹介されます。そして、その活動に共感する社会人メンバーでプロジェクトチームを編成、パートナーのNPOと協働して、団体の事業推進に取り組むというのが一般的な流れです。「自分の専門性」といっても、特別な能力やキャリアを必要とするわけではありません。一般的なビジネススキルさえあれば、誰でも参加できます。
プロジェクトチームは、何人ぐらいの登録メンバーで編成されるのですか。
平均5~6名ですね。職場のチームと違うのは、ほとんどの場合、全員が初対面で、会社はもちろん業種や業界、年齢、役職までバラバラだということです。しかも全員が同じ立場で、“上司”はいません。多様なメンバー全員がリーダーシップを分かち合い、ゼロベースで考え、議論し、試行錯誤しながら物事を進めていくという経験自体が、ビジネスパーソンにとっては得難い学びとなるのです。
通常、プロジェクトは3~6ヵ月程度の期間限定で、ずっと続けることは求められていません。また、個人が活動に費やす時間もせいぜい週5~10時間程度ですから、空いた時間に無理なく行うことができます。日本人は真面目な人が多いせいか、いったんボランティアに参加すると、なかなか辞められないんじゃないかとか、長時間拘束されて本業や家庭に支障が出るんじゃないかと、二の足を踏む人が多いのですが、そんな心配は必要ありません。始めてみて合わないと思ったら、自分の都合でやめても構わないのですから。まずは軽い気持ちで、一歩踏み出してみましょう。気軽に参加でき、何よりも楽しいことから、私はパラレルキャリアの活動を「大人の部活」と呼んでいます。
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